反転授業とは?メリット・デメリットや最新事例を紹介

「反転授業」という言葉を耳にしたことはありますか? 近年、従来の授業とはまさしく180度異なる授業形態が注目を集めています。反転授業とは、タブレット端末やデジタル教材で授業前に自宅学習し、授業では演習や議論を行う授業形態。情報通信技術(ICT)も活用した反転授業は、わが国における教育にどのような変革をもたらすのでしょうか。

反転授業とは?

通常思い浮かべる授業といえば、先生が教壇に立って講義を行うものですよね。そして、復習として宿題を出されるのが一般的だと思います。反転授業は、その従来の授業形態をまさに「反転」させたもので、家庭でいわゆる「授業」を映像教材・動画を用いて予習の形で受講し、学校の教室で行う授業の時間では通常「宿題」として扱われる演習や、学習内容に関わる意見交換などを行うものです。つまり、学びのインプットとアウトプットの場を全く逆にするのです。
2000年代にアメリカで始まった試みで、国内でも東京大学を始めとするいくつかの大学が試行を始め、現在注目を集めています。

反転授業はハイブリット型授業のひとつ

反転授業は、ハイブリッド型授業のひとつです。ハイブリッド型授業とは、対面授業とオンライン授業とを組み合わせた授業システムのこと。コロナ禍において、感染予防を行いながら、学びの機会を充実させるものとして、小中学校、高校、大学など各教育段階で導入が進んでいます。

ハイブリッド型授業の代表的な3つのパターンを見てみましょう。

ハイフレックス型授業

同時中継方式の授業のこと。学生・生徒は、教師が教室で実施している授業を、対面でもオンラインでも受講できます。自身の状況に合わせて選択できることがメリットとなります。

ブレンド型授業

ブレンドという言葉の通り、目的に合わせて対面授業とオンライン授業とを組み合わせて構築された授業のこと。反転授業は、ブレンド型授業の1つとなります。

分散型授業

生徒・学生を2つのグループに分け、グループごとに順番に対面授業に取り組むもの。1つのグループが教師による対面授業を受けている間に、もう1つのグループはオンライン授業や課題演習に取り組み、次の授業ではそれを入れ替えるというように分散して授業を行います。

反転授業のメリットや効果は?

反転授業によってもたらされるメリットには、どのようなものがあるでしょうか。4つのメリットをご紹介します。

【メリット1】お子さまが意欲的に取り組める

従来の授業は一方的に知識を伝えることに主眼が置かれがちですが、反転授業では、自宅での事前学習で知識の習得が行われているため、もっている知識をどのように生かすかに焦点が当てられます。それにより、お子さま一人ひとりの能力や特性に応じた学びが可能になり、難しい課題や発展問題に挑戦させることができます。

【メリット2】教員がお子さまの実態を把握できる

授業は事前に自宅で学んだ内容を用いてアウトプットする場になるため、教員はお子さまの理解の度合いを一人ひとり細かく確認することができます。

【メリット3】授業で問題解決能力を育てることができる

お子さまはタブレットを自宅に持ち帰り、予習の映像教材を視聴したうえで授業を受けます。基礎知識や要点を予習しておくことにより、授業の中では「学び合い・教え合い」などの協働的な学習やディスカッション、プレゼンテーションに時間を充てることができるのです。協働的な学習を通じて、自分の考えをまとめ、議論により深め、アウトプットまで行う問題解決能力を身につけることが期待できます。

【メリット4】学習効率を上げる

映像教材・動画では、わからなかった内容を繰り返し閲覧し確認することができます。自分の理解度やペースに合わせて繰り返し視聴できるため、予習時の理解も高めることができます。また、復習にも活用することができるため、知識を定着させる効率が格段にアップします。

反転授業のデメリットや注意点は?

メリットの多い反転学習ですが、デメリットも存在します。どのような点に注意していくべきか見ていきましょう。

【注意点1】保護者のサポートが必要

宿題としている予習を行わなければ、反転授業の意味はなくなってしまいます。しかし、中には映像授業やオンライン教材の閲覧に慣れておらず、戸惑う生徒もいます。しっかりと効果を得るためには、保護者が家庭での学習を促し、支えてあげる必要があります。

【注意点2】ハードウェアを確保できるのか

タブレット端末などの確保、インターネット回線の整備が十分になされるのかという課題も大きく立ちはだかります。家計の負担が大きくならないように、自治体の施策が求められます。

事例:佐賀県武雄市の例

実は、すでに反転授業を導入している自治体もあります。佐賀県武雄市の全11校の公立小学校では、2014(平成26)年より児童一人ひとりにタブレットを支給し、「スマイル学習」という名で反転授業を行っています。
全教科の全ての時間に反転授業を導入しているわけではなく、対象は3~6年生の算数と4~6年生の理科。まだまだ実績は少ないものの、2015年11月に行われた調査では、「明日の授業が楽しみ」「少し楽しみ」と答えた児童が8割を超えるなど、学習意欲へ好影響が見られています。

事例:宝仙学園小学校の例

東京都の宝仙学園小学校では、小学3・4年生を対象に、夏期補習会で「オンライン反転学習」が実施されました。反転授業で予習を行う際の取り組み率の低さの原因となっていた「動画の長さと質」を改善。以前は20~30分かかっていた予習動画を5分程度に置き換えることで、予習実施率100%達成と理解度向上を実現させています。

また、実際に取り組んだ生徒からも好評で「わかりやすさ:は10点満点中平均9.29点、「やる気度」は10点満点中9.37点という高いスコアとなっています。

まだまだ課題が山積みの反転授業ですが、今後全国に波及するのか、新しい学びの形が日本の教育の未来にどのような影響を与えるのか、注目したいところですね。わが国は今後ますます、少子高齢化、人口減が急速に進むと予測されています。だからこそ、お子さまのより良い未来を、教育を通じて考えなければなりません。 

1人1台端末や、導入が加速するオンライン授業で再注目も

GIGAスクール構想により、2021年度よりほとんどの小中学校で生徒1人1台端末が実現します。高速大容量の通信環境の整備も進み、オンライン授業やICTを活用した新しい学びが、今後ますます普及することが予測されています。

中でも、講義や知識をオンライン授業で家庭で予習、授業では演習やディスカッション、プレゼンテーションを行う反転授業は、特に普及が見込まれるものです。学習効率を向上させる効果はもちろん、これからのグローバル社会で生き抜く力を養成するアクティブラーニングの実践の場となることも期待されています。

出典
※武雄市教育委員会 武雄市「ICTを活用した教育」検証報告
https://www.city.takeo.lg.jp/kyouiku/

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