過去最多ペースで増加する児童虐待 問題点を専門家が解説
警察庁のまとめによると、2015(平成27)年上半期(1~6月)に児童虐待事件として検挙した件数は376件に上り、上半期としては過去最多を更新したことがわかった。このままいけば年間を通じて児童虐待事件は過去最多となる可能性が高そうだ。この点について、ベネッセ教育情報サイトでは、教育ジャーナリストの斎藤剛史氏に解説してもらった。
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2015(平成27)年上半期に全国の警察が検挙した傷害や暴行などの犯罪のうち、児童虐待に絡んだ事件は合計376件(前年同期比18.6%増)に上り、上半期では過去最多となりました。児童虐待事件の内容は、暴行など「身体的虐待」が8割以上を占めており、次いで「性的虐待」、脅迫など「心理的虐待」、育児放棄など「怠慢又は拒否」の順となっています。これらにより検挙された保護者などの数は、前年同期より約2割多い387人で、子どもとの関係を見ると、「実父」が44.4%、「実母」が21.4%、「養・継父」が17.3%、「内縁(の夫)」が10.3%などとなっています。
全国の警察が児童虐待事件として検挙した件数は年々増加しており、15(同27)年上半期の件数を06(同18)年上半期と比べると3.1倍にも上っています。ただ、これらの児童虐待事件は、暴行や脅迫などの犯罪として警察が検挙したという最悪のケースと想定され、児童虐待のうちの氷山の一角にすぎないでしょう。実際、全国の警察は、児童虐待が疑われるとして15(同27)年上半期に約1万7,000人の子どもを児童相談所に通告しています。
他人の家庭の問題に口を出したくないという意識は、一般社会にまだ強く残っているようですが、児童虐待防止法では、すべての国民に児童虐待を発見した際の通報を努力義務(学校など公的機関は通報義務付け)として課していることを、忘れてはならないでしょう。厚生労働省は、15(同27)年7月から児童相談所への通報のための電話番号を「189(いちはやく)」に統一し、警察や消防と同様に3桁の番号でつながるようにしました。文部科学省も7月に、虐待に関する情報を学校間で共有すること、少しでも虐待が疑われる場合は学校で組織的に対応し、関係機関に通報することなどを、都道府県教育委員会などに通知しています。子どもたちを守るためにも、社会全体がもっと児童虐待に関心を持つことが必要だといえます。
出典:過去最多ペースで増え続ける児童虐待、その実態は -ベネッセ教育情報サイト