「小1プロブレム」対策、文科省も検討に着手

小学校では現在、「小1プロブレム」と呼ばれる現象が、大きな問題となっています。このため文部科学省は、学識者や教育関係者らで成る会議を設置し、幼稚園や保育所などから、問題なく小学校に移れるようにする方法を探ることにしました。

幼稚園や保育所などでは、子どもたちの自発的活動としての「遊び」が重視されています。これに対して小学校では、教員による教科の学習が中心となり、時間割どおりに授業が行われます。小学校の入学直後、この違いに戸惑う子どもは、これまでも少なくありませんでした。
しかし最近では、いつまでも小学校のやり方になじめない子どもが増えており、教員の話を聞かなかったり、授業中に勝手に歩き回ったりするなどして、長期間にわたり授業が成立しない、というケースが増加しています。これが「小1プロブレム」と呼ばれるものです。東京都が2009(平成21)年7月に実施した調査の結果によると、公立小学校長の23.9%が、1年生で授業が成立しない状況があった、と回答しており、小学校の4校に1校で「小1プロブレム」が発生していることがわかっています。

なぜ近年になって、いつまでも小学校生活になじめない子どもが増えているのでしょうか。よく、「『ゆとり教育』の影響で、幼稚園で遊びの要素が強くなったからだ」「小学校の先生の指導力が低下したからだ」「保護者がきちんと子どもをしつけていないからだ」などと、さまざまに言われていますが、実は、本当の理由はよくわかっていません。ただ、ベテラン教員の学級ほど、問題が発生する割合が高いことが、東京都の調査でもわかっています。以前と比べて、子どもたちのほうが大きく変化していることは間違いないようです。

小学校へのスムーズな移行を目指す点では、これまでも、幼稚園・保育所と小学校の連携の強化が進められてきました。2009(平成21)年4月から実施されている新しい幼稚園教育要領と保育所保育指針、そして2011(同23)年4月から実施される小学校の新学習指導要領でも、幼稚園・保育所・小学校の三者が連携することを明記しています。
しかし、公立幼稚園と公立小学校の連携はある程度進んでいるものの、幼稚園の多くを占める私立と公立小学校との連携は、なかなか進んでいないのが実態です。また、子どもたちへの指示の出し方一つを取っても、小学校教員と、幼稚園教員・保育士の間には大きな違いがあります。この意識の差が連携の障害になっている、とも言われています。
このため文科省は、子どもたちや教員(保育士)の交流が中心だった幼・保・小の連携事業をより効果的なものにするほか、連携からさらに踏み込んだ方策も探ることにしました。具体的には、小学校と幼稚園などの間で子どもたちが戸惑う理由のひとつとなっている教員の指導方法に連続性を持たせることや、子どもたちが円滑に小学校に慣れることができるようなカリキュラムの編成などが、課題となりそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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