通学路、危険箇所を知っていますか? 緊急性と「熱意」で決まる優先度 -斎藤剛史-

全国の公立小学校の通学路で、道幅が狭い、大型車の交通量が多い、歩道が狭いなど、交通事故の危険性があるところは約6万か所もあります。これに対して国は約1,800か所を対象に、応急策として2012(平成24)年度中に安全対策を実施することを決めました。しかし、まだ約5万8,000か所も危険なところが残ることになるため、今後の国や地方自治体の取り組みが強く求められます。

通学路、危険箇所を知っていますか? 緊急性と「熱意」で決まる優先度 -斎藤剛史-


京都府亀岡市で登校中の小学生ら10人が死傷したのをはじめとして通学路の交通事故が相次いだことを受け、国土交通省などが実施した緊急点検の結果、全国の公立小学校の通学路の危険箇所が約6万か所に上ることが判明したのは、以前に本コーナーでお伝えしました。調査対象が約2万校ですから、1校当たり3か所の危険な場所がある計算です。
通学路は子どもたちが毎日登下校するものですから、これを放置することはできません。このため国は2012(平成24)年度予算の予備費(外部のPDFにリンク)の中から約48億円を計上し、とりあえず1,800か所について路肩のカラー舗装、ガードレールの設置、用地買収を必要としない場所に限った歩道の設置などの対策を実施することにしています。応急対応として選ばれた箇所は緊急性が高いこと、年度内に工事を終了できることなどが条件となっています。
注目されるのは、子どもたちや保護者・地域住民が通学路の危険性を認識し、改善工事を強く要望しているということが選定の要素として加味されたことです。箇所の選定について羽田雄一郎国土交通相(当時)は、市立小学校全部が総合的な学習の時間に通学路の危険マップを作り、学習している佐賀県伊万里市の例を挙げ、「総合学習の中で子どもたちからも必要だとされている」箇所を中心に選んだと説明しています。つまり、単に役所の関係部署が事務的に選んだのではないということを強調したかったのでしょう。
その意図が本当に反映されているのかどうかはさておき、子ども・保護者・地域住民のいずれもが通学路の危険箇所を認識しているということは、非常に重要でしょう。たとえば、緊急点検で明らかになった全国約6万か所のうち、どれほどの保護者が、自分たちが住んでいる市町村の中の危険箇所、子どもたちが通っている小学校の危険箇所を知っているでしょうか。逆に、市町村や各学校は、どれだけ危険箇所を周知する努力をしているでしょうか。

通学路の危険箇所に対する本格的な対策は、2013(平成25)年度予算からとなりますが、国と地方の財政事情が厳しいことから、一度に全部の危険箇所を工事することは困難でしょう。その際、緊急性と同時に保護者や地域の要望がどれだけ強いかで、工事の優先度が決まることになります。国や地方自治体に早急な対策を求めると同時に、保護者や地域、そして子どもたち自身が通学路の安全に強い関心を持つことが必要でしょう。さて、お子さんの通学路に危険箇所はありますか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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