「意味を感じない宿題」に疲れていませんか?家庭でもスグできる「質」の高め方

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宿題は必要だと思いますか? ベネッセコーポレーションが全国の保護者1,687名にアンケート(※)を行ったところ、「学習習慣が身に付く」「勉強のきっかけになる」といった理由から、81.7%が必要と回答しました。

一方で、宿題について不満の声も。「量が多すぎて負担」「嫌々やっていて身に付かない」など、宿題の在り方について疑問を持つかたも少なくないようです。

意味のある宿題とは、どのようなものなのでしょうか。宿題をはじめとする学習指導について研究する、東京学芸大学 特任講師の太田絵梨子先生に聞きました。

── 宿題のどのような点に課題を感じていますか。

「ドリルを解くだけ」「漢字や英単語を、ひたすら書き取り続けるだけ」など、暗記や反復作業、提出そのものが目的になっているケースが多く、子どもが「役に立った」ことを実感しにくい点です。

単純な反復作業だけだと、大変なわりに、成果につながっていると感じにくいんですよね。そのため「宿題はいらない」といった意見が出てくることもあるのだと思います。

── 宿題は「いる」のでしょうか。

意味のある宿題は、学習効果を高めます。ただ、「いる」「いらない」以前に、宿題に関する研究・議論が十分にされていないように感じています。学術研究も宿題の量に注目したものがほとんどで、「よい宿題とは何か?」という、質に関する研究はまだ少ないのが実態です。

学習は量より「取り組み方」のほうがテストの点数と相関が高いという研究もあり、宿題にも同様のことが言えるかもしれません。

── よい宿題、意味のある宿題とは、どのようなものでしょうか。

逆説的ですが、「たとえ宿題が出されなくても、自分で工夫して効果的な学習に取り組めるようになる」宿題だと考えます。

目標を立てる。計画を立てて取り組む。結果の振り返りから自分の理解度や弱点を分析する──。このように学習サイクルを自分で回す「自立的な学び」は、学習効果を格段に高めます。
これは社会に出ても通用する学習姿勢ですが、いきなり身に付けることはできません。だからこそ、日々の宿題でのトレーニングが効果的です。

── どうすれば、そのような「自立的な学び」を促す宿題になるのでしょうか。

宿題の「取り組み方」を指導することが大切です。
なんとなく取り組ませるのではなく、目的や目標を考える。意味を考えながら取り組み、終わったら振り返りをする。これにより、深い理解が促されます。

たとえば漢字の学習なら、ただ書き取りだけするのではなく、音や部首、成り立ち、熟語や例文も意識するとよいでしょう。計算なら丸付けをするだけでなく、どこで間違えたかチェックするなど、ちょっとした心がけ一つで、よい学習行動が習慣化されます。

もちろん、知識の定着には一定程度の反復学習が必要です。小学校の低学年ではなおさらでしょう。しかし、ただひたすらにくり返すだけでは、表面的な理解にとどまってしまいます。取り組み方を工夫することで、本質的な理解につながる「意味のある宿題」になります。

また、目標や振り返りは、子どもが自分の言葉で言語化することが大切です。最初は「難しかったです」といった感想レベルの振り返りであっても、それをくり返すことで、徐々に「この送り仮名を間違えがち」など、自分の学習を客観的にとらえられるようになります。

── 上手な振り返りができるようにするには、どうしたらいいのでしょうか?

子どもの取り組み方に対して、フィードバックをしてあげることです。
注意したいのは、よい取り組みとは、ぱっと見のノートのきれいさや、取り組んだ量の多さそのものではないということです。

たとえば算数なら、間違えた問題の途中式に「ここで間違えた」とマークが入っていれば、自分なりの分析ができているということです。ぜひ「いい工夫だね」と伝えて、「よい取り組みなんだ」ということを認識できるようにしましょう。

── 教師や保護者の負担が増えないか心配です。

教師が、児童生徒一人ひとりに丁寧なコメントを返すことが正解とは限りません。よい工夫をピックアップして、クラス全体に紹介するといった、より負担の少ないフィードバックも有効です。他の児童生徒の実例から、よい取り組みとは何かを学ぶことができます。

くり返しになりますが、宿題で大事なのは「量」よりも「取り組み方」です。適切な量や内容も、子どもによって異なるはずです。まずは、教師も保護者も、量をこなすことだけを求めないことが第一歩だと思います。

国の教育方針や入試方法も、かつての「暗記重視」「詰め込み型」から変わってきています。深く学んでいくことが大切ですが、それには大がかりな仕掛けが必要なわけではありません。ご紹介したような、ちょっとした意識や工夫をくり返すことで、深い学びにつながっていきます。

(※)集計期間:2024/6/18~23 小・中・高校生の保護者のかた1,687名へのWebアンケート

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