親野先生に聞いた!夏休みのイライラのタネをなくす!《生活リズム》の大切さ

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夏休みは朝なかなか起きられない、午前中に勉強する約束なのに守れないなど、夏休み中は生活リズムにまつわる気がかりがいろいろ。なるべく楽に生活リズムを整えて、気持ちよく過ごすには? 教育評論家の親野智可等先生にお聞きしました。

この記事のポイント

「いつやるか」が決まっているほうがストレスが少ない

夏休みの生活で気になるのが生活リズムの乱れ。でも、そもそも、なぜ生活リズムを整えることが大事なのでしょうか。生活リズムが整うというのは、毎日同じ時刻に同じことを(できれば同じ場所で)するということです。そして、そのことでもたらされる一番の恩恵は、「いちいち決断しなくてよくなる」ということ。

たとえば歯磨きをするのも、「食べたら磨く」という習慣が当たり前になっていれば決断は不要で、そのことで始めるのがとても楽になります。勉強も同じ。朝ごはんを食べたら次は何をしようかな。勉強はお昼ごはんの前に終わらせるか、あとにしようか……。生活リズムのできていない生活は小さな決断の連続で、その度にエネルギーを使います。

特にやりたくないことをいつやるか、どこでやるかなどを決めるのは大変で、迷ったり、その日の気分で取り組みにくくなったり、大きなストレスを感じやすいのです。一方で、勉強を含め、1日にやるべきことが自然な流れになっていれば、決断のためにエネルギーを費やす必要がありません。つまり生活リズムを整えることは、子ども自身が1日を楽に過ごせるようになるという意味があるのです。

勉強は「何から始めるか」まで決めておくと楽

高学年になるにつれ、子どもは大人の声かけではなかなか動かなくなります。それ自体は自立心が成長している証しでもあり、喜ばしいこと。だからこそ、自分で納得して、「このほうが楽だな」と実感させることがとても大事です。

たとえば夏休み中の勉強時間はなるべく午前中がよいといわれます。普段の学校生活でもほとんどの授業が午前中に詰まっているので、合わせておくほうが習慣として楽だということもありますが、午前の涼しい時間に終わらせるほうが効率がよいことに加え、午前中にやるべきことが終わっていればそのあとの時間を清々しい気持ちで過ごせることも大きいでしょう。

このことを子どもに伝えたうえで、朝ごはんの前に少し取り組む、午後や夜にも少し取り組むなどの時間割りや、どの宿題から進めるかなどは子どもに決めさせてみてください。いちいち指示される、大人に決められたことをやらされていると感じると反抗心が生まれてしまいますが、「自分で決めたことだから」と責任を感じ、守る気持ちが生まれます。

さらに、宿題やワークなど最初にやる課題を1つ決めておくと始めやすくなります。やる気になって机に向かっても、「じゃあ何やろうかな」と考えていると間延びしてしまうので、考えなくてもよいようにしておくのです。手を動かし始めれば、次第にやる気がわいてくるので、どんどん進めやすくなります。

1日のスケジュールは「入浴」から整える

勉強の時間を含めた1日のリズムを整えたい、乱れがちなリズムを調整したいと思ったら、まず入浴時刻を決めることがおすすめです。お風呂で体が温まったあと、体温が下がってくると眠くなって寝付きやすくなります。入浴後から眠くなるまでの時間の長さには個人差があるので、数日間観察して記録を取り、入浴と就寝時刻を決めましょう。

眠っている間は暗いほうが眠りが深くなるとされています。網膜が暗さを感じるほどメラトニンというホルモンの分泌が促されて熟睡でき、脳や体を成長させる成長ホルモンの分泌も増えます。暗いと怖いという子には眠りにつく時は薄明かりにしていても、ぐっすり寝たら電気を消してあげるといいでしょう。

朝はカーテンを開けて、眠っている顔に光が差すようにすると、網膜が光を感じてセロトニンの分泌が加速され、自然な目覚めが誘発されます。さらにセロトニンは15時間後にメラトニンに変化するので、6時に起きれば9時ごろに眠くなるという計算ができます。睡眠管理がうまくできると、朝食や朝の排便のサイクルもできてきますよ。

実はこの排便サイクルもとても重要。脳を目覚めさせるセロトニンは幸せホルモンとも呼ばれ、気分の安定をもたらします。気分が安定すれば気持ちの切り替えや集中力も発揮されやすくなります。セロトニンは腸でつくられるので、腸内環境を整えておくことが大切なのです。こうしたホルモンの影響を知り、上手に利用してあげることが、生活リズムを整える近道です。

夏休みの特別な体験も大切に

大前提として、そもそも夏休みは「休み」です。つまり、自由な時間です。ですから、子ども自身が好きなことややりたいことにじっくり取り組める時間も確保してあげてほしいと思います。

また、旅行やイベントなどがあるときは、いつもの生活リズムで行動できないこともあるでしょう。親戚と楽しくはしゃいで寝る時間がずれたりすることもあります。また、天体観測に行って、夜中まで星を見ているなどの体験にも特別な価値があるでしょう。そんな時は、保護者のかたのさじ加減で臨機応変に対応してよいと思います。

大事なのは、普段の生活リズムのベースはきちんと整えておくということ。睡眠時間を軸に、時々リズムが変わってもすぐに戻せるようにしておきましょう。睡眠や排便は気持ちでコントロールできるものではないので、言い聞かせてなんとかしようとすると親子共に苦しくなってしまいます。環境から、よいサイクルをつくっていけるといいですね。

まとめ & 実践 TIPS

生活リズムのベースをつくると決断のエネルギーが不要になり、取りかかりのハードルが下がります。リズムが安定していれば睡眠や気分に影響するホルモンの分泌も促され、気持ちよく1日を過ごせることを子どもにも伝えていきましょう。生活リズムが整いやすい環境を用意して、家族一緒に、心も体も快適に夏休みを楽しみましょう。

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プロフィール


親野智可等
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・『子育て365日』(ダイヤモンド社)
・『反抗期まるごと解決BOOK』(日東書院本社)


長年の教師経験をもとに勉強法・家庭教育・親子関係などについて具体的に提案。
Instagram、Threads、X、YouTube「親力チャンネル」、Blog「親力講座」などでも発信中。ドラゴン桜の指南役としても著名。『子育て365日』『親の言葉100』などベストセラー多数。全国各地の教育講演会でも大人気。詳細は「親力」で検索

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