非認知能力とは?注目される背景と非認知能力を育むポイントを紹介!

子どもの未来や将来の成功のためには「非認知能力」を育むことが大切だと言われています。非認知能力は、テストやIQのように数値化して測ることができない心や内面に関わる力。そのため、どのように伸ばしていけばいいのか戸惑う方も多いのではないでしょうか。そこで、さまざまな研究から明らかになった内容をもとに、今日からできる非認知能力を育む方法をご紹介します。

この記事のポイント

非認知能力とは?

非認知能力とは、IQや学校のテストのように数値化できる認知能力とは違い、感情や心の内面の働きといった数値化して測りづらい分野の能力のことです。「目標を掲げ、モチベーション高く、自分をコントロールしながら粘り強く、仲間と共に取り組むための姿勢や各種の力」とも言え、近年の調査や研究で、認知能力以上に子どもの将来や人生の成功、豊かさにつながることが明らかになっています。

非認知能力は、感情や心の能力のため、集中力や忍耐力、コミュニケーション力など様々な力が含まれますが、主に次の4つに分類できます。

自分を信じる自己効力感・自己肯定感

自分の存在を大切に思って、自身の能力を信じ、自分ならきっとできると思うこと。それができれば、難しい課題に直面した際や、なかなかうまくいかない際にもやり遂げることができます。チャレンジを続け、やり抜く力を発揮するには、自己肯定感、自己効力感という土台が必要です。

意欲を高く集中して取り組む夢中力

自分で自分を動機づけて、集中して取り組む力があれば、夢中になって試行錯誤を積み重ねることができます。このように、自分で自分をモチベートして没頭できる姿勢は、どんな状況でも役に立つ一生モノの力となるものです。

自分の気持ちをコントロールする自制力や忍耐力

物事にしっかり取り組んで、成果を出せる人は、自分の感情コントロールや気持ちの切り替えが上手なものです。辛かったり、しんどかったりするときも、その感情に流されては良い結果は得られません。前向きに気持ちを切り替える。粘り強くあきらめずに取り組む。きっとできるはずとある種の楽天さも発揮する。このような自制力や忍耐力があれば、問題解決までしっかりやり遂げることができます。

他者と協力できる社会的能力やコミュニケーション力

協調性やリーダーシップといったソーシャルスキル、コミュニケーション力も非認知能力の大切な要素です。これらの力があれば、1人では解決できないような課題にも、チームワークを発揮して取り組み、良い成果をあげることができるでしょう。

非認知能力が注目される背景

非認知能力が注目されるようになった背景には、社会の急激な変化が大きく関わっています。グローバル化、情報化、人工知能の発達など、現代社会は急速に変化しています。また、イノベーションにより社会の構造自体も変化しており、これまでと同じスキルでは太刀打ちできないものとなっています。そこで、非連続的に発展する未来社会を生き抜く力を育むものとして、非認知能力への注目が高まってきました。

世界で注目される非認知能力

様々な研究結果でも非認知能力の重要性が指摘されるようになり、注目度を高めることとなりました。例えば、ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ジョセフ・ヘックマンは、認知能力よりも、IQや学力試験などでは計測できない能力が人生の成功や豊かさに影響するという研究成果を発表しています。

また、OECD(経済協力開発機構)は、非認知能力にあたるものを「社会情動的スキル」と提示し、その中に含まれるものとして「目標の達成」「他者との協力」「情動の抑制」を挙げています。

日本における非認知能力への注目

世界中で非認知能力への注目が高まる中、日本の文部科学省も子どもたちが未来を切り拓いていく資質として「生きる力」や「汎用的能力」を挙げ、非認知能力を重要視するようになりました。

たとえば、文部科学省による「幼児期の終わりまでに育ってほしい幼児の具体的な姿」として示されている項目は全部で12個。

・健康な心と体
・自立心
・協同性
・道徳性の芽生え
・規範意識の芽生え
・いろいろな人とのかかわり
・思考力の芽生え
・自然とのかかわり
・生命尊重、公共心等
・数量・図形、文字等への関心・感覚
・言葉による伝え合い
・豊かな感性と表現

これらは、非認知能力に当たる感情や心の働きに関するものが多くなっています。

非認知能力を子どもに育むポイント

最近の研究によると、非認知能力の育ち方について次の点が指摘されています。

・子どもは、親や大人の関わりの中で、「自分は愛されている大切な存在なんだな」「人って信じていいものなんだな」と、自分と他者への信頼感が醸成されると、それを土台に非認知的な心の性質が積みあがる。

・子ども主体の遊びを通して育つものである。

非認知能力は、小学校に入る以前の幼児期から育むことが大切と言われていますが、特別な教材や教育、知育教室に通うようなことが必要なわけではありません。また、専門家でないと育成できないものでもありません。でも、だからこそどのように育めばいいか戸惑ってしまうこともあるものです。子どもとの関わり方について、次の4点を意識してきましょう。

子どもの自主性、興味を重んじる

「やってみたい」という興味や意欲から、子どもの世界はどんどん広がり、それにより様々な能力も開花していくものです。子どもの自主性や興味関心を尊重することは、飽くなき探究心を育みます。とことん制限なく夢中で取り組むことで、試行錯誤による本物の力が身についていくものです。

保護者としては、子どもの興味に対して心配のあまり「危ないからダメ」「まだ早いからダメ」と言ってしまうこともあるとは思いますが、それはNG。成長の機会を逃さないためにもどうすればできるかをサポートしてあげるようにしましょう。
また、全て子どもの自主性に任せるといっても、放置するのがいいというわけではないので要注意。危ない環境は整えてあげるといった、さりげないフォローは必要です。

そのままの子どもをまるごと受け止める

子どもの自己肯定感や自己効力感は「親は自分を大切に思ってくれている」「親は絶対自分を受け止めてくれる」「どんなときも手を差し伸べ、味方になってくれる」という安心感の積み重ねで養成されていくものです。そのため、お子さまのありのままの姿を肯定的に受け止めてあげることが大切。また、お子さまが何かをやり遂げた際や、うまくいかずに苦しんでいる際も、「うれしいね」「苦しいね」と共感を示すことも忘れないようにしましょう。

自分の存在そのものを認めてもらっていると実感し、自分は大切な存在だと思える自己肯定感は、非認知能力の土台となるもの。それがあれば、好奇心を持って「自分ならきっとできる」と新しいことにもチャレンジできるようになるはずです。

お手伝いを日常的に行う

他者との関わりに関する力を養成するには、お手伝いが有効です。遊びだと同年代の関わりだけになりがちですが、お手伝いだと年代の違う人たちとの関わりも生まれるためです。家族の一員としての役割意識も芽生えますし、他者から感謝されることで、人の役に立つ喜びも覚えられるでしょう。家族のお手伝いだけでなく、保育園や幼稚園でのお手伝い、地域のゴミ拾い活動といったお手伝いもできると、社会的な力をさらに伸ばすことができるはずです。

自然遊びの機会を多く持つ

非認知能力は、「自然遊び」から養われることも多いと指摘されています。なぜなら、日常とは異なる空間であるため、刺激も多く、考えることや工夫することも多くなるためです。これは「適度に足りない環境」とも言われ、創造力を養うことにもつながると言われています。

公園はもちろん、キャンプや大自然に行けば強制的に何もない環境となるため、子どもは身の回りの自然でさまざまな遊びや運動を考え始めます。それは、生涯を通して役に立つ多様な力を身につけることにつがるでしょう。
共働きなどで、なかなかキャンプなどに連れて行ってあげらればい場合は、子ども向けのキャンプ教室や自然スクールに参加させてみるのも良いでしょう。

子どもの非認知能力を育てるために保護者が気を付けること

子どもの非認知能力を育てるには、お子さま自身の興味や好奇心を出発点にすることが大切です。「子どものためになるから」と興味を無視して与えることは、大人の都合で子どもをコントロールすることにも繋がりかねません。そうではなく、子どものやりたいこと、興味を追求できるように環境を整えサポートしてあげるコーチや伴走者のようなスタンスを心がけましょう。いかに夢中にさせてあげるかに心を配るようにしてみてください。

子どもが何かに興味を持ったとき、大人のモノサシでつい「それよりも、もっとこっちを見てほしい」という大人の希望へ誘導してしまうこともあります。でももしかするとその声かけでお子さまの「興味への関心」は失われ、想像力を伸ばせなくなっているかもしれません。

子どもが何かに興味を持ったら、生活リズムやライフサイクルはできるだけ変えないよう声かけ・ルール作りをしながら、飽きるまでやらせてあげるのがおすすめです。「満足するまで没頭する」のも、自分自身を見つめて理解するための大切な過程。

保護者はつい「先に勉強をしなさい」と言いたくなりますが、指示ではなく≪声かけ≫の意識を。「やるべきことは先にやりましたか? きちんとできていればあとは自由だよ」など、お子さまの遊びや自由を尊重していることが伝わると、反発心も生まれにくくなるでしょう。

まとめ & 実践 TIPS

感情や心の働きに関する力である「非認知能力」は、テストで計測できる認知能力以上に、人生の幸せや成果をあげることに寄与するものです。テストで測れないものだからこそ、どのように育めばいいか迷ってしまうこともあるかと思いますが、お子さまとの関わり方に気を配り、親子の信頼関係を積み重ねることで、自己肯定感と自己効力感につなげることが第一歩。「子どもの能力を伸ばす」と肩に力を入れるのではなく「子どもの興味を応援して一緒に楽しむ」という気持ちでサポートしていくのがおすすめです。今回ご紹介した4点を心がけて、お子さまの内面を育んでいってください。

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