「通知表の成績アップでご褒美」は要注意?!「やる気」が下がる原因にも【子どもの心理学】

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間もなくやってくる冬休み。そして学期末といえば、「通知表」をもらう時期でもありますね。中には「成績がUPしたら欲しいものを買ってあげる」という約束をしているご家庭もあるのではないでしょうか?
実は、心理学的な見地からみると、子どもにご褒美を与えることは“長期的には逆効果”だと言われています。今回は、子どもの動機づけについて研究されている筑波大学人間系准教授の外山美樹先生にお話を伺い、「ご褒美」を与える場合の注意点と、どうすればご褒美なしでも子どもをやる気にさせられるのかについてご紹介します。

この記事のポイント

ご褒美による効果は一時的なもの。「依存性がある与え方」に注意!

「子どもに、頑張ったらご褒美をあげると約束したら、実際に努力してくれた」という経験のある保護者は、多くいらっしゃるでしょう。確かに、ご褒美をあげることでお子さまが期待に応えてくれることもあります。しかしそれは一時的な効果であり、何度もくり返していると長い目でみた時に逆効果の可能性もあると言います。なぜなら「勉強=ご褒美のためにするもの」と思い込んでしまい、ご褒美に『依存』してしまうからです。

ご褒美に依存してしまうと、「ご褒美がなければ勉強したくない」と考えるようになってしまい、「自律的に学ぶ姿勢」がどんどん失われてしまいます。今まで自律的に勉強していたお子さまでさえ、勉強とはご褒美を得るためにするものだと思い込み、自分自身で納得して勉強するというよりも「どうすればご褒美がもらえるのか?」という基準で物事を考えるようになってしまうのです。
ですから、もし今回の「通知表」のほかにも、何かにつけてご褒美を約束しているというご家庭は、少しその頻度を見直した方がよいかもしれません。

    ご褒美に依存してしまうと

  • ・「学ぶ姿勢」が失われていく
  • ・「どうすればご褒美がもらえるか」という基準で物事を考えるようになる

子どもの頑張りを認めるために効果的なほめ方とは?

そうは言っても、「勉強を頑張って成績が上がった子どもを親としてはほめてあげたい。」という想いもありますよね。

そこで効果的なのは、何かを買う・お小遣いUPといった物理的なご褒美ではなく、家族みんなで食事に行く・子どもの好きな場所へ出かける、といった心理的に満たされるご褒美を与えてあげることです。漫画やおもちゃなど、お子さまだけが満足するものではなく、家族みんなで共有し合える思い出を作る方が、お子さまのモチベーションを維持する効果が高く、依存性も低いと言われています。

もちろん、言葉でたくさん励まし、ほめてあげることも忘れてはいけません。大好きな家族に認めてもらうことで、お子さまは自信を持ち意欲を発揮しますので、本来は言葉でほめてあげるだけでも十分なご褒美に値するのです。

お子さまがすでに「ご褒美慣れ」してしまっている場合、いきなりご褒美をやめてしまうと約束を破られたと感じさせてしまうかもしれません。その場合は、物理的なご褒美の頻度を減らし、心理的なご褒美へと徐々にシフトするようにしましょう。まずは、ご褒美に依存させないことが大切です。

効果的なほめ方は

  • ・物理的なご褒美でなく、子どもが心理的に満たされるようにする
  • ・言葉でほめてあげるだけでも十分なご褒美に値する

通知表をもらう学期末は、「学ぶことの意味」を親子で考える機会に

通知表をもらうこの機会に「なぜ勉強するのか?」を親子で一緒に考えてみるのはいかがでしょうか?

本来、学ぶことの意味とは「自分の能力を高めること」「未来の選択肢を増やすこと」「社会に貢献すること」などですが、勉強する意味や価値を理解しないまま、「ただ強制的にやらされている」と感じているお子さまが多いのも事実です。そのことが自律的に勉強できない一因にもなっています。

保護者はご褒美で結果を促すのではなく、勉強の本質をお子さまに日頃から伝え、いずれは自ら考えられるように導いてあげましょう。そうすることで、自律的に学ぶ姿勢が自然とはぐくまれていきます。

まとめ & 実践 TIPS

「通知表の成績アップでご褒美」の効果は一時的なものでしかありません。ご褒美のために勉強する習慣が身についてしまうと、自律性を失うことにもつながってしまいます。
これまで、通知表の成績アップを条件にご褒美を与える約束をしていたご家庭では、お子さまの今後のためにも、ご褒美への依存から抜け出せるよう工夫してみてはいかがでしょうか。言葉でほめて認めてあげる、心理的に満足させてあげる、これだけでもお子さまにとっては十分なモチベーションになります。
「通知表」をきっかけにして、学ぶことの本質を親子で一緒に考え、自律的に学ぶ姿勢へとシフトするチャンスに変えていけるとよいですね。

プロフィール



筑波大学人間系准教授。博士(心理学)。筑波大学大学院博士課程,鹿屋体育大学講師を経て現職。主な専門領域は教育心理学。教室環境(友人関係、教師との関係、教室環境など)が子どものモチベーションに及ぼす影響や自己認知について研究している。著者に『実力発揮メソッド—パフォーマンスの心理学』(講談社)、『行動を起こし、持続する力—モチベーションの心理学』(新曜社)他。

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