新しい教科書に、ついていけている?~10年前と比べて教科書約1.7倍の算数を例にとって~

早いもので1月も終盤。進級が迫り「うちの子はちゃんとついていけるかしら?」と不安を感じているかたもいらっしゃるのではないかと思います。
今年度から、国の教育カリキュラム(学習指導要領)の改訂に伴い、教科書が一新されました。学年や教科にもよりますが、新教科書は学習内容も増え、難易度も上がっています。特に強化されている算数は、ゆとり教育時代の10年前と比べ教科書のページ数が約1.7倍になったとも言われます。また、たとえば算数では、これまで小学3年生で教えられていた内容が1つ下の2年生で教えられるなど、学習内容も子どもにとって難しくなってきています。

そこで今回は、Benesse教育研究開発センターが2011(平成23)年9月~10月に全国の保護者を対象に実施した「新教育課程に関する保護者調査」の結果から、特につまずきやすい算数に対して、保護者のかたから見た子どもたちの理解度、また学習内容の難易度や授業スピードへの感想を取り上げます。今後、学習面で保護者のかたがどのように関わっていく必要があるのか考えるヒントにしていただければと思います。


「算数、大丈夫?」と保護者が不安を感じる学年は……?

1学期が終わった時点で、保護者のかたから見た、子どもの算数の理解度をチェックします。

【図1 算数の授業の理解度(今年度1学期)】

図1 算数の授業の理解度(今年度1学期)

●2年生の「とても理解していた」が1年生に比べて10ポイント以上ダウン
●5年生の「まったく理解していなかった」「あまり理解していなかった」が6学年中最多

どの学年でも、8~9割の保護者が、子どもは算数の授業を「理解していた」(「とても理解していた」+「まあ理解していた」)と回答しています。しかし、「とても理解していた」は1年生34.8%⇒2年生23.2%と大幅に減り、その後6年生までほぼそのままの数値です。また、5年生では、「まったく理解していなかった」+「あまり理解していなかった」が6学年中最多の17.8%になっています。


算数の授業は2年生と5年生で要注意

「学習内容が多い」「学習内容が難しい」「授業スピードが速い」の3点について、保護者のかたの感覚をお聞きしました。

【図2 算数の授業について保護者が感じていること(今年度1学期)】

 図2 算数の授業について保護者が感じていること(今年度1学期)

●2年生で、「多い」「難しい」「速い」3つすべての項目で1年生より10ポイント前後アップ!
2年生の保護者のかたの4人に1人が「授業のスピードが速い」と感じていらっしゃいます。同時に、「学習内容が多い」「学習内容が難しい」と感じる2年生の保護者のかたも大幅アップ。1年生との差を痛感する状況で、前出のグラフで2年生の「とても理解していた」が急に10ポイントダウンすることにもうなずけます。

●5年生では「学習内容が難しい」がアップ。4人に1人が難しい!
「学習内容が多い」「授業のスピードが速い」は2年生で急に増えたあと、2割前後で6年生まで変わりませんが、「学習内容が難しい」だけは、5年生でもう一段階上がる印象。これも前出のグラフで「理解していなかった」が増加する5年生の時期と一致します。

●背景には、上の学年で学んでいた内容が、下の学年に入ってきたことによる難易度アップ
この理由を、教科書が新しくなったという点から考えてみます。新しい教科書では学習する内容が増えたことに加え、学習する内容が難しくなりました。その理由として、新しい教科書では、上の学年で学んでいた内容を、下の学年で学ぶようになった場合が多くあることが挙げられます。たとえば算数では……

・2年生では…「体積の単位(リットルなど)」「時間の単位(日・時・分)」など、3年生の学習内容から移行。
・5年生では…「約数・倍数」「分母が違う分数の足し算・引き算」「分数×整数」「分数÷整数」「単位量あたりの大きさ」など、6年生の学習内容から移行。

たとえば、これらのうち2年生の「時間の単位」については、1学期末の時点で先生からも、まだ生活経験と結び付いていない、発達段階的にも難しいなどの理由から、教えるのが難しいという声が多く上がっていました(Benesse教育研究開発センター「新教育課程に関する調査」[全国の公立小学校の校長・教員対象、2011年6~7月実施]より)。
このように、難しい単元をこれまでよりも下の学年で学習するのですから、つまずきやすくなるのは当然。しかも、これは2年生、5年生の算数に限ったことではありません。ほかの学年や教科でも同じような状況が見られます。


変わったのは学習内容の増加や難易度アップだけじゃない! ゴールは「知識の活用、探究」

●従来の知識の習得で終わらない、「知識を活用して、相手に説明する」といった活動に学校では力が入れられている
さらに、新学習指導要領では、基礎知識の「習得」とともに、知識の「活用」や「探究」が掲げられています。つまり、今までのように教科書を理解し、計算できる、漢字が書けるということだけでなく、「学んだ知識を使う力」や、「自ら課題をもって学ぶ力」を育てようとしています。
たとえば、算数では、正しい答えを出すだけでなく、「どうしてその答えに至ったのか自分の考えを説明させる活動」や、国語では、それまでに読んだ物語を参考にしながら、「自分で物語を作り発表する」といった活動が増えています。このため、学習内容のより深い理解や、さらに「思考・判断・表現」の力が求められます。

●家庭での細やかなフォローや先生との連携が大切。2年生や5年生の算数ように、特につまずきやすい学年や教科では、一層のご注意を

2年生と5年生の算数をはじめとして、どの教科や学年でも、学習する量が増え、内容が難しくなり、その対応として授業のスピードが速くなっているようです。また、学んだことを活用する力を育む、新しい学習も始まっています。

学校では先生がたが、困難を感じないように、理解が進むようにと工夫してくれていますが、時間的にも限界があるだけに、ご家庭でもお子さまの学習に寄り添い、つまずきに気付いてあげることが重要です。
たとえば、宿題などをとおして理解が進んでいるか確認してあげること。お子さまがテストの結果を持ってきたら、点数だけでなく、どの部分で、どのように間違えてしまったのか、といったことを一緒に考え、必要があれば早めに先生に相談し、連携して子どものつまずきに対処すること。先生につまずきやすい単元をいつごろ学習するのかと聞いてみるのもよいかもしれません。
高い理想を掲げた新学習指導要領の実施により、より一層の保護者のかたの家庭でのフォローと、学校と家庭の連携が求められてきていると言えそうです。


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