お子さまとの距離を感じ始めたら…【後編】お子さまに悩みごとがある時のサポート法
小学校高学年になると、お子さまの心は大きく発達し、家庭や学校で悩みを抱えることが増えてきます。そんな時に保護者は、どのようにサポートすればよいのか、前回に引き続き、スクールカウンセラーの渡辺友香先生に教えていただきました。
お子さまの気持ちを決めつけないで声掛けを
お子さまは何も言わないけれど、保護者がお子さまの様子を見ていて少し気になることがある時は、「お母さんは、○○ちゃんと最近遊んでいないことがちょっと気になっているんだけど……」「最近、漢字テストで力が発揮できていないようで、お父さんは心配なんだけど……」というように、保護者を主語にして感じたことを伝えてみましょう。すぐに悩みを言わなくても、保護者が自分のことを気にかけてくれることがわかれば、相談したい気持ちにつながると思います。
注意したいのは、「○○ちゃんとけんかしたでしょう」「漢字テストの点が悪いのは勉強していないからでしょう」と保護者がお子さまの気持ちや状態を決めつけてしまうことです。お子さまなりの理由がきっとあるはずです。それを決めつけられては、本当の気持ちを言い出せなくなってしまいます。まずは、保護者の気持ちを投げかけてみてください。
悩んでいたら丁寧に話を聞いてあげましょう
お子さまが悩みを話してくれたら、保護者のかたにはまずじっくり話を聞いていただきたいと思います。私たち大人でもそうですが、誰かに話を聞いてもらうことで、自分の気持ちを整理できるからです。ただ、お子さまの場合は、大人と違って自分の気持ちを言葉で表現するのは難しいので、たとえば、お友達とけんかしても自分の気持ちを「むかつく」としか表現できないことがあります。その場合は、誰にむかつくのか、どうしてむかつくのか、どうしたらその気持ちが収まりそうなのか、丁寧に話を聞いてあげましょう。細かく聞いてあげると、「○○ちゃんに嫌なことを何度も言われて傷ついた。謝ってほしかったんだ」などと、本人も自分の気持ちを整理できるようになるのです。
保護者が解決法を提示しなくてもよいと思います。本人が自分の気持ちに気付いて、自分なりに解決法を探していくはずです。もし、お子さま自身で解決法がまったく浮かばないようであれば、「どうしたいのかな?」と聞きながら、「こんなことできるかもね」とアイデアを出してあげましょう。それを実践するかどうか、最終的に決めるのは本人です。
悩みを聞く際に注意したいのは、お子さまの気持ちにしっかりと寄り添ってあげるということです。保護者の性格とお子さまの性格が違う場合、保護者はささいなことだと思っても、お子さまはとても悩んでいる場合もあるので、その気持ちをしっかり受け止めてあげましょう。最後には「話してくれてよかった、ありがとう」などと伝えられるとよいと思います。
眠れない、食欲がない場合には要注意
この時期のお子さまは、部屋に閉じこもってまったく話さないということは少なく、完全に心を閉ざすことはないと思います。最初は言わなくても、話したくなったら、話したいことを少しずつ話してくれると思います。ただ、眠れない、食欲がまったくないなどの身体的な症状が現れた時は注意が必要です。思い悩んでいることもあるかもしれません。保護者が思いあたるふしがあるならやんわりと聞いてみる、わからないなら学校の先生や親しい保護者のかたに聞いてみるとよいでしょう。
保護者の対応で注意したいこと
お子さまの相談に乗っていると、保護者自身がつらい気持ちになってしまうことがあります。しかし、保護者もどっぷりと悲しい気持ちに浸ってしまうのは悪循環です。お子さまがその姿を見たら更に悩んでしまうからです。お子さまの気持ちに寄り添うことは大切ですが、それに振り回されない理性を保つことが大切です。また、お子さまのことを思うが故に、子ども同士の問題を、保護者だけで解決してあげようとすると、かえって問題が大きくなってしまう場合がありますので、まずは、お子さまの気持ちを大切に聞き取ってほしいですね。
お子さまの心は大きく成長し、今までの子育てと悩む部分が変わってきていると思います。お子さまが成人した時に、自らの考えで動ける力と必要な時には周囲の人に相談できる力が身に付くように、徐々に手助けする場面を減らしていき、必要な時にはしっかりとサポートできるようにしましょう。