大切なのは自己決定できるように導くこと。高校生の勉強と「やる気」について

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ベネッセでは、定期的に保護者としての心配事などのアンケート調査を行っています。そこでは「勉強をやる気がない」という回答がよく出てきます。

「やる気に満ちて勉強し続ける」というのが理想ですが、実際にはそういう高校生はごく一部です。
また「やる気を出しなさい」と言っても出せるものではありません。
そのようなときに保護者としてできることは何でしょうか。

この記事のポイント

目標づくりをサポート

卒業したらこういう仕事に就きたい、高校を卒業したらこういうところに進学したい、という《本気の》目標ができれば、そうなるために今やるべきことは何か、と考えることができます。「やる気」とは違うかもしれませんが、粛々とやるべきことをやるようになります。

なかなか《本気の》将来の目標を見いだせない高校生も多いのが実態ですが、本質的に大切なことですので、ときどき思い出して会話のネタにしていただけたらと思います。

目標を見定めるのは早いに越したことはありません。
高校入学直後に高校卒業後の話をしても……と思われるかもしれませんが、それでも高校生活の充実のためには、早めに「高校を卒業したらどうするの?」と問いかけましょう。進学するにしても就職するにしても、社会の状況と無関係ではありません。

保護者としてだけでなく、人生の先輩として接してあげてください。

もちろん、長期の目標でなくても、次のテストではこうありたい、あの子には負けたくない、などの短期的な目標も同様に勉強のモチベーションになりますが、そこは本人に任せて、保護者としては、最も重要な長期的な目標づくりのサポートをしてあげてください。

「やる気」の前に行動を

たとえば、会社員が「やる気」に満ちてがんばっていた仕事から、突然、思いもしなかった新しい仕事に異動を命じられることはよくあることです。
そのようなときには、一つひとつやることを覚えながら、何らかの面白さややりがいを見つけていこうとすると思います。
「やる気」の前に「行動」が必要です。

高校生は毎日新しい学習内容に出合います。中には何をしたらよいのかわからない、興味を感じないようなこともあるでしょう。
そのとき、上の会社員と同じように、新しいことに出合ったら、まずやってみる、そして一つひとつできることを増やしながら、何らかのおもしろさを見つけていくということができればよいと思います。

会社員にそれができるのは、もちろん、給料を得る目的があるという大きな違いもありますが、仕事には時間や場所の制約があるから、そして仕事は自分一人で完結していないからです。

ルールづくりと仲間づくり

「場所の制約」が学習に影響するからこそ、「自習室」の提供というサービスが広がってきました。
家庭学習で「場所の制約」と言っても難しいので、「時間の制約」を考えましょう。

「○時から○時はスマホを手にしない」「○時から○時はゲームをしない」「○時から○時は勉強する」などいろいろな決め方がありますが、基本的には本人に決めさせて、保護者に共有してもらうようにしましょう。
自分で決めて自分で動くことができるためのトレーニングにもなります。

そして自分一人で完結しない、つまり、友達と一緒に勉強する環境を考えてみましょう。
公立中学校に通っていたら、テスト前に近所の友達と一緒に勉強する、ということができたと思いますが、高校生になるとなかなかそうもいきません。
しかし、高校生は、SNSというコミュニケーション手段をもっています。

宿題の中身を確認したり、ノートの画像を送信したり、解き方を教え合ったりなど、勉強に関わるコミュニケーションにも多くの高校生がSNSを使っています。
そういった仲間づくりに保護者が関与するのは難しいですが、たとえば、定期考査の前に「一緒にテスト勉強する友達はできた?」「SNSを使って一緒に勉強している高校生もいるんでしょう?」など、勉強の仲間づくりのきっかけを与えてみるとよいのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

保護者の方から見て「やる気がないな」と感じたら、やる気がないように見えること自体を責めるのではなく、ルール作りや仲間づくりなどの勉強の環境に着目して、習慣化の支援をしましょう。

目標づくりにしても、ルール作り・仲間づくりにしても、大切なのは自己決定できるように導くことです。
18歳成人になり、「保護者」である時間もあとわずかです。これまでよりも早く成人として生きていくトレーニングが必要だということを家庭でも意識していただけたらと思います。

プロフィール


西島 一博(にしじま かずひろ)

ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳などの制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。

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