マイクラで子どもの能力が伸びるのはなぜ?Minecraftカップ2020全国大会の審査員に聞いてみた
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「マインクラフトって他のゲームとちがうの?」「プログラミングも学べるって聞くけど、どういうこと?」
子どもたちに人気のゲーム、Minecraft(マインクラフト、通称マイクラ)。小学校の授業や、プログラミング教室でも使われています。でも、「スマホ版やパソコン版があって、どれからはじめたらいいのかわからない」という保護者も。そこで、「マインクラフトの教育的効果」「親はどのように寄り添うべきか」について、Minecraftカップ2020全国大会で審査員を務めた、プロマインクラフターのタツナミ シュウイチさんらに伺いました。
大賞はなんと小学生!「Minecraftカップ2020全国大会」を制したのはどんな子どもたち?そのすごい作品を一挙紹介
https://benesse.jp/kosodate/202103/20210306-2.html
お話を聞いた人
タツナミ シュウイチさん(プロマインクラフター、マイクロソフト認定教育イノベーター)
山越梨沙子さん(日本マイクロソフト株式会社))
土井隆さん(Minecraftカップ2020全国大会運営委員会 事務局次長)
マインクラフトは、好きな世界をつくる自由なゲーム
Minecraftカップ2020全国大会 大賞 浦添 昴さん(小5)の作品「未来への5つの約束 ~キレイな水と渓谷の洞窟学校~」
──マインクラフトは、自由にブロックを配置して遊ぶデジタルゲーム。2009年にスウェーデンで誕生し、現在では世界で一番売れたゲームになりました。スマホのほか、パソコン、iPad、Switchなどで遊ぶことができ、小学生にも大人気です。子どもたちが夢中になる魅力はなんでしょうか。
タツナミ シュウイチさん(以下、タツナミ):とても自由度が高いところだと思います。マインクラフトはサンドボックス(砂場)ゲームと呼ばれ、「アイテムを集めてストーリーを進める」といった制限はありません。砂場のように一人一人が好きな世界をつくりあげていくことができます。
「自由過ぎて何をしていいかわからない」というプレイヤーは大人の方が多いですね。「何をしていいかわからないからマイクラつまんない」っていう子どもには、今のところ一人も会ったことがありません。
マインクラフトは子どもの「探求力」「問題解決力」を伸ばす
──小学校の授業にも教育版が導入されていますね。マインクラフトが子どものどんな能力を伸ばすことに役立つのか、気になります。
タツナミ:子どもたちの探求心に応えられるような、現実の様々な要素がマインクラフトに盛り込まれています。理科に出てくる玄武岩、安山岩といった火成岩がブロックとして用意されていたり、本物のパンダの鳴き声が聞けたりします。Mojang Studios(マイクラ開発チーム)のスタッフはゲームとリアルがちゃんとつながるよう神経をすり減らし、パンダの声を録音するために中国まで足を運んでいるんですよ。
土井隆さん(以下、土井):2022年からはじまる「探求学習」が注目されていますが、マインクラフトはとても探求的なゲーム。「先生も答えを持っていない」状況のなか自分でテーマを見つけ、表現していくことができます。
山越梨沙子さん(以下、山越):Minecraftカップ2020全国大会では、子どもたちがテーマに設定されていたSDGsについて自分が興味を持った点に関する問いを立て、解決策をワールドに表現していました。その過程において科学館でのリサーチや、制作過程を人に見せてフィードバックをもらうなど、具体的な行動に移す姿も。
マインクラフトではその子自身が気になることについて調べ、ものづくりを実現するための課題を「どのように解決していくか」と考えることができます。
子どものマイクラ。親はどのように寄り添うべき?
──マインクラフトはスマホ、Switch、PS4、iPad、パソコンなど多くのデバイスで楽しむことができますね。家で子どもとマインクラフトをはじめる場合、おすすめの環境やバージョンはありますか?
タツナミ:操作するのがキーボードかコントローラーかといったちがいはありますが、マイクラを通じて学べることについては、どれも変わりありません。プログラミングだけでなく、生物や歴史、建築などあちこちに学びの要素が隠れています。子どもたちと一緒に楽しみながら「いいところに気づいたね」「実はこれはね」と大人が導き手になってあげられると良いですね。
──教育版マインクラフトと一般のマインクラフトにちがいはあるのでしょうか。
山越:教育版マインクラフト(Minecraft: Education Edition)は学校や教育機関向けです。Windows、Mac、iPadに続きChromebook(クロームブック)でも利用可能になりました。子どもたちが学校から貸与されるパソコンに入っていることもあると思います。
マイクラ内で理科の実験、「Microsoft MakeCode for Minecraft(メイクコード)」「Microsoft Code Builder(コードビルダー)」でプログラミングができます。メイクコードとコードビルダーが使えるWindows10版に近いですね。
タツナミ:Windows10版やJava版(Windows、Mac、Linuxに対応)にはない機能として、教育版には「クラスルームモード」があります。このモードでは、先生が子どもたちのキャラクターがどこでどうしているかを見たり、迷子になったキャラクターを集合場所に呼んだりできます。マイクラに不慣れな先生でも簡単に操作できる便利な機能です。
──プログラミングはまだできないお子さんの場合、壊すことからはじめてもいいですか?
タツナミ:まったくかまわないです。子どもたちはマイクラのTNT爆弾が大好きで、爆発させて壊しまくることがよくありますが、「破壊なくして創造なし」だと思います。どんどん壊すことで、見たことがないブロックを発見するなんてこともあります。
ただ、他の人の制作物を壊してしまうとトラブルになることがありますので、そこは注意してくださいね。
Minecraftカップ2021はどうなる?
──Minecraftカップのようなコンテストに参加することでも、成長できそうです。
タツナミ:それは間違いなくありますね。アウトプットは非常に重要です。今大会でもプレゼンが採点基準になっていましたが、子ども時代からセルフプロデュースを経験することは、きっと将来の力になってくれるはず。大変ですが、やり遂げた子は相当の努力と継続をしてきたんだろうなと思います。
山越:Minecraftカップでは、エントリーした子どもたちに教育効果測定の取り組みを行っていますが、「科学・数学的リテラシー」「表現力」「好奇心」の向上が特に目立っていますね。
──Minecraftカップ2021はどんな大会になりそうですか?
山越:今回は「SDGs」について柔軟に表現した子達がとても多く、子どもたちの可能性は大人が勝手に決めちゃいけないなと感動しました。次回のテーマも自分の言葉、自分の頭で考えたものを形にしてほしいですね。
タツナミ:個人戦かチーム戦かはまだわからないですが、今回非常にレベルが高かったので、2021年度もすごい作品が登場するのかなと期待しています。マイクラの建築大会ではないので、豪華さよりもテーマの自分なりの解釈、目立たないところに隠された創意工夫などを評価したいと思います。
土井:Minecraftカップの目的は超優秀なスペシャリストの発掘ではなく、デジタルなものづくりができる、学び合うコミュニティづくりです。今後は地区大会を開いて地域の先生達と協力し、子どもたちの発表の場を増やすことも構想しています。
すべての子どもたちが機会を持ってほしいとの思いから、貧困や不登校、日本語が得意でない子どもたち向けに、それぞれ団体と協力してMinecraftを使ったワークショップも開催しました。この活動も今後はより増やしていきたいですね。
まとめ & 実践 TIPS
子どもたちが夢中になるほど自由で楽しいのに、プログラミングだけでなく「問題解決力」「表現力」の向上にも役立つマインクラフト。
どんどん上達するお子さんの新たな一面に気づけるかもしれません。ぜひ、親子ではじめてみてください。
Minecraftカップ2020全国大会
https://minecraftcup.com/
文部科学省 学習指導要領「生きる力」
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/index.htm
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