進む学校の防災機能の整備 自治体格差に課題も‐斎藤剛史‐

国立教育政策研究所の「学校施設の防災機能に関する実態調査」(2015<平成27>年5月1日現在、外部のPDFにリンク)によると、避難所となっている学校の防災施設・設備の整備が前年度よりも進んでいることがわかりました。しかし、いまだに防災施設・設備の整備が遅れている都道府県もあり、自治体格差が目立ちます。現在、学校の防災体制はどうなっているのでしょうか。

避難所に指定されている公立学校は、小中学校が94.4%、高校が73.5%、特別支援学校が39.4%などで、公立学校全体の90.5%が災害などの際の避難所に指定されています。東日本大震災では学校が避難所となり、大きな役割を果たす一方、電気や水の確保をはじめとしてさまざまな課題も見られました。このため文部科学省は、避難所となった学校が備えるべき施設・設備の在り方などをまとめています。
調査結果を見ると、「通信装置」を備えている学校は61.3%、「備蓄倉庫等(学校敷地内)」は51.5%となっており、いずれも初めて6割と5割を突破しました。この他、「自家発電設備等」は43.9%(前年度40.2%)、「要配慮者に配慮したスペース」は49.0%(同47.1%)、「プライバシーに配慮したスペース」は47.5%(同46.0%)などとなっています。避難所となる学校の施設・設備の整備は、確実に進んでいるようです。

一方で、課題もあるようです。たとえば、「屋外利用のトイレ」の整備率は70.6%ですが、東日本大震災直後の2011(平成23)年度当時は65.7%でした。同様に「体育館のトイレ」は2011(平成23)年度に78.0%だったものが15(同27)年度は82.3%、プールなどの水を飲み水に変える「浄水装置」等も29.7%から4年間で37.7%に増えただけです。整備に予算のかかるような施設・設備は、実際にはあまり増えていないということになります。
教育委員会と防災担当部局との連携を防災マニュアルなどで明確化している市区町村は7割以上に上るものの、学校を避難所として利用する際の施設利用計画を策定している市区町村は5割以下にとどまっています。避難所となる学校の施設・設備の点検・維持管理をしているというのも6割以下という状況です。全国の市区町村にはさまざまな事情があるため一概には言い切れませんが、やはり東日本大震災から4年以上もたっているのに歩みが遅いといえるでしょう。

さらに問題なのが、自治体格差です。たとえば、「備蓄倉庫等(学校敷地内)」を見ると、神奈川県は98.1%、東京都は97.0%が整備しているのに対して、佐賀県は1.5%、秋田県は6.0%などとなっています。また非常用の自家発電設備も、神奈川県は86.9%、青森県は86.8%が整備しているのに対して、島根県は4.7%、鹿児島県は7.5%にとどまります。
これには財政事情だけでなく、大きな災害が予想されるかどうかという地域の事情なども関係しているようです。しかし、災害はいつどのような形でやってくるかわかりません。そして、災害が起これば頼りは避難所となる学校です。いざという時のためにも、十分な備えをしておくことが望まれます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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