増え続ける教育費にどう対応する?進級進学シーズンに確認しておきたい教育費のはなし
- 教育費
春は進級や進学シーズンですね。親としては成長した子どもの姿が見られうれしい反面、年々かさむ教育費に気持ちが沈んでしまっているかたも多いのでは?
「教育費はいったいいくらかかるの?」
「いくら準備しておけばいいの?」
「教育費が年々増え続けているのはなぜ?」
「教育費を抑える方法はないの?」
そんな疑問にお答えしながら、今回は進級や進学時に考えておきたい教育費の話をお伝えしたいと思います。
教育費のピークはいつ? どれくらい準備したらいい?
多くのご家庭では、教育費のピークをお子さんが大学生になった時に迎えることになります。しかし、選ぶ学校によっては、大学生になる前にピークを迎えることもあるでしょう。ここで教育費の平均額を、調査結果を用いてご説明したいと思います。
まずは幼稚園から高校までの教育費について、文部科学省の調査結果(表1)から確認しましょう。
教育費は、通う学校が公立か私立かによって大きく異なります。
たとえば、すべて公立に通った場合は総額約541万円、幼稚園のみ私立でそのほかは公立に通った場合は約635万円、高校だけ私立だった場合は約694万円、幼稚園と高校が私立でそのほかは公立の場合は約788万円、小学校のみ公立でほかが私立の場合は約1,063万円、すべて私立だった場合は約1,830万円となります。
表1 幼稚園3歳から高校3年までの15年間の学習費総額
出典:文部科学省「子どもの学習費調査」(平成30年度)
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf
高校卒業後の教育費は、選ぶ学校によって異なります。入学費用も含めた進学先別費用を日本政策金融公庫の調査結果(表2)から確認してみましょう。
たとえば、4年制の大学に進学する場合は、国公立大学で約481万円、私立大学文系で約690万円、私立大学理系の場合は約822万円が平均的な費用です。
表2
出典:日本政策金融公庫 令和3年度「教育費負担の実態調査結果」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html
教育費をどれくらい準備したらいい?
次に、教育費はどれくらいためておけばいいのかについて考えてみます。
できれば高校生までの教育費は家計の中から捻出し、大学入学時までに1人当たり400万円ためることを目安に考えるとよいでしょう。さらに理系の大学を目指すなら、400万円以上ためることを目安にしましょう。
それなりの費用をためることになりますが、児童手当をためていけばそう難しくはないはずです。児童手当をため続ければ総額200万円ほどになるからです。児童手当は基本手をつけないでためる、これを鉄則として覚えておいてください。
教育費が増えていると感じる要因は?
「教育費が増えている」と感じる理由の一つには、塾代が原因となっていることも考えられます。
文部科学省が発表する教育費の平均額より、塾代を抜粋してみたいと思います。
塾代の平均額
出典:文部科学省「子どもの学習費調査」(平成30年度)
https://www.mext.go.jp/content/20191212-mxt_chousa01-000003123_03.pdf
塾代は、子どもが通う学校が公立か私立かによって違い、公立では中学校の塾代が一番高く、私立では小学校の塾代が高額になっています。
しかしこれらの数字は、塾に通う人だけではなく、通わない人も含めた平均額となっています。つまり、実際にはもっとかかっている可能性もあるのです。実際に中学受験をする場合となると、年間100万円近くかかる塾もあります。
また、大学受験をするための予備校の費用は、年間100万円くらいかかるところがとても多いです。塾代は教育費を押し上げている大きな要因となることを覚えておきましょう。
一方、その他の要因には、昨今日本の平均的な給与が下がっていることも関係しています。
国税庁が公表する「民間給与実態統計調査」(表3)で確認すると、2020年の平均給与は433万円となっているのですが、実は日本人の平均年収は2000年代初めのころより下がっているという実態があります。
さらに近年は、コロナ禍で給与が減少しているご家庭も少なくありません。
そのような状況でも、「子どもに良い教育を受けさせてあげたい」と考え、「多少無理をしてでも教育費を捻出している」ご家庭も多いと思います。
収入に対する支出の負担感が、教育費が増えていると感じる要因にもつながっているでしょう。
表3
教育費の負担を減らす策(1)「通信教育を利用」
仮に塾代が教育費の負担を押し上げる主な理由だとすれば、負担を減らすための策を考えることが賢明です。
たとえば、教育のすべてを塾に頼るのではなく、通信教育を利用する方法もあります。小学生向けの通信教育の中には、月額2,000円台や3,000円台のコースがあり、それらを利用すれば経済的な負担はかなり軽減されるはず。筆者の子どもの例でお話しすると、筆者の子どもは、小中学校時代は基本通信教育を使用し、受験期のみ塾に通うようにしたことで、大幅に教育費を削減できました。
子ども本人の向き不向きや、親も管理できるかなどを考えながら、利用を検討するとよいでしょう。
教育費の負担を減らす策(2)「収入と貯蓄を増やす」
筆者の周りを見ると、「子どもが小学生になったタイミングで働き始める」かたや、「中学生になったタイミングでフルタイム勤務を始めた」かたが多く見られました。進級や進学に合わせて、働くことで収入を増やすことを検討されてもよいのではないでしょうか。
また、貯蓄を増やすことも忘れてはいけません。いま一度家計を見直して、収入と支出のバランスを確認することが大切です。そして貯蓄を増やすうえでもっとも効果的なのが、収入を得たら真っ先に一定のお金を貯蓄に回すことです。「先取り貯蓄」と言います。確実にお金をためるなら、先取り貯蓄が鉄則です。
子どもにも家庭の金銭事情を話しておこう
親は教育費をいくらためれば安心できるか。これについては正解がありません。
なぜなら親が希望していた進学先に、子どもが必ずしも進むとは限らないからです。「公立に行ってほしかったのに、私立に行くことになった」「子どもが突然留学したいと言い出した」というような想定外の出来事はよく起こり得ること。
そのような事態に備えて、日頃から子どもと進学先について話し合っておくことをおすすめします。
話し合いの際は、親の理想を子どもに押し付けるのではなく、子ども主体で考えてあげましょう。また、小学校高学年や中学生くらいになると、子どもも金銭感覚がある程度養われるため、家の金銭事情を話しておくこともよいでしょう。
あるご家庭では、子どもの大学入学と父親の定年退職を迎える時期が重なるため、事前に親が子どもに「大学は奨学金でまかなってほしい」と伝えました。するとお子さんはその事情を受け入れ、奨学金を利用した進学計画を子ども自身が立て進学したそうです。
いざという時に、親と子どもの双方が納得できるように、親の金銭事情を踏まえて話し合っておくことも必要です。
まとめ & 実践 TIPS
気分が新たになる進学や進級時は、教育費について考える絶好のタイミングです。
今まで教育費について漠然とした不安を抱えていたかたは、このタイミングで貯蓄額を確認したり、ため方を見直したりしてみてください。
また、今まで子どもの希望を聞いたことがないようなかたは、ぜひ将来について話し合ってみてください。
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