大学の発達障害など受け入れ、どんな対応が可能か

当コーナーでは以前、障害がある学生に対する大学の受け入れ状況発達障害を中心とした大学の対応などを取り上げました。その反響などから障害ある者が大学教育を受けられるかどうかについて、関心のあるかたが多いことがうかがえます。そこで今回は、障害者差別解消法の施行に向けて日本学生支援機構が作成した、「大学等における障害のある学生に対する支援・配慮事例集」を紹介したいと思います。

まず、同機構が事例集を作成した背景とは何でしょうか。一般的にはあまり周知が広がっていない面もありますが、実は2016(平成28)年4月から、障害者差別解消法がいよいよ施行されます。これにより、行政など公的機関では、障害者へ合理的配慮の不提供の禁止が法的に義務付けられるほか、企業など民間には努力義務として課せられることになっています。合理的配慮とは、著しく均衡を逸することなく、過度の負担にならない範囲で障害者に支援・配慮するというものです。つまり2016(平成28)年度から障害のある学生に対する支援・配慮が、国公立大学には義務付けられ、私立大学にも努力義務として課せられるようになるのです。

しかし、どのような支援・配慮が必要かわからない大学も少なくありません。このため同機構は、大学などに向けた事例集を作成し、2016(平成28)年度に備える体制づくりの参考にしてもらうことにしました。
全国188校(大学160校、短大15校、高専13校)から集められた事例は188ケースで、視覚障害、言語障害、肢体不自由、発達障害、統合失調症など精神障害……といった障害別に分類されています。各事例では、障害の申し出・発見から、支援方策の検討、実施内容、その結果、学生の感想などの順に、支援・配慮の実施の内容や実施方法が、段階別にわかるようにまとめられているのもポイントの一つです。

たとえば、発達障害の一つである注意欠陥/多動性障害(ADHD)の学生から相談を受けたある大学は、学生支援課とその学生が所属する学科との間に専用メールアドレスを設け、休講や補講などの毎日のスケジュールを学生支援課が把握し、学生に毎朝伝えるほか、レポートなどの提出窓口も学生支援課に一本化。講義の録音を許可し、授業中のサポートをするチューターを、同学科の学生に依頼するなどの支援を行いました。
また、授業中に問題行動を起こす学生の保護者から相談を受けた大学は、カウンセラーなどの面談により高機能自閉症と判断。各教員に配慮依頼文書を出す一方、担当教員による個別指導、履修相談、レポートなどの提出期限の延長などを実施しました。しかし、この事例では、障害に対する理解不足により、レポートなどの提出期限の延長を一切認めない教員もいたと報告されています。

事例集は大学向けのものですが、進学希望者やその保護者にとっても、どのような対応が大学で可能なのかを知る手がかりとなりそうです。大学には、障害学生にできる限り対応する責任があります。大切なのは、障害により困っていることがあれば、必ず大学と相談することです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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