中高生のインターネット利用の実態は?【第3回】学習とメディア活用~中高生のICT利用実態調査2014より~
スマートフォンやパソコンなどのICTメディアを通じて、中高生の生活世界はどのように広がっているのでしょうか。
前回に引き続き、ベネッセ教育総合研究所が実施した「中高生のICT利用実態調査2014」をもとに、3回シリーズで中高生のネット利用についてレポートしていきます。
今回は「学習とメディア活用」について考察します。
インターネット利用時間と成績には負の相関あり
インターネットやメールの利用時間の長さと成績には、どのような関係があるのでしょうか。
文部科学省が、2014(平成26)年度に実施した「全国学力・学習状況調査」の結果では、携帯電話やスマートフォンの利用時間が多いほど、学力テストの正答率が低い傾向にあることが明らかにされています。
今回、ベネッセ教育総合研究所が実施した調査でも、文部科学省の調査と同様に、インターネット利用時間と成績の間には負の相関があることがわかりました。中学生の成績上位層では「1時間くらい」の回答が最も多いのに対し、下位層では「4時間以上」の回答が最も多くなっています。高校生でも、成績上位者が多い進学校の生徒のほうが、メディアの利用時間が短い傾向が見られます。
上記の結果を見ると、たしかに、メディアの長時間利用が中高生の「学習時間を奪っている」という実態はあるのかもしれません。最近はこうした調査結果を受けて、子どもたちの携帯電話やスマートフォンの利用時間に規制を設ける自治体も出てきています。
とはいえ、第1回で紹介したとおり、中学生のインターネット利用者は9割、高校生では100%近くに上ります。使い道はコミュニケーションだけでなく、「動画サイト(YouTubeなど)を見る」「情報を検索して、見る・読む」なども日常的に行っています。また、インターネットを使って「勉強をする」も、「ほぼ毎日」~「月に1~2回」を合計すると中学生で60.8%、高校生で55.2%となっています。
子どもたちのインターネットの“使い過ぎ”を防ぐために、子どもの発達段階に合わせて大人がある程度の利用時間を規制し、「量」を調整することが大切でしょう。では、利用の「質」についてはどうでしょうか。子どものより適切なインターネット利用について議論するためには、利用時間だけでなく、その「使い方」も考慮する必要があるでしょう。そこで今回は、メディア利用の内容と学習について、より深く考察していきます。
成績層に関わらず、
中高生は学習にさまざまなメディアを利用
成績層によって、学習時のインターネットやメールの使い方に違いはあるのでしょうか。今回の結果を見ると、成績による差が一貫して見られる利用内容は一部で、むしろ成績層に関わらずさまざまなメディアの使い方がなされていることがわかります。「英語や国語、古典の辞書を使う」は中高生とも4割~5割。「メールやチャットで友だちにわからないところを質問する」も高校生で4割~5割となっています。「調べ学習やレポートをまとめるために情報収集をする」は、成績上位層で若干多い傾向が見られますが、これはそもそも、成績のよい生徒にそうした利用機会が多いのかもしれません。
その他にも、学習時の「ながら行動」(並行行動)を調べたところ、中学生の5割、高校生の7割が「携帯音楽プレーヤーやスマートフォンなどで音楽を聴きながら」勉強しており、成績による利用差が見られないことがわかりました。唯一、チャットやSNSを「見ながら」「書きながら」勉強している生徒の割合が、成績下位層において若干高くなっています。
ふだんの学習スタイルが、メディア利用の仕方に影響
これまでの結果を見ると、インターネットの利用「量」と成績の間にはある一定の関係が見られるものの、インターネットの利用の「質」(内容)と成績との間には、明確な違いや関係は見られませんでした。では成績以外で、どのような特徴でメディア利用に違いがあるでしょうか。今回の調査で同時にたずねている学習の仕方に関する項目「わからないことはまず自分で考える」(自力志向)、「わからないところはすぐに誰かに教えてもらう」(他力志向)別にメディアの利用内容を見ると、メディアの利用の仕方に違いがあることがわかりました。
(以下は高校生のデータを使用した結果です)。
●自力志向……メディアは補助的に使う
「調べ学習やレポートをまとめるために情報収集する」や「英語のリスニング、発音を聞く」、「効果的な勉強の仕方を調べる」などで利用率が高くなっています。
●他力志向……わからないところはチャットですぐ質問
「メールやチャットで友だちにわからないところを質問する」のみ、志向による利用率の差が大きくなっています。その他、「アプリで単語や用語を覚える」等でも利用差が見られます。
メディアの適切な使い方を
中高生自身に考えさせる機会を
「メールやチャットで友だちにわからないところを質問する」という学習の仕方自体は全く問題ではなく、むしろ学習において大切な行動です。しかし、その質問が単に答えだけを聞き出したり、思考を深めない利用の仕方に留まっているのであれば、それは学習面においては問題だと言えるでしょう。わからないことを「自分で調べる」にしろ、「質問する」にしろ、自分に合った学習スタイルを考慮しながら使い方を工夫することで、メディアはより有効なものになると考えられます。
調査に先立ち、中高生に学習の仕方についてもインタビューを行いました。その結果、自分がふだんよく使っているメディアを、学習にも役立てていることがわかりました。たとえば、自分がわからない教科や単元の内容について、ネット上の無料授業や講義の動画を探し、それを視聴して勉強している生徒もいました。この生徒はふだんからYouTubeなどの動画をよく視聴しており、この方法を自然に思いついたと考えられます。
また、「勉強中にチャットやメールに邪魔されたくないが、『勉強中だから返信したくない』とは言いにくいので、勉強中であることをさりげなく相手に伝えられるようなアプリがあればいい」、といった友人との関係性に悩む生徒の声もありました。子どもたちは子どもたちなりに、試行錯誤しながらメディアを学習に役立てているようです。
現在、メディア利用については「適切な使い方」が叫ばれています。子どもの発達段階や状況に応じて、大人がメディア利用を管理することはもちろん大切です。しかし、同時に今の子どもたちが悩みながら、工夫しながらどのようにメディアを使おうとしているのかに目を向けることも大切でしょう。
学習に役立てるために、どんな使い方をすべきか、中高生自身が考える機会を持つことが必要なのではないでしょうか。