学校施設の津波対策や避難所機能を強化 整備指針改定で‐斎藤剛史‐

9月1日は防災の日です。2011(平成23)年3月11日の東日本大震災による被害が思い出されますが、最近では台風・竜巻・ゲリラ豪雨など地震や津波以外の災害も多発するようになってきました。このような中で文部科学省は、幼稚園から高校、特別支援学校までの学校施設整備指針をそれぞれ改定し、各都道府県教委などに通知しました。改正された整備指針は、津波などの災害に対する学校の防災機能の強化を打ち出しているほか、災害時の避難所としての留意点などを示しています。

学校施設整備指針は、公立学校の校舎や体育館などの施設を建設したり改築したりする際の参考となるものです。改正された学校施設整備指針は、東日本大震災の教訓を取り入れ、地震に対する対応や、津波への対策を本格的に盛り込んでいるほか、災害時に学校が地域住民などの避難所となることを前提とした、施設・設備の整備を進めることとしているのが大きな特徴です。
まず、津波や洪水などの被害が予想される地域に立地する学校については、周辺の高台や校舎の屋上などへの避難経路をまず確保したうえで、さまざまな対策を検討することとし、避難経路の確保が困難な場合、学校の高台への移転や校舎の高層化など抜本的な対策を取ることを求めています。これらは東日本大震災による津波の際、避難する具体的な場所が明確に決まっていなかった学校があったこと、屋上へ避難する通路がなかった学校があったことなどの反省を踏まえたものです。ただ実際問題として、津波が予想される地域でも避難可能な適当な高台がないところも少なくありません。学校移転や校舎の高層化となると用地などのほか多額の建設費用が必要となります。市町村などの自治体が今後、どう対応するかが大きな課題となってくるでしょう。

一方、大規模な災害時には学校が地域住民などの避難所として非常に大きな役割を担うことになるというのも、東日本大震災から得られた教訓です。このため改正された整備指針では、避難所としての学校施設の在り方を示すとともに、子どもたちの教育の場として早期に授業を再開することができるように避難所機能と教育機能の区画を分け、施設を計画しておく必要があるとしています。また、高齢者用の手すり、障害者用のトイレの整備など障害者・高齢者・妊婦などへの対応も施設の建築・改修などの計画にあらかじめ盛り込むよう求めています。避難所機能として具体的には、車いすなどに対応するための避難経路などのスロープ化、水道が使えなくなることを考慮してマンホールトイレの整備など避難者用のトイレの確保、停電時にも対応できる放送施設の整備、浄水機能付きのプール、自家発電設備などが挙げられています。

学校の防災では耐震化対策などに目が向きがちですが、保護者なども避難所としての学校という視点で学校の施設・設備をチェックしておくことも必要でしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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