【小学生の読書感想文】本の選び方と学年別のおすすめ本 保護者のサポートのコツも

夏休みの宿題として出されることも多い読書感想文。

本選びが進まなかったり、どう書けばよいかわからなかったりと頭を悩ませている小学生のお子さまも多いと思います。

小学校低学年から高学年のお子さまが読書感想文を書き上げるために、保護者のかたは書き方や本選びでどうサポートすればいいのか、教育評論家の親野智可等先生に伺いました。

保護者が読書感想文の宿題をサポートする際に注意すべきこと

スキルの個人差が大きいことに注意し子どもの実状に合ったサポートを

まず保護者のかたに注意してほしいのは、小学生の時点では本を読む力や文章を書く力の個人差がとても大きいことです。例えば日頃から本を読むのが好きで読書習慣があるお子さまや、親子の対話が多く言語体験が豊かなお子さまは、低学年でもグイグイと読書感想文を書き進めることができる場合もあります。

一方で、普段から読書の習慣がないお子さまや、あまりおしゃべりが好きではないタイプのお子さまだと、高学年でもなかなか書けないことも多いのです。「高学年ならばこのくらい書けて当たり前」といった先入観を持たず、お子さまがどの程度読む力、書く力を持っているかを見極めて、お子さまの実状に合ったサポートを行うようにしましょう。

「どう書いていいかわからない」場合のサポートのコツは?

「7つの質問」をもとに読んだ本について親子で対話

読書感想文の書き方は、学校の授業などで時間をとって教えてくれることはほとんどありません。特に1年生にとって読書感想文を書くのは初めての経験ですから、保護者のかたのサポートが重要になってきます。

そこで、保護者のかたにおすすめしたいのが、読んだ本の内容について親子で話し合い、読書感想文に書く内容をお子さまから引き出すこと。

例えば、以下の「7つの質問」は、読書感想文の内容を引き出すうえで効果的です。

(1)どんな人が出てきたの?
(2)その人についてどう思う?
(3)本を読んでどう思った?
(4)作者は何を一番言いたいのかな?
(5)どんな場面や言葉が心に残った?
(6)自分にも似たようなことがある? 自分ならどうする?
(7)作者や登場人物にどんなことを言ってあげたい?

低学年の場合は、次の「4つの質問」に絞ってもいいでしょう。

(1)この本を読んで心に残ったのはどんなこと?
(2)自分にも似たようなことがある? 自分ならどうする?
(3)この本を読んで、今どんなことを考えている?
(4)作者や登場人物、自分にどんなことを言ってあげたい?

「7つ(または4つ)の質問」をもとに、お子さまと本の内容について話し合った内容を保護者のかたがメモ。一緒に構想メモ※に書いて整理すれば、あとは原稿用紙に書くだけで読書感想文が完成します。

お子さまがうまく質問に答えられなかったり、あまり具体的な答えが返ってこなかったりした場合は、「そう思ったのはなぜかな?」「たとえばこういうことかな?」といった追加の質問で助け船を出してあげると、お子さまも考えやすくなります。

※読書感想文がはかどる構想メモの取り方や例文の詳細はこちら
本の読み方 構想メモを取ろう

読書感想文で最も大事な「本選び」のコツは?

子どもの経験や興味にぴったり合う本を探す

お子さまが読書感想文をうまく書けるかどうかは、どの本を選ぶかでほぼ決まります。お子さまが「読みたい」と思える本を選べれば、お子さまは夢中で読みますし、自然に「書きたい」と思うようになります。

最もおすすめしたいのは、お子さまが最近経験したこと、興味を持っていつも取り組んでいることなどお子さまとの関わりが深いことについて書かれた本を探すことです。

例えば、長年飼っていたペットが亡くなって悲しい思いをしているお子さまが、ペットをなくした悲しみについて書かれた本を読んですばらしい読書感想文を書いたということがありました。
また、感想文というと物語でなくてはいけない印象があるかもしれませんが、昆虫が大好きなお子さまであれば昆虫図鑑でもよいのです。その本を読むことがお子さまの「好き」の延長線上にあり、感想を書くことが学びになる、自分を振り返ることで成長につながる本を選んでください。

本の探し方は、書店に行く、ネットで探すといった方法もありますが、図書館の司書さんに相談するのがおすすめです。司書さんであれば、探している本の内容を伝えればうまく探してくださいます。

ぜひ保護者のかたが、お子さまがいつも興味を持っていること、好きなこと、悩んでいること、最近経験したことなどの日常生活を振り返って本探しを手伝いましょう。一方的に決めるのではなく、いくつか候補を挙げたうえでお子さま自身にどの本にするかを決めさせるというのも、お子さまのやる気を引き出すためにはよいですね。

子どもに合った本の選び方&学年と興味別のおすすめの本

では、実際にお子さまの経験や興味などから、どのように本を探せばよいかという例をおすすめの本とともにご紹介します。

低学年のお子さまのなかには、弟や妹が生まれ、保護者のかたが赤ちゃんにかまいきりになり、さびしい思いをしているお子さまもいるかもしれません。その場合は同じように赤ちゃんが生まれてさびしい思いをしている子どもを主人公にした物語がおすすめです。

【低学年向き】
『ごきげんなすてご』
いとう ひろし作・絵 徳間書店 1,430円
弟が生まれてお母さんは弟ばかりかわいがるのが不満な女の子が、すてごになってすてきなおうちにもらわれるため、家出をして大活躍するお話です。親の関心が弟や妹に行ってしまってさびしい気持ちになっているお子さまは共感しながら読めるでしょう。

『ごきげんなすてご』(いとうひろし/徳間書店)
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祖父母が亡くなったり、飼っていたペットが亡くなったりといった経験をしたお子さまには、死別の悲しみを描いた本や命について考えさせる本が慰めになってくれるとともに、悲しみを振り返るきっかけにもなるでしょう。

【低学年向き】
『ずーっとずっとだいすきだよ』
ハンス・ウィルヘルム作・絵 久山太市訳 評論社 1,320円
少年と毎日一緒に遊び一緒に大きくなった大好きな犬エルフィーは、やがて少年よりもずっと早く老いを迎え死んでしまいます。「ずーっとだいすきだよ」という少年の言葉が心に残ります。

『ずーっとずっとだいすきだよ』(ハンス・ウィルヘルム/評論社)
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小学生になるとお友達との関係で悩むお子さまも多いことと思います。そんな場合は似たようなお友達との衝突を描いた本を選ぶと深く共感しながら読めるでしょう。

【低学年向き】
『となりのせきのますだくん』
武田 美穂作・絵 ポプラ社 1,540円
となりのせきのますだくんが乱暴で怪獣みたいに思えてしまって学校に行きたくなくなってしまう女の子のお話です。同じように悩んでいるお子さまもお友達の見方が少し変わるかもしれません。

『となりのせきのますだくん』(武田 美穂/ポプラ社)
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メガネをかけ始めるお子さまは、他のみんなはかけていないのに一人だけかけるのは恥ずかしい、笑われるんじゃないか、と心配になってしまうこともあるかと思います。そんなお子さまには、同じようにメガネをかける不安でドキドキする気持ちを描いたお話がおすすめです。

【中学年向き】
『メガネをかけたら』
くすのき しげのり作 たるいし まこ絵 小学館 1,650円
クラスの中で一人だけメガネをかけなくてはならなくなった女の子が、メガネをかけたくなくて悩むけれど、お母さんや先生にやさしくはげまされて一歩を踏み出すお話です。初めてメガネをかけるお子さまは勇気づけられるでしょう。

『メガネをかけたら』(くすのき しげのり/小学館)
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「みんなちがってみんないい」と言われますが、実際は親や先生に他人と比べられることも多く息苦しさを経験しているでしょう。そうしたお子さまには、一人ひとりの個性の違いについて描いた本がおすすめです。

【低学年向き】
『わたしのいちばん あのこの1ばん』
アリソン・ウォルチ作 パトリス・バートン絵 薫 くみこ訳 ポプラ社 1,430円
かけっこも歌もおしゃべりもなんでもクラスで一番の女の子をすごいと思うけど、「すきなものをすき」でいることは「いちばん」じゃないのかな?ともやもやする女の子のお話です。自分の「いちばん」を大切に、というメッセージがお子さまには響くのでは。

『わたしのいちばん あのこの1ばん』(アリソン・ウォルチ/ポプラ社)
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いろいろと失敗してしまって学校の先生や保護者のかたに叱られてしまうことが多いお子さまもいるでしょう。そうしたお子さまには失敗の経験と乗り越え方を描いたお話がよいでしょう。

【低学年・中学年向き】
『しっぱいにかんぱい!』
宮川 ひろ作 小泉 るみ子絵 童心社 1,320円
運動会のリレーでアンカーをまかされたのにうっかりしっぱいをしてしまい、すっかりおちこんでしまったおねえちゃんをおじいちゃんがさりげなく元気づけてくれるお話です。次々と披露されるみんなの「しっぱい」に思わず笑顔になるのでは。

『しっぱいにかんぱい!』(宮川ひろ/童心社)
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学校生活が充実してきた高学年のお子さま向けには、学校の中で様々な出来事が起こり、クラスの人間関係が変化していくようなお話が共感を持って読めるでしょう。

【高学年向き】
『くちぶえ番長』
重松 清作 新潮社 605円
小学4年生のツヨシのクラスに、一輪車とくちぶえの上手な女の子マコトが転校してきて番長になると宣言。友情や恋心も生まれたりいろいろ経験したりしながら学び成長していく物語です。

『くちぶえ番長』(重松清/新潮社)
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【高学年向き】
『びりっかすの神さま』
岡田 淳作 偕成社 1,320円
4年1組に転校してきた始は、すきとおった20センチくらいのびりになった人にだけ見える神さまがあらわれてびっくり。クラスのみんながわざとびりをとるようになるという競争とは何かを考えさせるお話です。

『びりっかすの神さま』(岡田 淳/偕成社)
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中学年以降になると習い事やスポーツに打ち込むお子さまも増えてきます。そうした自分がいつも体験していること、打ち込んでいることについての話はとても興味を持って読み進むことができます。習い事やスポーツをモチーフにした物語だけでなく、スポーツ選手の自伝や著書などもよいでしょう。

【高学年向き】
『不可能を可能にする 大谷翔平120の思考』
大谷翔平著 ぴあ 1,078円
投打の「二刀流」でメジャー史上初となる数々の偉業を達成している大谷翔平選手の語録集です。野球に打ち込むお子さまにおすすめです。

『不可能を可能にする 大谷翔平120の思考』(大谷翔平/ぴあ)
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昆虫が好き、宇宙が好き、海が好きといったお子さまの好き、興味がある分野についての本は、お子さまにとって読むのが楽しいことと思います。図鑑でもよいですが、科学的なノンフィクション、研究者の自伝やエッセイなどもおもしろく読めるでしょう。

【中学年・高学年向き】
『さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生~』
さかなクン著 講談社 1,430円
魚好きの男の子が「さかなクン」としてお魚博士になるまでの道のりを、小学生時代、中学生時代から現在までさかなクン自身が綴った自叙伝。「好き!」をつらぬく姿に勇気づけられます。

『さかなクンの一魚一会~まいにち夢中な人生~』(さかなクン/講談社)
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高学年になると社会的な関心も高まってきてます。ボランティア活動に参加するお子さまも出てきますから、実際に活動を行っている分野の本もよいでしょう。また、お子さまとの日々の対話の中で、例えば環境問題に関心があれば環境問題の本、国際関係や科学技術に興味があるお子さまであればそれに関する本を選べば興味を持って読み進められるでしょう。

【高学年向き】
『大地をうるおし平和につくした医師 中村哲物語』
松島恵利子著 汐文社 1,760円
内戦と大干ばつの続くアフガニスタンで飢餓で命を落とす子どもたちを目の当たりにして、砂漠となった土地に井戸を掘り用水路を建設するなど「命を守る」ことに尽力し、銃弾に倒れた中村哲医師の伝記です。社会貢献や世界平和に興味を持つお子さまにおすすめです。

『大地をうるおし平和につくした医師 中村哲物語』(松島恵利子/汐文社)
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時間が無い……!そんな親子におすすめの読書感想文の仕上げ方

共働きで時間が無い、またはもう夏休みも残りわずかで時間がかけられない……そんなご家庭も多いと思います。そんなときは、下記のような「筆談」形式で進める方法がおすすめです。
これは親子が筆談するように交替で書いていくものです。親が質問でリードするので、書くのが苦手な子でも書き進むことができます。子どもがどうしても書けなくて困っているときにもおすすめの方法です。

やり方は、先ほどご紹介した7つの質問(低学年なら4つ)の1つめを親が原稿用紙に書いて、それに答える形で子どもが書きます。次に2つめの質問を書いて、子どもはまたそれに答える形で書きます。そうして進めていけば提出できるものができあがります。質問自体を子どもが自分で書けるとさらに良いですね。

まとめ & 実践 TIPS

読書感想文を書くのを保護者のかたがサポートする際は、個人差が大きいことに注意しお子さまの実状に合ったサポートを行うようにしましょう。

「どう書いていいかわからない」場合は、本の内容について保護者のかたが質問して話し合うことで、読書感想文に書く内容をお子さまから引き出すといいでしょう。話し合った内容を録音したり、メモしたりして、一緒に構想メモに書けば、後は原稿用紙に書くだけ。

読書感想文で最も大事な「本選び」は、小学生のお子さまには難しいので、お子さまが最近経験したこと、興味を持っていつも取り組んでいることなどお子さまとの関わりが深いことについて書かれた本を保護者のかたが探しましょう。図書館の司書さんに相談するのがおすすめです。

プロフィール


親野智可等
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・子育て365日 親の不安がスーッと消える言葉集(ダイヤモンド社)
・「自分でグングン伸びる子」が育つ親の習慣(PHP文庫)


長年の教師経験をもとに勉強法・家庭教育・親子関係などについて具体的に提案。
Instagram、X、Voicy、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」、メルマガなどで発信中。ドラゴン桜の指南役としても著名。最新刊「子育て365日」などベストセラー多数。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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