小学校の「プログラミング学習」に向けて、幼児期から「プログラミング的思考」を育むために家庭でできること

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小学校で必修化されたプログラミング教育。コロナの影響で、地域や学校によりスタートが遅れたケースもあるかもしれませんが、2020年度から導入されています。
プログラミング教育というと、「プログラミングのスキル」を身に付ける授業だと思われがちですが、その目的は「プログラミング的思考(論理的思考)」を学ぶこと。そこで今回は幼児教育とデジタルメディアの関わりを長年研究されている愛知淑徳大学の佐藤朝美先生に、プログラミング教育についてや幼児期からできる取り組みについてお話を伺いました。

この記事のポイント

プログラミング学習とは?

文部科学省の発表によると、プログラミング教育の目的は、プログラムのソースコードを書けるようになるということではなく、『論理的に考える力をはぐくむこと』とされています。

情報技術を効果的に活用しながら、論理的・創造的に思考し課題を発見・解決していくために、「プログラミング的思考」が必要であり、そうした「プログラミング的思考」は、将来どのような進路を選択しどのような職業に就くとしても、普遍的に求められる力である。
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合わせが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力。
(参考:文科省「小学校プログラミング教育の手引き(大三版)」)

先進的に取り組んでいる幼児教育の現場では子どもたちの多くが、ワクワクと楽しみながらこのプログラミング学習に取り組んでいる様子がみられます。正解・不正解にとらわれることなく、「こうしたらどうなるか?」を何度もトライしながら試せるのが、このプログラミング学習の特徴ですから、子どもたちが夢中になるのもうなずけますね。
そうして試行錯誤をくり返すことで、自ら設定したゴールに向けた答えを見つけ出し、論理的に考えていく思考を身に付けていきます。

近年、「いじくりまわす」という意味の≪ティンカリング≫という言葉が注目されています[1]。家財道具を修理してまわった流しの修理屋(ティンカー)を語源に持つ言葉で、ものづくりを通して学ぶためには、さまざまな素材や道具、機械を「いじくりまわす」という感覚がとても重要だといいます。まさにこの感覚は幼い頃から持っているものですよね。

プログラミングに夢中になって取り組むことができれば、子どもたちはそこから多くを学ぶことができるでしょう。大人になるとつい失敗を恐れるようになってしまいがちです。ぜひ今だからこそ味わえる「いじくりまわして存分に楽しむ経験」をプログラミング学習を通して、子どもたちにさせてあげられるとよいですね。

[1] Wilkinson, K., Petrich, M. 金井哲夫(訳) (2014) 「ティンカリングをはじめよう」. オライリー・ジャパン

幼児期からできるプログラミング学習とは?

最近ではプログラミングが学べる幼児向けのおもちゃも多数販売されています。たとえば、「前に進む」「横に曲がる」などのカードを並べて動きの指示を作り、ロボットにスキャンさせることで思い描いた通りに動かす、というものがあります。遊び感覚で取り組めるので、小学校に入る前に慣れ親しんでおくのもよいでしょう。
また幼児期のプログラミング学習に特化したアプリもあります。

◆参照:スクラッチジュニア
https://www.scratchjr.org/

小学校のプログラミング教育でも使われているスクラッチ(Scratch)というビジュアルプログラミング言語を幼児でもプログラミングできるようにシンプルにしたものです。キャラクターを動かしたり、ジャンプさせたり、踊らせたり、歌わせたりする動きを、見た目に分かりやすいブロックを使って命令しながら、論理的に考えることを学びます。文字はひらがなで表示されるので未就学児でも読むことができ、操作方法も小学生向けのスクラッチに比べて、よりシンプルなものになっています。

ごっこ遊びのようにキャラクターを動かしたり、お話を作ったりしながら、プログラミングの基礎である「順次・繰り返し・分岐」を感覚的に使用することで、プログラミング的思考の種をまくことにつながります。

家庭内でもはぐくめる「プログラミング的思考」

普段の親子の関わり合いの中でも、プログラミング的思考をはぐくむことができます。簡単なやり方としては、毎日の生活の中で行っていることの「順番」をお子さまに考えさせたり、ゴールまでの「細かい道筋」を組み立てたりするよう促してみましょう。

たとえば、夕飯を食べてから寝るまでをプログラミングしてみてください。<夕飯を食べる>→<食器を片付ける>→<お風呂に入る>→<パジャマを着る>→<歯を磨く>→<布団に入って寝る>……といったように、ゴールの寝るという作業までに必要な行動を順番に考えてみます。慣れてきたら、より細かくプログラミングをしてみましょう。たとえば、「歯を磨く」を細かくプログラミングするなら、<歯ブラシをとる>→<歯磨き粉をつける>→<奥歯を磨く>→<前歯を磨く>……といった具合になりますね。

プログラミング的思考に必要なのは一つひとつの動作を細かく分解し、処理の順番を設定する力ですので、このように日頃から考えるクセをつけておくと、プログラミング的思考の素地が養われます。これはいずれ、「段取り力」と呼ばれるものや、人に順序立てて物事を伝える力にもつながっていきます。

まとめ & 実践 TIPS

幼児期は、正解や不正解、成功や失敗にとらわれることなく、好奇心のおもむくままにトライ&エラーをくり返せるとても貴重な時期です。プログラミング学習を通じて、正解のない中で楽しむ経験を積めるとよいですね。また、普段の生活の中でもお子さまに考えるきっかけを与えることで、プログラミング的思考の素地を養うことができます。小学校のプログラミング学習に先駆けて、今からご家庭内で取り組み始めてみるのもよいでしょう。

プロフィール



愛知淑徳大学人間情報学部准教授。東京大学大学院学際情報学府博士課程、情報学環助教、東海学院大学子ども発達学科を経て現職。教育工学、幼児教育、家族内コミュニケーション、学習環境デザインに関わる研究に従事。日本子ども学会(理事)。オンラインコミュニティ「親子de物語」で第5回、「未来の君に贈るビデオレター作成ワークショップ」で第8回、「家族対話を促すファミリー・ポートフォリオ」で第11回キッズデザイン賞を受賞。

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