教科の内容も大胆見直し? 指導要領の改訂論議スタート

2020(平成32)年以降の実施を目指す学習指導要領の全面改訂では、「何を教えるか」から「何ができるようになるか」を重視する方針であることは、以前の記事で紹介しました。その方針に従って、教科などの内容も大幅に見直されることになりそうです。

下村博文文部科学相から諮問を受けた中央教育審議会では、2015(平成27)1月末に「教育課程企画特別部会」を設置して、会合を重ねています。初会合で文科省事務局は、夏ごろをめどに同部会で「論点整理」をまとめ、その後、各教科などの専門部会を発足させたい考えを示しました。
こうしたスケジュールは、過去にも増して大きな意味を持ってくるでしょう。諮問自体が、これまでの学校教育に大きな転換を迫るものと言えます。特別部会では、21世紀を生きる子どもに必要な「育成すべき資質・能力」とは何かをまず確定し、そうした<大方針>に基づいて、各教科などの目標や内容を見直してもらうということになります。
これまでの指導要領といえば、教科などを越えて学校教育全体でどういう子どもを育てるかということは「総則」に書いてあったのですが、どうしてもその後の「各教科」などのほうが記述も多く、これまでの改訂では、各教科などの内容を足したり引いたりする改善が中心になっていた面が否めません。総則との関連を図るにしても、結局はその教科内での見直しにとどまっていました。学校の先生たちの関心も、指導要領の各教科の記述が反映された教科書がどう変わるのかに終始していたと言っても過言ではありません。

しかし今回の改訂では、まず学校全体でどういう資質・能力を育てるのかという大方針の下に、各教科ではそのうちの何を担当するのかという発想が求められます。教育界には「教科書『を』教えるのではなく、教科書『で』教えるのだ」という格言がありますが、それになぞらえれば、教科の内容「を」教えるというより、その教科「で」資質・能力を育てるということが、これまで以上に重視されることでしょう。
全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)のB問題で「活用」の力が問われているように、いくら知識をたくさん覚えても、実際に活用できなければ何の意味もありません。大学入試と高校・大学の教育を一体で見直す「高大接続改革」答申(外部のPDFにリンク)で、大学入試センター試験に代わる複数回実施の「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を創設するよう提言したのも、活用の力となる思考力・判断力・表現力を中心に測ることで、高校と大学が一体となって、そうした能力を伸ばすよう促すためです。

もちろん考えるためには、一定の知識が不可欠です。だからこそ前回の改訂(現行の指導要領)では学力低下の懸念に応える形で、知識・技能と思考力・判断力・表現力などのバランスを取る改善が行われました。「育成すべき資質・能力」を中心とした今回の改訂では、更なる内容(知識)の見直しが求められることでしょう。子どもと日本の将来を考えるうえでも、特別部会の審議状況が大いに注目されます。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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