空気鉄砲の仕組みを調べることで、想像力や発見力を磨く理科の授業[こんな先生に教えてほしい]

毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ています。そして、先生方から授業への想いを聞いています。
小学生から高校生、そして、先生や保護者のかたに役立つ教育番組を制作するためです。その中で、「こんな先生に教えてほしい」と思った先生方のことを書かせていただきます。



今回、紹介するのは、山形県の小学4年生を担当するAE先生の理科の授業。テーマは「空気」。目には見えない空気を実感させる授業です。
先生が用意したのは、空気鉄砲。ただし、先生が渡すのは、空気鉄砲の棒と筒だけ。そこで、「一番飛ぶだろうと思う空気鉄砲の弾を持ってくること」という宿題が出ました。子どもたちは、「ティッシュ」「にんじん」「大根」「ジャガイモ」「スポンジ」など、家族と相談して思い思いのものを持ってきました。
さっそく、挑戦してみます。でも、最初は飛びません。理由は、空気鉄砲の仕組みを知らないからです。



大事なのは、前弾と後弾の2つを用意することですが、でも、子どもたちは知りません。「いっぱい詰めたら?」「弾の材料を変えよう!」など、いろいろ試している間に、なぜか子どもたちは、前と後ろに弾を詰めることに気付づくのです。ちなみに、前弾と後弾は同じ種類のものを試します。
成功すると、友達に教え始めます。そして、成功体験が広がると今度は、どれが一番飛ぶかを調べ始めます。
弾は軽いほうがよく飛ぶのでは?とティッシュやスポンジで試し始めます。でも、ティッシュは飛びますが、スポンジは飛びませんでした。そこで、濡らしてみたら?というアイデアが……。早速試してみますが、飛びませんでした。2つ詰めても飛ばないものがある。子どもたちから自然と「なんでだ?」という声が出てきます。いろいろなアイデアが出て、行き着いたのは、空気が漏れているのでは?という推測しました。

ここで、AE先生は、空気鉄砲の専用の弾を配り、よく飛んだ大根の弾などと比べさせます。すると、子どもたちは、弾を飛ばすためには、空気をしっかり閉じ込めることが大事だということに行き着きました。

この様子を見ていて、子どもたちの想像力や発見力のすばらしさに驚かされます。そして、よい先生の授業ほど、そんな子どもたちの可能性を信じているように思います。

このあと、教室に戻り、先生が子どもたちに質問します。
「後弾がどこまで行ったら、前弾が飛ぶのか?」



 ア 前弾の近く
 イ 途中
 ウ 少し押したら

ちなみに、実際にやってみると「イ」になります。
ここで、先生は、最も重要な質問をします。「空気鉄砲の空気がどうなっているのか」。この質問をするために、体験や確かめを積み上げてきたのです。
子どもたちは、空気鉄砲を触りながら、想像をふくらませ、図や言葉で表していきます。これは、イメージを表すトレーニングです。大事なのは、図とわかり易い言葉で伝えることです。
「空気げんかい」「空気が怒っている絵」「空気が集まって濃くなる」など思い思いの表現の仕方が表れました。

そして、次の授業で、子どもたちは、思いがけないことを始めました。空気鉄砲に水を入れて、遊び始めたのです。その様子を見て先生は、予定を変更して、水と空気の性質を考える授業に切り替えました。
わかっている事実は……

 ・水を入れると飛ばなくなる。
 ・空気がないと飛ばない。

ここで、先生は注射器を取り出し、水と空気を入れ、確かめ始めます。すると気付いたのは……
 ・空気は押せるけれど水は押せない。
 ・空気は押すと跳ね返る。
そして、みんなが思いついたのは、「水鉄砲」です。
これまで、学んだことを生かして、みんなで「水鉄砲」を作り始めました。

そして、ある子どもがつぶやきます。
「空気がもう限界だと思うようにしなければならない」。
自分で気付く喜びを感じた授業になったと思いました。


プロフィール


桑山裕明

NHK編成局編成センターBSプレミアムに所属。これまでに「Rの法則」、「テストの花道」、「エデュカチオ」、「わくわく授業」、「グレーテルのかまど」「社会のトビラ」(小5社会)、「知っトク地図帳」(小3・4社会)「できた できた できた」、「伝える極意」「ひょうたんからコトバ」などの制作に携わる。毎週のように学校を訪ね、たくさんの授業を見ている。

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