読書感想文のコツを知りたい!まずは、思考を広げ、材料を集める

子ども一人ひとりの視点を生かした読書感想文を仕上げるコツと、保護者のかかわり方について『読書感想文書き方ドリル2018』の著者で思想家・教育家・作家の大竹稽さんに伺います。

「7つの質問」を手がかりに、自分なりの切り口を見つけよう!

『読書感想文の書き方ドリル2018』は、次のような7つの質問から構成されています。これらの質問に、自分の言葉で答えていくことが、自分なりの「切り口」を発見し、思考のプロセスを身につける手助けとなります。

Q1 あらすじ
この本は、どういう話だったかな?

Q2 注目したところ
本の中で、きみが注目した人、発言、場面をあげてみて。

Q3 比べてみた日本昔話・寓話
この本の内容を、きみが知っている昔話や寓話と比べてみよう。きみ自身の体験でもOK。

Q4 テーマ
この本のテーマは何だと思う?

Q5 問題提起
この本を読んで問題提起してみよう。身近なことでもいいよ。

Q6 比較または体験
Q3であげた昔話、あるいはこの本の内容と似た体験と比較しながら、Q5の問題提起について考えよう。

Q7 意見
Q5で書いた問題に、きみならどのような答えを出すかな?

Q1の「あらすじ」は、いわば読書感想文の「下ごしらえ」です。マーカーなどで気になる部分をチェックしながら本を読み、大きなできごとをつなぎあわせていくといいですね。「要約」といわれるこの作業は、大人になっても必要な読解力の基礎にもなります。

Q2の「注目したところ」は、たくさん出てきて絞りきれないケースもあると思いますし、大人が思ってもみない箇所を挙げてくる子もいます。
たとえば、桃太郎のお話で「なぜ仲間にキジがいるのか、気になって仕方ない」といわれても、「えっ、そこ? ほかにないの?」などと否定せずに、子どもの話をよく聞いてみてください。意外と面白い感想文になることがあります。親子で話し合いながら、読みが深まりそうな箇所に絞っていくといいですね。

「体験」がなければ、昔話や寓話と比べて思考を広げる

さまざまな読書感想文の書き方を見ると、たいてい「自分の体験を入れよう」と書いてあります。体験はその人ならではのものですから、文章に重みが出ますし、読者へのアピール力も違ってきます。
しかし、課題図書のテーマに通じる体験を子どもがしているかというと、なかなか難しいと思います。たとえば、大切なものを失ったとか、見知らぬ街をさまよい、孤独の中で異文化を知ったとか……。
自分自身の体験を生かせるなら、ぜひそれを書くべきです。でも、「そんな体験はない!」という声を、ぼくは本当によく耳にしてきました。

体験のかわりに使えるのが、寓話や昔話です。「北風と太陽」「アリとキリギリス」などのイソップ寓話には、短い中に西洋的な論理や教訓が詰まっていて考えるヒントになります。また、「浦島太郎」「かぐや姫」といった日本昔話には、日本人が昔から大切にしてきた価値観や知恵が込められています。
自分の体験が生かせなければ、ぜひ課題図書と共通点のある寓話や昔話を探してみることをおすすめします。子どもが見つけてきた昔話について、課題図書の物語とどこが似ていて、どこが違うか話し合ってみるのもいいですね。

課題図書に沿って「体験をつくる」方法も

読書感想文に使える体験がなければつくってしまう! という方法もあります。
たとえば、2018年小学校高学年の課題図書『こんぴら狗』は、犬のムツキが、飼い主の病気平癒を祈るため、江戸から今の香川県の金比羅宮まではるばるお参りに行く歴史物語です。ムツキがたどった道を歩いて、ついでに近くの道後温泉に寄るなど、感想文用の取材を兼ねた家族旅行なんていいかもしれません。
低学年の課題『なずずこのっぺ?』は、全編、誰も聞いたことのない不思議な言語「虫語」で書かれています。これにならって、家族で一日「虫語」で話してみる、という手もありますね。

ここまでは、いわば材料を集め、思考をふくらませる作業。保護者のかたは、お子さまの話を聞き、たくさんおしゃべりをしながら、考えを引き出してあげるというスタンスでいるのがおすすめです。

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プロフィール



思想家、教育家、作家。東大で医学を学ぶも疑問を感じ退学、私塾を始める。東大大学院に再入学しフランス思想を研究。現在は私塾で作文等を教えながら、共生や死の問題に挑んでいる。編著書に『賢者の智慧の書』『めんどうな心が楽になる』『つながる仏教』『ニーチェの悦び』等。

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