中学で英語が得意になる! 第1回 中学で英語が苦手になる子が多いのはなぜ? 【後編】

「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能など、ますます「使う」力が求められている中学校の英語。一方、2009(平成21)年に全国の公立中学校の2年生を対象に実施したベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)の調査によると、「英語が苦手」と答えた生徒は6割に上っています。英語への苦手意識を払しょくし、英語の力を伸ばすためには、どんなことが必要なのでしょうか?
このシリーズでは、英語教育の専門家であり、「世界の100人の教師」に選ばれたこともある関西大学教授の田尻悟郎先生に、中学英語のつまずきやすいポイントとその解決方法について教えていただきます。

<中学で英語が得意になる!(動画)>



つまずきのポイントは「文字の読み・書き」と「語順」!

<1-3.中学で英語が苦手になる子が多いのはなぜ?(動画)>

英語が苦手だというお子さんはたくさんいます。文部科学省の調査によれば、中学3年生で「いちばん苦手」な教科も、「いちばん嫌い」な教科も英語です。また、ベネッセ教育総合研究所の2009(平成21)年の調査からは、中1の夏休み明けくらいから、英語が苦手と感じるようになっていく、という傾向が見えています。
その原因として、第一に「文字が読めない・書けない」ということが考えられます。
英語のつづりには、ルールがあります。このルールを知らず、文字が読めないままで、図形を覚えるように何度も何度も単語を書いてしまっている子が多いのです。

また、be動詞と一般動詞を混同し始めるのが、1年生の2学期ごろです。
「日本語と英語の語順の違いが理解できていない」のが、英語が苦手になる第二の原因と考えられます。日本語とは、単語を並べる順番が違うということを理解せずに英語を勉強していると、なかなか成果が出ません。

もう一つ、子どもたちが、授業で先生が黒板に書かれることをノートにとるだけで満足してしまっているということが挙げられます。家に帰ってから、ノートにとったことを頭に入るまで復習する、教科書の本文をたくさん音読して「使える」ところまで持っていく。そういうプロセスが欠けているのが、英語が苦手になっていく大きな原因です。



「習熟」「応用」不足が苦手の原因に

<1-4.中学で英語が苦手になる子が多いのはなぜ?(動画)>

英語の習得には、
「理解」→「習熟」→「応用・発展」
という3つのプロセスがあります。

理解は、英文の意味や構造を理解すること。
習熟は、理解した英文を暗記すること。
応用は、暗記した英文を使いこなせるようになる、ということです。

教科書の本文を理解し(理解)、その文を暗記し(習熟)、その一部を入れ替えることで新しい文を作ったり、肯定文を否定文や疑問文に変えたりすることが応用です。ここまでは教科書の本文を使います。
その教科書のトピックが環境問題であれば、環境に関して調べ学習をしたり、プレゼンテーションや討論を行うことが発展です。教科書の本文からは少し離れますが、トピックが同じですから、教科書内の語句を使う可能性が高くなります。

入試は、応用・発展になります。
また、外国の人とお話をしたり、Eメールのやりとりをしたりするのも応用です。
つまり、私たちは「応用できるようになること」を目標に、英語を勉強しているわけです。

ところが、多くの場合、授業では「理解」に時間を割きすぎています。理解したものを暗記し、使うというところまでいっていません。英語は使ってみる中で上手になっていくのに、ほとんどの生徒は、授業中、先生が黒板に書いた英文を写すだけで満足してしまっている。「理解」で止まっているんですね。



できたかチェックし、できたら一緒に喜ぶのが大人の役割

<1-5.中学で英語が苦手になる子が多いのはなぜ?(動画)>

たとえば小学生であれば、国語の教科書を家で音読し、保護者のかたがそれを聞いて、二重丸を付けてあげたり、あるいはドリルやプリントの問題をやったりしますよね。今の中学生をはじめ、英語を勉強する人は、そのような「習熟」の作業をたくさんしないといけません。

しかし、一人でやれることは限られています。一生懸命勉強していても、まちがったことをくり返していては、子どもたちはまちがいを覚えてしまいます。たとえば、「本当にわかってる?」と理解度をチェックしてあげたり、「僕覚えたからお母さん聞いて!」「じゃあ、30秒以内で言えるかな? スタート!」という感じで、教科書本文の暗唱を聞いてあげるとか。
あるいは「私はこの文章で何を聞かれても答えられるよ!」とお子さんが言ったら、「じゃあこの文を疑問文にして!」「外国の人と話すみたいに、この英文を使ってごらん!」などと、応用・発展の問題を出してあげるのもよいですね。

正しく理解し、暗記できていて、正しく使えるかどうか、各段階をチェックしてあげるのは、第三者にしかできません。授業でも、家庭学習でも、大人の役割としていちばん大事なのは、できたかどうかチェックしてあげること。そして、できたら一緒に喜んであげることです。大人と一緒に喜び合って「うれしいなあ」と思うことで、子どもたちはその次の学習もがんばることができます。

今の英語学習の問題は、子どもたちの「覚えられてうれしかった」(習熟)、「英語を使えてうれしかった」(応用)という気持ちに焦点が合っていないことです。だから子どもたちには満足感が少なくて、「英語を勉強しているけれど、本当に自分がわかっているのかわからない」、習熟・応用が足りないためテストで点がとれなくて、「自分には英語は無理だ」と思ってしまう。このような流れで、子どもたちは英語が苦手になっていくと考えられます。

英語が「得意」で「好き」になるためには、理解→習熟→応用・発展をくり返すこと。特に習熟と応用を増やす必要があります。


プロフィール


田尻悟郎

関西大学 外国語学部 教授。26年の公立中学校勤務を経て現職。NHK『わくわく授業』『プロフェッショナル』等に出演。2004年に「世界のカリスマ教師100人」に選ばれる。新指導要領策定や教科書開発に関わる。主な著書:『田尻悟郎の楽しいフォニックス』(教育出版)

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