子どもには「脅し」の言葉より「成功イメージ」ができる言葉を! [やる気を引き出すコーチング]

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「今年はいつもより受験が大変なんだから、もっとがんばらないと間に合わないよ!」、「このままでは絶対に失敗するよ!」など、つい、子どもの背中を押すつもりで、「脅し」の言葉を使っていることはないでしょうか。その言葉で、一時的に行動を起こす子どももいますが、その行動は長続きするでしょうか。子どもの「身体」は動かせても、「心」はどうでしょうか。嬉々とした気持ちで自発的に取り組むという姿からは程遠く、かえって、ストレスがたまる、反発心が芽生える、成果があがりにくいといったことが起きてはいないでしょうか。脅さなくても、子どもの心が前に向かう、こんな伝え方があります。

この記事のポイント

「〜しないと」よりも「〜すると」と問いかける

これは、小学校4年生のお子さんを持つAさんのお話です。
「うちの息子は、片付けが苦手で、いつも本当に困っていたんです。『片付けなさい』と言ってもまったく聞かないし、たまに『一緒にやろうか』と声をかけて、渋々やらせている感じでした。今、コーチングの勉強をしていて、自分がかけている言葉について、いろいろふりかえることがあるんですけど、これまでは、『もう!いい加減にしなさい!片付けないとどうなると思う?こんな汚い所にいたら病気になるよ』というような言い方をしていたなと思いました。
脅すのではなく、『片付けたらどうなるかな?』、『どんないいことがあるかな?』と質問してみました。最初は、『別に、何も変わらない』とそっけない反応でした。ただ、おもしろいことに、この質問をしているうちに、私自身が『片付けるとすごくいいだろうな』という気持ちになってきました。自分もだんだんと片付けが習慣化してきて、やっているうちに、子どもも自然と自分の部屋を片付けるようになってきたんです。質問が効いたのかはよくわかりませんが、『片付けたらどうなる?』と聞くと、片付いているイメージが湧いてくるのはすごくいいなと思いました」

成功イメージに焦点をあてる

Aさんの実践のように、コーチングでは、『片付けたらどうなる?』とポジティブな問いかけのほうを意識的に使います。『片付けないとどうなる?』とできない方向に意識が向くような質問をされると、頭の中に、だらしない毎日を送っている自分や探し物が見つからなくて焦っている自分、家族から注意されて気分を悪くしている自分などのネガティブな映像が浮かびます。「やりたい!やってみたい!」という気持ちからはどんどんかけ離れていきます。
『片付けたらどうなる?』と問いかけられると、一瞬でも、片付けた後の空間がイメージされ、爽快感や達成感、自己承認の感情が擬似体験されます。「そうなったらすごくいいかも!」と前向きな気持ちが湧きやすくなります。

W肯定表現を意識的に!

同じように成功イメージに焦点をあてる伝え方で、W肯定表現という方法があります。どちらかというと、W否定表現のほうを使っている方も多いのではないでしょうか。
W否定表現の例:「勉強しないとテストで良い点が取れないよ」、「もっと練習しないとレギュラーになれないよ」など
W肯定表現の例:「勉強するともっと良い点が取れるよ」、「もっと練習するとレギュラーになれるよ」など
「〜しないと、〜できない」は否定形が2つも入っています。どうしても失敗イメージの映像が浮かびがちです。「〜すると、〜できる」は肯定形が2つ重なっています。確かに、できるかどうかは保証されるものではありませんが、この言葉によって、一瞬でも、できた時の達成感やワクワク感がイメージされることが重要です。この気持ちを積み重ねていくことによって、「〜ねばらない」ではなく「〜したい」という願望が、本人の中でどんどん湧いてきます。自然と願望に向かって行動を起こすようになっていきます。

まとめ & 実践 TIPS

言葉というのは、かけている相手にも影響を与えますが、実は、使っている自分に一番影響を与えています。「脅す」言葉ではなく、明るい未来がイメージできる言葉を意識的に使っていくことで、自分自身のイライラも軽減されていきます。意識的に肯定表現を使うことをぜひおすすめします。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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