子どものネット利用、親はどう関わればよい?依存の現状・対策・予防のポイント

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子どものインターネットの利用はますます低年齢化し、さらにコロナ禍により、インターネットやオンラインゲームの利用時間も増えています。ネット依存、ゲーム依存という言葉を見聞きして、不安に思っている保護者のかたも多いのではないでしょうか。
そこで、インターネット依存の専門診療を行っている久里浜医療センターの松﨑尊信先生に、子どものネット利用と依存の現状と、親が気を付けるポイントについてお話を伺いました。

この記事のポイント

子どもたちのネット利用の現状を知ろう

まず、今の子どもたちはどのように、どのくらいインターネットを使っているか、保護者のかたも実情を知ることが大切です。一般的にどのような使われ方をしているかを知らないと、何がおかしい状態なのかがわかりません。子どものネット利用は、今はスマホからが多いので、スマホの利用状況を見てみましょう。

内閣府のデータによると、スマホ所有は小学校高学年でほぼ半数、中学生の間に6~8割と増えていき、高校生ではほとんどの子どもが所有しています。

スマホ利用時間は小学生では1時間未満が多いですが、やはり中学生・高校生となるにつれて増加し、高校生では5時間以上利用する割合が22%にものぼっています。

では、スマホで利用するコンテンツには、どういったものが多いのでしょうか。

小学生では動画視聴・ゲームが多く、中学生になるとSNSなどのコミュニケーション・音楽視聴が加わり、高校生になるとさらに幅広いコンテンツを利用していることがうかがえます。

ネットのコンテンツにもいろいろありますが、久里浜医療センターに受診するケースで多いのは、圧倒的にゲームです。詳しくは後ほど解説しますが、次の国民生活センターのデータからも、オンラインゲームに関する相談が年々増えてきていることがわかります。

ここ数年で相談件数は右肩上がりに増えており、特に小学生の増加が著しい状況です。相談の内容は課金に関するトラブルが多く、親の気付かないところでクレジットカードを使い、100万円単位で請求が来た、といった相談もあります。

そんな大金を何に使うかというと、たとえばゲーム内のガチャや、スキン(キャラクターの見た目を変える衣装)、武器などのアイテムの購入に使っています。大人からすると、なぜそんなものに? と思うかもしれませんが、着飾りたい、自分のキャラクターをよく見せたい、という子どもの気持ちがあることは、理解しておきたい点です。

ゲーム依存とは何か

どういう状態が「依存」?

そもそも「依存」とは何かというと、「やめたくてもやめられない」、そして身体や社会生活への影響といったさまざまな問題が併存している状態を指します。依存する対象は、アルコール・ニコチン・薬物といった「物質」だけでなく、ギャンブルなどの「行動」もあります。2000年ごろからインターネットが普及し、インターネットをやめたくてもなかなかやめられない、という症例が世界各国で報告されるようになりました。そこで、依存の対象にインターネットも含まれるのでは? と臨床医や研究者の間で議論されるようになったのです。

久里浜医療センターでは、2011年に国内初のインターネット依存外来を開設しましたが、受診に来るケースの9割はオンラインゲームです。そしてゲームの相談者の9割は男性、ほとんどが小中高生や10代~20代の若い人です。最近のゲームは楽しく、なかなかやめられない。親が取り上げようとすると、人が変わったように暴言を吐いたり、手が出たりする、と困り果てている保護者のかたも多い状況です。

医学的に認められているのは「ゲーム障害」のみ

一般的に「ネット依存」「スマホ依存」といった言葉が使われますが、さまざまなインターネットコンテンツのうち、医学的に依存症として定義されているのは、今のところゲームだけです。WHOが「ゲーム障害」として診断基準を設けており、
・ゲーム使用のコントロールができない
・ゲームを他の日常生活より優先する
・問題が起きてもゲームを続ける
といった状態だと、ゲーム障害が疑われます。ゲーム障害=ゲーム依存と考えてよいのですが、次のテストで簡単にチェックしてみるとよいでしょう。

【ゲームズテスト】

・1~8の質問それぞれについて、「はい」なら1点、「いいえ」なら0点、9の質問は回答により0~2点をつけてください。
・各質問項目に対する回答の数字を、すべて合計してください。
・過去12か月の状況について答えてください。
・ここでいうゲームとは、スマホ、ゲーム機、パソコンなどで行うゲームのことです。

1 ゲームを止めなければいけないときに、しばしばゲームを止められませんでしたか。
2 ゲームをする前に意図していたより、しばしばゲーム時間が延びましたか。
3 ゲームのために、スポーツ、趣味、友だちや親せきと会うなどといった大切な活動に対する興味が著しく下がったと思いますか。
4 日々の生活で一番大切なのはゲームですか。
5 ゲームのために、学業成績や仕事のパフォーマンスが低下しましたか。
6 ゲームのために、昼夜逆転またはその傾向がありましたか。(過去12か月で30日以上)
7 ゲームのために、学業に悪影響が出たり、仕事を危うくしたり失ったりしても、ゲームを続けましたか。
8 ゲームにより、睡眠障害(朝起きられない、眠れないなど)や憂うつ、不安などといった心の問題が起きていても、ゲームを続けましたか。
9 平日、ゲームを1日にだいたい何時間していますか。
 「2時間未満」→ 0点
 「2時間以上6時間未満」 → 1点
 「6時間以上」 → 2点

評価方法:合計5点以上の場合、ゲーム障害が疑われる。

(出典: Higuchi S et al. Journal of Behavioral Addictions, 2021.)

ネットやスマホについて、医学的にはまだ病気とは認められていませんが、ながらスマホでの事故なども起きているので、過剰使用により問題が生じている可能性はあります。スマホの登場からまだ10年ほどなので、今後どうなるかはわかりません。こちらにネットやスマホについてのチェックテストもあるので、気になるかたは試してみてください。

まとめ & 実践 TIPS

子どもを取り巻くネット・ゲームの状況は、めまぐるしく変化しています。現状の把握とともに、依存症に対する正しい知識を身に付けることが不可欠です。【後編】では、なぜゲームに依存するのか、理由とその対策を解説していただきます。


2020年 内閣府 青少年のインターネット利用環境実態調査
https://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/chousa/net-jittai_list.html

独立行政法人国民生活センター オンラインゲームに関する相談件数
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210812_2.html


(記事中のグラフは資料を元に松﨑氏が作成)

(取材・文/荻原幸恵)

プロフィール

松﨑尊信

松﨑尊信(まつざき・たかのぶ)

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター精神科医長。2000年九州大学医学部を卒業し、同精神科教室に入局。2010年九州大学大学院で博士号を取得。2013年厚生労働省精神・障害保健課依存症対策専門官を経て、2016年より久里浜医療センターに勤務し、現在に至る。
資格 精神保健指定医、日本精神神経学会認定専門医、日本医師会認定産業医

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