アート鑑賞を通して自分と未来について考える14歳アートフェス【直島アート便り】
- 教育動向
ベネッセアートサイト直島では、周囲の自然や環境と関わりあう作品の鑑賞を通じて、自己・他者との対話や、自分にとっての「Benesse(よく生きる)」とは何かを考える体験を大切にしています。
2023年3月30日、31日に、中学生を対象とした自己理解を深め多様性に気付く体験を目指した鑑賞ワークショップを、「自然・建築・アートの共生」をコンセプトにしているベネッセハウス ミュージアムにて開催しました。
この記事では、全国各地から集まった中学生がどのようにアートを鑑賞しながら自己や未来について考え、どんな発見があったかレポートします。
「私を構成するもの」で自己紹介
今回のイベントは、半日のプログラムを4回実施し、計15名の生徒が参加しました。
参加のきっかけは、「将来の選択に繋げるための視野を広げたい」「知識や情報だけではない、体験しながらのアート鑑賞に興味がある」「美術に興味があり、アートに囲まれた環境で自分や進路について考えてみたい」「新しい視点で物事を見る大切さを知るきっかけにしたい」などです。
イベントの始めに、「私を構成するもの」を自由に文字・絵・グラフなどで描き、好きなこと/もの、宿題、食べたもの、習い事など、日頃の関心事をさまざまな内容・表現方法で自己紹介し合いました。
対話型鑑賞で多様な視点を得る
次に、ベネッセハウス ミュージアムで、いくつかの作品をピックアップし、スタッフと対話型鑑賞で現代アートを鑑賞しました。
最初は印象を言葉で表現するのが難しいという参加者も、他の人の意見を聞いたりスタッフからの問いかけをヒントに考えたりすることで、少しずつ言葉での表現ができるようになります。鑑賞しながら参加者同士の会話が弾む場面もありました。
作品を媒体にすることで、思いを自由に発言できたり、他の人の意見も興味をもって聞けたり、自分にはない解釈に触れることによる視野の広がりが期待できます。参加者からも「発言しやすかった」「一つの作品に対してのいろんな意見が聞けたので、自分の見方だけでなく違う方向から見た考えも広がった」との感想がありました。
今日の作品を選んで自分の関心事に出合う
前半の対話型鑑賞の経験を生かし、後半は自分の気になった作品を選び、一人で作品と対話します。
参加者は、ワークシートに沿って、選んだ作品を好きな角度からスケッチし、その作品のどこが気になったのか、どんな印象を抱いたか、それは自分の記憶と繋がっているか、そこから気付いたことや考えたことは何か、について自分の考えを書いていきます。
最後に、作品を通じて考えたことや気付いたことから、自分の未来へのテーマを設定し、発表し合いました。
発表タイムでは「こんな自分になりたい」「こんな社会になっていてほしい」など、各々が今気になっていることや関心があることから、考えた未来像を言葉にしていました。
参加者が得たもの
今回のイベントの事後アンケートでは、参加者の82%が「自分について考える機会になった」と回答しており、自身の変化などについて下記のようなコメントがありました。
「アートを通じて、普段は考えない、自分とは何かという問題について、考えることができた」
「絵やアートから社会の現状や歴史などを感じた。形にとらわれず自由な発想だけど、伝わるものがあってすごく感動した」
「自分らしさや、自分のやりたいことについて考えるようになった」
「現代アートとはなにかやアートの見方はじっくり見ることで変わるし、人と交流することでより深く考えたり、新しい考え方を手に入れることもできるとわかった」
「正直、美術館はあまり興味がなかったけれど、とてもワクワクして面白かった。こんな美術館があるならもっと早く行けばよかった。また行きたいと思った」
また、未来について考えるきっかけになったと回答した参加者からは、下記のような感想も寄せられています。
「生き方は人それぞれなので、自分らしく生き、後悔しない人生を送りたいと思った」
「枠にはまらなくてもいいんだと思った」
「今回のイベントを通して『想像力』の大切さについて学ぶことができました。自分はプログラマー志望ということもあり、より柔軟な発想のできる人間になりたいと思うようになりました」
「英語が書いてある作品を見て、文字も作品にすることができるんだと思い、たくさんの言語を勉強してみたいと思った」
「未来の自分がどうありたいかを考えたし、似ていても他人は全然違うというのを僕は大切にして生きていきたいと思った」
まとめ & 実践 TIPS
全国から中学生が直島に集まり、自分について考え未来を想像する14歳アートフェスは、今年の夏休みにも予定しています。新学期を迎えるタイミングで、新しい自分や他者と出会う経験をしてみませんか。詳しい日程が決まり次第、公式サイトにてお知らせします。
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