現代における「協調性」の意味とは?協調性が高い子どもの親の関わり方は、ココが違った!

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グローバル化・多様化が進む昨今、自分の意見を相手に正確に伝え、相手の意見をしっかりと受け止めたうえで、よりよい解決策を一緒に考えていく、「協調的問題解決力」の重要度が増してきています。公認心理師・臨床心理士で、子どもの協調性について研究している文教大学の名尾典子先生に、「これからの時代の子どもの協調性の育み方」と「親の関わり方」についてお話を伺いました。

この記事のポイント

これまで欧米諸国とアジアでは、「協調性」のとらえ方が違っていた

 名尾先生:「協調性」は、国によってイメージがだいぶ違うのですが、それは文化的要因が非常に大きいと思われます。欧米では、個人が独立したものとして、自分の意思をはっきり主張し、相互に話し合いながら、よりよい解決策を見つける「協調性」が中心的です。
 一方、日本をはじめアジアの国々は、どちらかというと人々が調和して、依存する関係性で成り立っていますので、自分が言いたいことがあっても、人に合わせ、波風立てずに空気を読みながらやっていくというのが、これまでは日本で一般的に考えられてきた「協調性」です。

 しかし昨今、多様化・グローバル化が進み、これまでの、波風立てずにやっていくという「調和・同調」型の協調性から、利害の対立するもの同士でも、お互いの問題を話し合いながら解決することが大事であるという、「協調的問題解決」に代表されるような「積極的な協調性」について、考えられるようになってきました。

育まれるタイミングが違う3つの「協調性」

 「協調性」には、3つの種類があります。

1 協力志向

 みんなで協力して何かを成し遂げ、喜びを分かち合うために、自ら進んで協力しようという姿勢の「協調性」の一面です。チーム競技などの時に、「チームのために自分はがんばろう」と思う気持ちです。集団でルールがある遊びなどができるのも、この協力志向があるからです。

2 協調的問題解決

 自分と相手の意見がぶつかった時に、どちらにとっても良い方法を考えようという姿勢であり、対立した時でも、相手が納得できるように説明したり、両者が歩み寄れるような話し合いをしようとしたりする「協調性」の一面です。相手の話をまず聞く姿勢や、人に迷惑をかけたことに気付いたら謝るなど、問題解決のために必要な「協調性」であり、グローバル化・多様化が進む社会の中では、今後特に求められていくと思います。

3 調和・同調

 日本やアジアの文化として発展してきた「受動的な協調性」の一面です。
 他の人と自分の意見が違う時には、相手の意見に合わせ、自己主張せずに、周りに同調する「協調性」です。

 この3つの協調性は、育ち方が年齢によって違いがあります。年中さん(4・5歳ぐらい)から高まっていくのが「協力志向」の協調性です。保育園や幼稚園などでの集団生活が影響していると考えられ、「協調的問題解決」の協調性もまた、同じ時期から高まっていきますが、どちらかというと小学校に入ってから、特に中高学年になってからより高まっていく傾向にあります。「調和・同調」の協調性に関しては、こちらも年齢に応じて徐々に高まっていきますが、小学校の高学年〜中学生の時期において「同調圧力」として子どもたちを苦しめる側面もあります。また女子のほうが男子より高い傾向にあります。

子どもの「協調性」は、親の養育態度の影響が大

 子どもの「協調性」の発達には、親の養育態度が影響すると考えられています。親の養育態度には2つの側面があり、1つは子どもの気持ちに応え、興味関心があることを共有しようという「応答・共有」という側面。もう1つは「これをしなさい」「それはだめ」という親の考えを伝え、しつけとも呼ばれる「統制・要求」という側面です。

「①応答・共有と統制・要求がどちらも高い群」=権威的、「②応答・共有は低いけれど、統制・要求は高い群」=権威主義的、「③応答・共有は高いけれど、統制・要求は低い群」=受容的、「④どれも低い群」=無関心。この4つの養育態度にわけて、子どもの協調性について調査したところ、「応答・共有、統制・要求がともに高い群」、つまり権威的な養育態度の親の子どもの協調性が、一番高いという結果になりました。
 この結果から、この群のおうちのかたは、普段子どもと楽しく会話をしたり、一緒に遊んだり、子どもとのコミュニケーションを積極的にとりながら、親としての姿勢やしつけに関してもきちんと伝え、メリハリをもって子どもに関わっているだろうことが推測されます。
 一方、協調性が低い子どもの親は、「応答・共有、統制・要求がともに低い群」、つまり無関心な養育態度でした。この群は、子どもと楽しい会話をしたり、子どもの気持ちを汲んだりということが、日常生活の中でもあまりできておらず、また子どもが良くないことをした時でも、きちんと叱ることをしていない、子どもに対してあまり関心が高くない層であることが推測されます。その結果、子どもも人とあまりうまく関われず、協調性が育めていないのだろうと思います。

子どもの「協調性」を高めるために家庭でできることとは

 おうちのかたの「応答・共有、統制・要求がともに高い群」の子どもの協調性が高いことは、調査からも明らかになっています。
 つまりおうちのかたが、普段から子どもと何か一緒にすることを楽しみ、親子で気持ちを伝えあいながら、コミュニケーションをとっているか。また親として、やってはいけないこと、こうしてほしいことなどを子どもにきちんと伝えているかどうかということが、大事なのです。
 そういったことを日常的に家庭の中で、親子関係の中でできていたら、子どもの協調性、特に「協力志向」や「協調的問題解決力」も自然と高まっていくのだろうと思います。
 つまり、親の姿勢こそが大事なのではないでしょうか。

まとめ & 実践 TIPS

協調性にも種類があり、親の養育態度で子どもの協調性の高低に差が出ることがわかりました。子どもの協調性を高めるポイントは、普段から子どもと積極的にコミュニケーションを取りつつ、親としての姿勢やしつけに関しては、きちんと伝えるべきことは伝えるということが大事なようです。

プロフィール

名尾 典子

名尾 典子

文教大学 人間科学部 准教授
臨床心理士として主に子どもの心理臨床現場での経験を積んだ後、文教大学人間科学部臨床心理学科講師を経て現職。専門分野は発達臨床心理学。現在は大学で教鞭を執る傍ら、子どもの協調性の発達について研究。保育園での巡回相談も行っている。公認心理師。

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