大学の6割に発達障害者が在籍

大学などで障害のある学生の数が増えているという、日本学生支援機構の調査結果前にお伝えしました。紹介した障害のある学生のうち発達障害は、「医師の診断書がある者」に限られていましたが、実は同調査は医師の診断書はないものの、大学などが独自の判断で支援している発達障害のある学生についても調べています。こちらのほうが実態により近い数字といえるでしょう。そこで今回は、発達障害に絞り、改めて大学などの受け入れ状況を見てみたいと思います。

大学780校、短期大学348校、高等専門学校57校の合計1,185校で2014(平成26)年5月1日現在、医師の診断書がある発達障害者は、前年度より329人増の2,722人(大学2,282人、短大97人、高専343人)が在籍しています。これを障害別に見ると、「高機能自閉症等(アスペルガー症候群を含む)」が71.9%、「注意欠陥/多動性障害(ADHD)」が13.3%、「重複」が10.6%、「学習障害(LD)」が4.2%となっています。しかし、このほかにも医師の診断書はないものの学校側が発達障害と判断し、教育上の配慮をしている学生が別に3,569人(大学3,174人、短大196人、高専199人)いることが調査で明らかになりました。これを単純に合計すると、発達障害のある学生は6,291人(大学5,456人、短大293人、高専542人)となる計算です。

医師の診断書がある発達障害学生のうち、授業支援など教育上の配慮を学校側が行っている学生は、前年度より259人増の1,856人(大学1,627人、短大57人、高専172人)でした。これに医師の診断書はないものの、発達障害として学校側が配慮している3,569人を加えると、発達障害により学校から授業支援などの配慮を受けている学生は、前年度より630人増の5,425人(大学4,801人、短大253人、高専371人)となります。医師の診断書のない学生も含めて発達障害者が在籍する学校は、大学が478校(61.3%)、短大が96校(27.6%)、高専が51校(89.5%)でした。さらに、これらの発達障害のある学生に特別な支援を行っている学校は、大学が438校(56.2%)、短大が77校(22.1%)、高専が45校(78.9%)となっています。発達障害のある学生の所属を学部分野別(大学のみ)に見ると、「社会科学」が23.6%、「人文科学」が21.2%、「工学」が21.1%、「理学」が7.4%、「芸術」が7.2%などです。

発達障害のある学生に対する支援内容(複数回答)を見ると、授業の支援では「注意事項等文書伝達」が19.3%、「休憩室の確保」が15.9%、「実技・実習配慮」が14.6%など、授業以外の支援では「保護者との連携」が78.0%、「学習指導(履修方法、学習方法等)」が71.4%、「専門家による心理療法としてのカウンセリング」が66.3%、「社会的スキル指導(対人関係、自己管理等)」が59.8%などとなっています。

しかし、この調査結果には表れない、医師の診断書もなく、学校から特別な支援を受けてもいないという発達障害学生も実際には少なくないと思われます。障害のある子どもたちに多様な進路を保障するためにも、大学などにおける特別支援の取り組みのさらなる充実が求められます。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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