子どもとインターネットについて専門家が調査結果から感じたことは?

今回はネットワーク社会についての研究者である早稲田大学理工学部の木村忠正教授に「子どもとインターネットについて」の調査結果をもとにお話を伺ってきました。木村教授は調査結果から何を感じたのでしょうか。

根強いインターネットに対する不信感
子どもがホームページ(ブログなど)をもつことについて
広がる「ネットをやる層」と「ネットをやらない層」との格差


 

根強いインターネットに対する不信感

インターネットに対する不安感が強く、表現や他者との交流のツールとしてのインターネットについての認識が弱いという印象です。

ここでは、設問9「あなたのご家庭ではお子さまのインターネット利用にあたり、何かルールとしていたり、教えていることはありますか?」、設問11『「設問10子どもが自分のホームページ(ブログなど)をもつことについてどう思いますか」に対する回答について、なぜそう回答したのかその理由を具体的にお書きください』という2つの質問に対する自由回答を少し詳しく検討してみたいと思います。



自由回答で用いられている単語の出現頻度と文脈を分析してみました。すると、インターネット利用のルールとして、次の4つの関心がうかがえました。

  • 利用時間をコントロールする
  • 1人で利用しない
  • 行動の範囲を限定する
  • 個人情報に気をつける

「時間」という言葉が73回見られたのですが、インターネット利用時間についてのルールを多くのご家庭で設けているように思います。そして、「30分」(44回)、「1日30分」(26回)、「30分以内」(14回)のように、30分が1つの目安のようです。

「小2と4歳の姉妹で、2人ともやりたがるので、私(母親)と3人で、5分ずつの交代です。メーカーのホームページのゲームであっても、好きな本、おもちゃなどであっても5分ずつで、順番でない人は、周りで本を読んだりテレビを見たり、用事をして何を利用しているかは、みんなが知っています」

という方もいらっしゃいました。

この方の例にみられるように、1人で利用はさせない、家族といっしょに利用する、というルールも多いようです。「いっしょ」(69回)、「1人」(で利用しない)(27回)という単語が頻繁に現われました。

また、「サイト」(「決まったサイトしかみない」「遊んでいいサイトは親が決める」など)(88回)、「勝手」(に操作しない)(45回)、「許可」(を得て利用する)(33回)など、行動の範囲を限定して、危険な場所には近づけず、親がちゃんと見守るようにしようという考えが読み取れます。

そして、「名前」(45回)、「住所」(39回)、「個人情報」(27回)など、お子さんが自分や家族に関する情報を安易に教えないルールも多くの方からいただきました。

こうしたルールはいずれも子どもがインターネットを利用する際に重要だと思います。

他方、自由回答をみて気づいたのは、「情報収集ツール」「遊ぶツール」としてのインターネットについてのルールは多いけれど、積極的な「コミュニケーションツール」としてのインターネット利用に関するルールはあまりみられない、という点です。

「チャット」(12回)は基本的に禁止のようですし、「メール」(25回)も、「知らないところからのメールは受けない、開かない」「メールのやり取りは、すべて登録してある人とのみ」などが多い。「言葉に気をつけないと、誤解を与える」「メールは冗談でも一言添えて」といったメールでのコミュニケーションの仕方についてのルールは少数でした。

私たちのこれまでの研究から、インターネットを利用する効用として、



  • 情報収集
  • 噂話を知る
  • ストレス発散
  • 自分を多くの人に知ってもらう(表現し理解してもらう)
  • 付き合い、知り合いを広げる

という5つの因子が区別されています。

そして、日本社会を他の社会と比較調査すると、日本社会にとってのインターネットは、匿名空間であり、情報収集や覗き見こそすれ、社会的ネットワークを広げたり、自分を表現、知ってもらう手段としても側面が希薄であることも明らかとなってきているのです。携帯メールが親しい人たちとの間の親密な社会心理的空間を形成する手段となっているため、インターネットは匿名でのストレス発散の場、噂話に耳をそばだてる場と化しているように思われます。

 
子どもがホームページ(ブログなど)をもつことについて

こうしたインターネットに対する認識は、設問11の自由回答にも強く現れているように思います。

まず、設問6「あなたのお子さまは自分のホームページ(ブログなど)をもっていますか?」の問いに対して、「もっている」はわずか、5.3%でした。93.3%の方が「もっていない」、0.8%の方が「以前もっていたが、今はもっていない」と回答されました。

また、前回の結果で述べられていますが、「子どもが自分のホームページ(ブログなど)をもつこと」について、「とてもいいことだと思う」が2%、「まあいいことだと思う」が16%となっています。

こうした子どものホームページ(ブログ)についての自由回答ですが、「心配」(50回)、「危険」(44回)といった表現が多く見られました。どうやら、「不特定多数」(32回)に子どもが「自己表現」(14回)する「必要」はなく(59回)、子どもは「責任」(30回)をとることはできないという見解が多いようです。ただ、「発信」(27回)、「交流」(12回)については、発信や交流することは難しい、あるいは、まだ無理だというご意見も多い反面、4分の1程度の方は、積極的に評価しています。さらに、「表現」(30回)については、自分の考え、世界、自分自身を表現する力がつくという肯定的な捉え方が多くを占めていました。

インターネットはついつい、不特定多数、匿名の世界と捉えられがちですが、パスワードとIDによって、ご家族やお友だちだけで利用可能にすることができるサイトも数多くあります。そうしたサイトでのホームページ、BBS(掲示板)、ブログなどの機能を利用し、自己表現、他者理解、相互交流ツールとして、インターネットを利用することも積極的に考えてはどうでしょうか?

この7月にまとめられた冊子「親子のためのインターネット活用BOOK〜5つの約束〜」は、子どもたちが十分に気をつけながら、積極的にインターネットの世界に触れるための基礎がまとめられていると思います。家族や友だちといっしょに、ネットコミュニケーションを楽しみ、日常でのコミュニケーションも含め、自己表現や他者理解のスキルを伸ばせるような環境を育みたいものです。

もちろん、子どもたちの場合、みなさまから寄せられたルールが重要であることはいうまでもありません。ただ、あまりに、インターネットが匿名、不特定多数による危険な空間という認識を強調し、利用を制限するのはもったいないと思います。ネットワークを介して、社会的関係を広げたり、深めたり、ネットワークコミュニケーションの技術(言葉遣い、メッセージのやり取り、気遣い、自己表現など)を身につけていく機会を子どもたちにも積極的に与えることに家族で取り組んでみませんか?

 
広がる「ネットをやる層」と「ネットをやらない層」との格差

<編集部より>
とはいえ、学校でネット教育を取り入れることの難しさがあると思われます。たとえば先生にそうした経験やスキルがある人が少ないのではないか、という指摘があります。また、先生と生徒がメールのやりとりなどをすると、「インターネットを使えない子どもがいるのだから不平等だ」と非難されてしまうなどという事例を聞くこともあります。



非常に難しい、深刻な問題だと思います。

「平等主義」というものが「やらない平等」になってしまっているように思いますね。そうなると「ネットをやる層」と「ネットをやらない層」との間に、非常に大きな情報格差を生まれてしまいます。情報を発信したりまとめたりする力に差がつくことになるでしょう。

たとえば北欧のスウェーデンでは1998年から初等中等教育の教員の4割にパソコンを無償配布しました。さらにパソコンを使って教科をどう教えたらいいか組織的に研修したり、子どもたち全員にメールアドレスを配るということをしています。日本では大学で学生全員にメールアドレスを配るようになりましたが、小学校や中学校ではなかなかそういうところまでいっていません。

学校でネット教育をやらないとなると、家庭にネットの環境があるかどうかに依存してしまいます。親がネットワークというものを知らなければ子どもも知らない、ということになってしまいますから、いわゆるデジタルデバイド( 用語の意味 )の問題につながるかもしれません。

教育機会の均等ということを考えると、「ネットをやる層」と「ネットをやらない層」との格差が広がらないうちから学校でネット教育をやっておいたほうがいいとは思いますし、保護者の方には表現と発信のツールとしてのインターネットというものにもっと注目していただきたいと思います。


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