子どもが成果を上げた時の効果的な接し方とは[やる気を引き出すコーチング]

子どもがテストで目標にしていた点をとった。野球の試合で勝った。時間どおりにやりとげた。お手伝いをしてくれた。そんな時、どんな言葉かけをしていらっしゃいますか?
「えらいね!」「すごいよ!」「がんばったね!」「いい子だね!」というほめ言葉でしょうか。たしかに、何も言わないよりはよいとは思いますが、これだけで終わらせるなんて、とてももったいない!! この瞬間にどう接するかが、今後の自発性に大きく影響を与えます。
そのことを、しみじみと感じた事例を、今回はご紹介しましょう。



ヒーローインタビューをする

「石川さん、やっぱり指導者って大切なんですね。同じチームなのに、監督が変わったとたん、子どもたちがイキイキしてきて、チームが強くなってきたんですよ!」
少年野球をやっているお子さんのお父さん(Sさん)が、こんな話をしてくれました。
「へえ、そうなんですか? どんな監督さんなんですか?」
ここは聴かずにはいられません。
「ミスやできないことはいっさい責めないんですよ。エラーがあっても、
『大丈夫! 大丈夫! 次、とっていこう!』
って。その代わり、試合のあと、今日の試合で活躍した子どもに、みんなの前で質問するんです。
『今日は、どんな気持ちで試合に向かったんですか?』
『あのホームランを打った時は、どんな気持ちで打席に入ったんですか?』
『打った瞬間、どう思いました?』
って。
そう!まるで、プロ野球のヒーローインタビューみたいな感じですよ。子どものほうも、照れながらも、ちゃんと考えて答えるんですね。で、みんなで拍手をし合って、その子をたたえるんです。それが、試合で活躍した子どもだけじゃなくて、裏方の子どものこともちゃんと見ているんですよ。
『○○君は、今日も一番に来て、準備をしてくれていました。いつもありがとう。今日はどんな気持ちでグラウンドを整えていたんですか?』
って。これ、感動しますよね。だから、1試合の中で、何人もいろいろなヒーローがいるんです。インタビューされている子を見ていると、他の子も、自分もヒーローになりたいなって思うんでしょうね。前よりも、ずっと自主的に動いているのが、外から見ていてもわかります」

本当にステキな監督さんですね。単に、「えらいぞ! よくやった」と評価を与えるのではなく、どんな気持ちで取り組んだのかを質問して、みんなで認め合うと、本人はより成果を実感でき、次への原動力になるのでしょう。



うまくいった要因と次の行動を質問する

さらに、Sさんのお話は、「この監督さんは、実に効果的な質問をされているなー」と感じる内容に及びました。
「ヒーローインタビューをしている監督を見ていると、私もとても勉強になるんですよー。たとえば、こんな質問ですよ。
『どんなふうにバットを振ったからヒットになったと思いますか?』
『今までのどんな練習が今回の成果につながったと思いますか?』
『明日からは、どんなところに力を入れて練習していこうと思っていますか?』
こういう質問って、なかなかしないですよね。私なんか、相手ができなかった時に、
『どうしてできなかったんだ?』
『どこが悪かったと思う?』
『何が足りなかったと思う?』
と、ダメなところばかり質問しているなーと思います。うまくいった時の対話って大事ですよね。その要因と次はどうするか?を自分で考えられたら、また自分で取り組めますよね。石川さん、これって、コーチング、ですよね?」

はい。すばらしいコーチングだと思います。うまくいかなかった体験にも多くの学びがありますが、うまくいった時こそ、その時の気持ち、要因、次への行動を聴いてあげたいですね。単にほめられるよりもずっとやる気につながると思います。
世の中、ご自身が気付かないうちにコーチングをされているかたがたくさんいらっしゃるものです。皆さまのご家庭でもいかがでしょうか。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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