学びを深め、人と人とのつながりを広げる「教育」へのタブレット導入 ‐渡辺敦司‐
学校はもとより学習塾などでも、タブレット端末をはじめとした情報通信技術(ICT)を導入する動きが徐々に広がりつつあります。機械に不慣れな世代には人の代わりをパソコンがするみたいで何だか味気ない話のように思えるかもしれませんが、実態は逆に、人と人とのつながりを豊かにするものだというのです。
ベネッセコーポレーションの通信講座「進研ゼミ」は2014(平成26)年4月から、オリジナルの学習用タブレットの配布を始めます(小学生は1~5年生で紙ベースの講座との選択制、中学生は全学年の、高校生は1年生の希望者全員に提供)。2月4日の記者発表で福島保ベネッセホールディングス社長が「デジタルだからこそ人が関わり、人に寄り添える教育サービスを作りたい」と説明していたのが印象的でした。これまでの「赤ペン先生」が消し跡までほめるなど一人ひとりの解答に寄り添った丁寧な添削を行ってきたのと同様、「人によるサポート」を大事にするのだといいます。中学校講座を例に取ると、わからないところを解説する映像は講師がホワイトボードを前にして、あえて教室で授業を受けているようなライブ感を演出。どうしても解けない時には「質問カメラ」でテキストの書き込みをタブレットのカメラで撮って送ると、翌日までに「デジタルの赤ペン先生」から丁寧な書き込みが返ってきます。
また、最近は投稿が減ってきたという会員同士の交流もデジタルによって復活させたいとしています。さらに、成島由美ベネッセコーポレーション家庭学習事業本部長は「このタブレットで学習した子どもたちが、学校の授業でも積極的に発言し、友達と学びを深められるようにすることも意識しています」と説明してくれました。
2014年4月から開始されるタブレット型学習「チャレンジタッチ」
学校でも「教育の情報化」を進めようとしていることは、これまでにもたびたび紹介してきました。その目的も、対面授業をICTに替えてしまおうというのではなく、一斉授業や個別学習はもとより、ICT機器を手にした子どもたち同士が教え合ったり学び合ったりする「協働学習」を促進することで、教室に「学びのイノベーション(革新)」を起こすことがねらいです。
大学教育における世界的な大規模オンライン講座「MOOC(ムーク)」にしても、ただインターネットで流される講義を聞くだけではありません。難解な疑問でも大概は受講者同士のチャットによって、たちまちに解決してしまうといいます。つまりMOOCは、何万人もの世界中の学友と共に学ぶ機会を提供するものでもあるのです。
このようにICT機器は、学びを深めるだけでなく、時空を超えて人と人とのつながりを広げる可能性を秘めているものです。そして教育のICT化を進めることは、社会に出てからもICT機器を使って人と人とが広く、深くつながる仕事をするための力を培うことに直結しているのです。