大学改革を助成金や交付金で誘導へ

進学先となる大学を選ぶためには、偏差値情報だけでなく、さまざまな情報を幅広く集めて分析することが大切です。日本私立学校振興・共済事業団は、2014(平成26)年度「私立大学等経常費補助金交付状況」を発表しましたが、そこからは大学選びの参考となるようなデータを得ることができます。さらには、文部科学省が今後、大学改革をどのように進めていこうとしているのかをうかがうこともできそうです。

私立大学などに対する国の補助金は、同事業団の審査を経て各大学などに交付されるしくみになっています。また、私立大学などへの補助金には、学生数などに応じて配分される「一般補助」と、大学改革の取り組みなどに応じて交付される「特別補助」の2種類があります。2014(平成26)年度の私大補助金交付額は合計3,213億4,400万円(前年度比0.3%増)と3年ぶりの増額となりました。

しかし中身をよく見ると、「一般補助」は前年度比0.7%減なのに対して、「特別補助」は同6.9%増となっています。これは、学生数などで機械的に配分される補助金が減る一方、教育・研究などを評価して交付する補助金が増えていることを意味しています。
文科省は、教育の質の保証、グローバル化への対応などさまざまな大学改革を打ち出していますが、当事者である大学が動かなければ実現しません。そのため私大補助金などの交付方法を変えて、改革に取り組む大学に補助金を手厚くすることで大学改革を進めようというのが文科省の考え方のようです。

特に注目されるのが、特別補助の中の「私立大学等改革総合支援事業」(外部のPDFにリンク)で、交付額が前年度比18.5%増と大きく伸びています。これは、私立大学を(1)教育の質的転換 (2)地域発展 (3)産業界・他大学等との連携 (4)グローバル化の4タイプに分けて、それぞれの取り組みに応じて補助金を出す仕組みです。言い換えれば、これらタイプ別に私立大学を機能分化させていくのが文科省の狙いだと言えます。同事業団がまとめた私立大学ごとの特別補助金の内訳(外部のPDFにリンク)を見ると、各大学がどんなタイプの大学になろうとしているか、どんなことで特色を出そうとしているのかなどの一端を知ることができます。

この他、特別補助の中の国際交流基盤整備補助金の多寡で国際化に対する力の入れ方などがわかるほか、定員割れしているものの経営改善に努力していると認められる大学などへ交付される未来経営戦略推進経費の状況で大学の実情をうかがうこともできそうです。

国立大学についても同様のことが言えます。文科省(外部のPDFにリンク)は2016(平成28)年度から国立大学を、(1)世界最高水準の教育研究を行う大学 (2)特定の専門分野で世界的な教育研究を行う大学 (3)地域の活性化の中核となる大学に分けて、交付金を配分することを検討しています。具体化されれば、国立大学は大きくこの3タイプに分化していくことになるでしょう。
国の大学改革の行方を占う、大学選びのために各大学の実態を知る、などの視点で、補助金や交付金などの資料もひも解いてみてはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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