稲刈り後の田んぼで算数の「割合」を学ぶ、地域性を生かした達人の授業
NHK Eテレの教育番組を担当する、NHK制作局チーフ・プロデューサーの桑山裕明氏。番組制作のため多くの授業を見る中で、「こんな先生に教えてほしい」と思うことがあるという。今回は、小学5年生の「割合」の授業で、算数を実際に「使って」学ばせる、山形県のAM先生を紹介してもらった。
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子どもたちが苦手な算数の「割合」。米どころ庄内平野という地域性を生かして、刈り取ったあとの田んぼに残った稲穂「落ち穂」を使い、「割合」「単位当たりの量」「平均」「面積の求め方」に「役に立つ!」と体感させていく授業です。
学校の近くには、白鳥が越冬する「スワンパーク」があります。ここで白鳥が一冬を越すのに必要な食料は540トン。これを、庄内平野の落ち穂でまかなえるかが授業のテーマになりました。そこでまず、田んぼ1枚(100m×27m)に、どれくらいの落ち穂があるのかを数え始めたのですが、残らずすべて調べるのは無理があることに、子どもたち自身が気付きます。
先生の授業の特徴は、
・子どもたちの中ではっきり問題点が出てくるまで「待つ」
・「解決の糸口は、子どもたちのアイデア」からにする
子どもたちは、1平方m単位で落ち穂を数え、その平均を出して、全体の数を推測するアイデアを見つけました。「平均を習っておいてよかった!」と実感できた瞬間です。結果は39g。これに田んぼの面積2,700平方m を掛け、落ち穂の量を105kgと予想しました。農協の試算では約5%が落ち穂になるそうで、子どもたちの予想した量は誤差の範囲内でした。
庄内平野でとれる米の量は、15万1,700トン。先生は模造紙に100個のマスを書き、そのうち5マスを塗りつぶして5%の意味を伝え、これが落ち穂の量であることを伝えます。残りの95%は収穫した米。では、落ち穂の量は?
全班が発表し、先生が再度まとめて、全員が納得したのは……
151,700÷95×5=約8,000トン
庄内平野の落ち穂は、白鳥が一冬を越すのに必要な540トンをはるかに超える量でした。
出典:地域性を生かした学びで、算数の計算法を体感させる授業 -ベネッセ教育情報サイト