子どもの花粉症が増えている!

「日本人の3割が花粉症」といわれる時代、近年は子どもの花粉症も増えているようです。その実態について、耳鼻咽喉科医師の大久保公裕先生に伺いました。



この10年で5~9歳の花粉症は約2倍に


花粉症は年齢を重ねるほど発症しやすくなります。そのため、乳幼児期に発症する子どもはごく少数ですが、小学校に入るあたりから徐々に増え始めます。
また、4歳までの花粉症発症率はここ何年も2%程度であまり変化していませんが、5歳以降の発症率は年々増加傾向に。1998(平成10)年の調査では7.2%のところ、2008(同20)年調査(※)では、5~9歳の花粉症発症率は13.7%。10年間で約2倍に増えています。また、10~19歳は31.4%と大人の発症率とほぼ変わらない状況です。


※『鼻アレルギー診療ガイドライン2009』より



子どもの花粉症が増えている理由

いちばんの原因はスギ花粉の飛散量が増えていることでしょう。日本気象協会が発表する花粉飛散量は年によって多少の増減はあるものの、総じて増加傾向にあります。
また、生活様式の変化も花粉症増加に影響しているようです。現代人は動物や植物などの自然に接する機会が減っています。そのため、自然のものに対する免疫力が低下していることも考えられます。



花粉に接する回数が多いほど、発症しやすくなります

花粉症をはじめアレルギー疾患というのは、体内に侵入した異物(アレルギーの原因物質)を排除しようとする体の防御反応です。体内に侵入する異物がその人の許容範囲を超えたときに、アレルギー症状が現れます。
ですから生まれてすぐに花粉症を発症する赤ちゃんはいません。繰り返し、花粉を吸入するうちに、徐々に体内に抗体(異物を排除しようとする物質)が増えていきます。抗体が多ければ多いほど、アレルギー症状は重症化していきます。



花粉症は早期発見が悪化を防ぐ決め手

最初から花粉症が重症の人はいません。体内の抗体が少ないうちに適切な対策を立てれば、花粉症を悪化させずにすみます。場合によっては完治することも可能です。ですから、まだ抗体の少ない子どものうちに、親が子どもの花粉症に気付いてあげ、アレルギー検査の結果を受けて、対策を立ててあげることが重要です。



風邪との見分け方
花粉シーズンは風邪やインフルエンザが流行する季節と重なるので、花粉症かどうか迷うケースも多いでしょう。

・熱はないのに、連続してくしゃみが出る、透明な鼻水、鼻詰まりの症状がある
・目をかゆがる、充血や涙目の症状がある

といった場合は花粉症の可能性が高くなります。早めに耳鼻咽喉科を受診し、検査を受けましょう。

■アレルギーの検査

・鼻汁中好酸球数
鼻汁を採取し、花粉症に反応して増える鼻汁中の好酸球数を調べます。
・鼻誘発テスト
花粉エキスを鼻の粘膜に付着させ、花粉を吸いこんだときと同じ状態をつくり、くしゃみなどの症状が出るかを観察します。
・スクラッチ(皮膚)テスト
花粉エキスを腕に1滴たらし、針で軽い傷をつけ(または注射し)、皮膚に発疹などのアレルギー症状が出るかを見ます。
・血清特異的IgE抗体定量
アレルギーに関与するのは「IgE抗体」と呼ばれる抗体。血液検査でIgE抗体の数値を調べます。


プロフィール


大久保公裕

医学博士。日本医科大学付属病院耳鼻咽喉科教授。1988年日本医科大学大学院耳鼻咽喉科卒業後、アメリカ国立衛生研究所に留学。著書に『あなたの知らない花粉症の治し方』(暮しの手帖社)など。

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