家で過ごす時間が増える中、子どもの目を守るために保護者ができること【後編】

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コロナ禍は、子どもの目にどのような影響を及ぼしているのでしょう? 前編の記事では、「実際に今、子どもの視力はどのような状況になっているのか」「子どもの目を守るために何ができるのか」を紹介しました。今回は、「近視の早期発見のポイント」「近視になってしまったら、どうするべきか」を国立成育医療研究センター眼科診療部長 仁科幸子先生にお聞きしました。

前編の記事はこちら
家で過ごす時間が増える中、子どもの目を守るために保護者ができること【前編】

この記事のポイント

もしかしたら近視かも。早期発見のポイントは?

前編の記事では、外出自粛が1つのきっかけとなり、遊びも勉強もデジタル化が進んだことが、子どもの視力に影響を及ぼしていることがわかりました。目の異変を早期に発見するポイントはあるのでしょうか。

「普段の生活の中で『どうも集中力が続かない』『近づいてモノを見るようになった』『目を細めて見ている』など、行動の変化に気づいたら、小児科ではなく、専門の眼科に相談に行きましょう。
また、3歳児健診ですりぬけて、小学校に入ってから強い遠視や乱視による弱視(視覚脳の発育不全)が見つかるケースもまれにあります。近視よりも遠視のほうが子どもの視覚の発達に影響が出るので、早急にメガネをつくる必要があります」(仁科先生)

近視を悪化させないために

実際に近視になってしまったら、保護者は「これ以上、目を悪くしたくない」と思うものです。先生によれば、近視を進ませないポイントは、予防するポイントと同じだそう。

「保護者の方からは、よく『目によい食べ物はありますか?』『効果的なマッサージはありますか?』といった質問がありますが、特別な方法はないんですね。近視を進行させないポイントは、近視を予防するためのポイントと同じ。スクリーンタイム(デジタル画面を見つめる時間)を制限することと、屋外で活動する時間を増やすことです」

また、度がきちんと合ったメガネをかけることが、とても大切だとも先生は言います。

「度が強すぎるメガネもよくないのですが、弱すぎるのも問題です。
子どもでも、メガネ屋さんに行けば、すぐに適切なメガネを誂えてもらえると思いがちですが、決してそうではありません。
子どもは調節力(目が緊張している状態)が強く、眼科で精密検査を受けないと、正しい屈折度数(近視、遠視、乱視の値)が測れないのです。ですから、小学生のうちは、あるいは中学生になっても、眼科に受診して、まず眼の病気がないかどうかを調べ、次に目の緊張を和らげる目薬をつけて正確な度数を測って、眼鏡の処方を受けてください。
その処方箋を持って、メガネ屋さんで、お子さんの顔に合った掛け心地のよい眼鏡をつくってください」

メガネは正しくかけることが大事。コンタクトは中学生から

では、子どもがメガネとうまく付き合っていくためには、どのようなポイントがあるのでしょう。

「今はおしゃれなメガネがたくさん出ていますが、フレームの大きさ、形状、角度が合っていないといろいろな問題を引き起こします。
『正しい度を測る』『正しい装用状態でかけられるフレームのメガネをつくる』『それを、きちんとかける』。この正しい矯正が大事なのです。メガネを正しくかけないと、よけいに近視が進んだり、斜視につながったりすることも考えられます」

また、見た目が変わるため、メガネをかけるのを嫌がったり、スポーツをするので邪魔だと感じたりする子どもも少なくありません。コンタクトレンズを小学生のうちから使い始めても問題はないのか、気になる保護者もいるでしょう。

「メガネと比べて慎重な取り扱いが必要になりますから、自分で管理できるようになる中学生くらいになってから使い始めるのがよいでしょう。適切に扱わないと角膜を傷つけることにつながりますから」

子どもの目を守るために、社会全体が意識を変えることも大切

両親が強い近視の場合、子どもも遺伝的な影響で近視になる確率が高くなると言われています。しかし、環境要因に注意して近視を進ませないことも大事だと先生は言います。

「近視の原因の半分は遺伝的な要因なのでしかたがない部分もありますが、残りの半分は環境要因によるものです。東アジア人は近視が多いのですが、日本以外のアジアの国々では、環境要因に注意して近視を進めない取り組みが行われています。例えば、シンガポールや台湾、中国では、『1日2時間、子どもが外に出る時間をつくる』『モノから目までの距離は30cm以上離す』『夜はスクリーンタイムをシャットダウンする』などの取り組みに、国を挙げて取り組んでいます」

また、メガネをかけることについて、社会の意識が変わることも期待しているそうです。

「小さい子どもがメガネをかけているのを見ると、『小さいうちからメガネをかけなければならないなんて、かわいそう』『一生、メガネになっちゃうんだ』といった反応が、まだ多いようです。でも、正しく矯正すれば、近視が進むことが少なくなりますし、脳もきちんと発達します。

『目が悪いけど、この子にはメガネをかけさせたくない』と親御さんが考えれば、お子さん本人も『メガネなんかかけたくない』と思ってしまいます。でも、メガネをかけずに弱視になったり、近視が進むほうが、デメリットが大きいのです。

大人になればメガネをかけても、かけなくても、コンタクトレンズをするにしても、自分で快適に過ごせるように自由に選んで構いません。でも、子どものうちは、視覚や脳が育っている段階。早く矯正しないと、能力が十分に伸びない可能性にもつながってしまいます。

ですから、まだ小さいのにメガネをかけているお子さんを見たら、“かわいそう”と思うのではなく、「早く目の病気が見つかってよかったね。素敵なメガネだね」と褒めてあげられるような、そんな世の中の常識ができあがるといいですよね」

まとめ & 実践 TIPS

近視を進ませないポイントは、予防する際のポイント(※1)と同じなので、ぜひお子さまの目を守るために、ご家庭でも気を付けてあげてください。また、視力が低下してきた場合は、度がきちんと合ったメガネをかけることも、とても大切です。
メガネをかけているお子さまに対する社会の意識を変えていくために、もし身近なところでメガネをかけはじめたお子さまがいらっしゃる場合は、ぜひポジティブな言葉をかけてあげられるとよいですね。
※1 視力低下を予防する際のポイントは目のことだけではなく、生活リズムを整えることや、バランスのよい食事、運動を取り入れること。※前編より


取材・文 / 本間 学(オンソノ)


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プロフィール


仁科幸子

医学博士、国立成育医療研究センター 眼科診療部長。慶應義塾大学医学部卒。専門は小児眼科学、弱視斜視学。日本眼科学会専門医。

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