反抗期の子どもには、どう声をかけたらいいの? 実は聴いているからこその「伝え方」

子どもが学校から帰ってきたときに元気がなかったら、「そういうときもあるよね」と気持ちに寄り添い、話を聴いてあげることがいちばんの励まし。でも、難しいのは思春期。ふだんから口もきいてくれなくなった子どもが元気のないとき、大人からはどう声をかけたらいいでしょうか? 法政大学人文科学研究科の渡辺弥生先生にお話を伺いました。

思春期の子どもは自分のことで頭がいっぱい

思春期の子どもは、大人に対していつも不満があって、何に対しても反抗的な態度ばかりを示すように見えるかもしれません。たしかに保護者に対しての不満もあるのかもしれないけれど、それよりも自分自身が抱えているものが多すぎて、自分で自分の気持ちがまとめられないでいる、そんな時期なのです。

もしかしたら、親に気をつかって、「お母さんは私のこと心配だろうけど、大丈夫だから」と冷静に言える子もいるかもしれませんが、それはそれでちょっと心配なことかもしれません。
思春期の子どもは自分のことで手いっぱい、自己中心的に生きています。これは、もっと小さいころの、自分の立場からしか物事が考えられないということとは違います。たとえば、ほんのちょっとニキビができただけで、外に出たらみんな自分のニキビに注目しているように思えて仕方ありません。心理学では、この自分を見ている「みんな」は、「想像上の観衆」という言葉で表され、みんなが自分を見ている気がする、という勘違いの自意識過剰が、この時期特有の自己中心性をつくっていきます。

さらに、「個人的寓話」という用語で説明されますが、世界の中心に自分がいるような捉え方をしてしまう傾向があります。自分が経験していることは独自のものと思い込んで、客観視ができません。たとえば片思いをしていたとすると、自分は世界中の誰も経験したことのないほど悲しい片思いをしている、という気持ちに浸ったりしてしまう傾向です。
そこに、もしも大人が心配そうにごちゃごちゃ言ってきたり、逆に冷静に語られすぎたりすると、つい頭にくる、という状況になりがちなのです。

過干渉はしない、でも関心は向け続けるということ

では、そんな周りがやや見えなくなっている状態の子どもに対して、大人はどうふるまうのがよいでしょうか。子どもの気持ちに寄り添わない過干渉は控えたほうがよいでしょう。でも、ほったらかしにしておくのも違います。人間は、自分に関心を向けてもらっていることが大事。関心を持たれているということは、そこに存在する意味につながります。本来感(自分らしくある感覚)をもたらすのです。関心を向けてくる相手を追い払ってひとりになることと、関心が全く向けられずほったらかしにされて、ひとりでいることは全く違うのです。だから、保護者が、「大丈夫かな」と心配することは、彼らにとっても大事なことです。

そこで、「今日はどうしたのかな、ってお母さん思っちゃった」というくらいの言い方で、関心は向けているよ、というサインを送るのはOK。NGなのは、「いったいどうしたの? 大丈夫なの!?」と話しかけた挙句、子どもが勇気を出して話し始めると、途端に「えー、何それ!!」などと言ってしまう態度です。子どもにしてみれば、「もういい! あっち行って!」ということになるのだと思います。

高校生になると、かなり成熟してきます。大人ぶった態度も見え隠れしてきますが、でもまだ大人に比べると視野は狭いもの。2~3人の人間関係の中で起こったことが大事件だったり、閉じた世界の中で、人知れず強い葛藤を抱えたりすることもあります。受験や勉強に関しても、通り過ぎたあとならば、「受験だけで人生は決まるものではない」という言葉も響きますが、その渦中にいるときは、その先の人生なんて想像もつきません。そういう意味でも、大人と比べたらとても狭いところにいるわけですが、それを否定せず、葛藤を抱えている状況を見守りつつ、困れば手を差し伸べられるようにしたいものです。

子どもが楽しそうにしているときこそ声をかけてあげて

それから、親というのは、心配なときにだけ声をかける傾向があるものです。子どもが学校生活を楽しんでいて、勉強も自発的にがんばっているときには、親自身がしめしめ自分のやりたいことがやれると、見過ごしてしまっています。でも本来は、子どもがうまくやっているときにこそ、ちゃんとそのがんばり認めているよ、と伝えることが、子どもの自尊心を高め、親子の良い関係が深まる声かけです。

特に問題がないときというのは、それだけ子どもががんばれているときなのです。たまたま勉強していただけかもしれないと見過ごさず、「すごく集中して勉強していたね」と声をかけてあげられるといいと思います。つまり、普段やっていることは逆になっています。心配なときだけ、「大丈夫なの?」と過剰に声をかけ、子どもが機嫌よく過ごしているときには、関心を寄せてあげていない、という構図になってしまっています。子どもがやるべきことをやっているときに「すごいね、お母さんもがんばらなきゃ」と言い、心配なときはあまり口を挟まず見守っている、というのが理想的です。大人としては、つい先回りして「ああしなさい」「こうしたほうがいい」と言いたくなる言葉を、ぐっと飲みこみ、子ども自身の考えていることや思いを想像して、必要としている助けを考えてやることが思春期の子どもを見守るということでもあります。

プロフィール

渡辺弥生

渡辺弥生

法政大学文学部教授。専門は、発達心理学・発達臨床心理学・学校心理学等。研究活動に加えて、子どもの感情や社会性の発達などについて講演会の講師も務める。著書に『子どもの「10歳の壁」とは何か?』(光文社)、『まんがでわかる発達心理学』(講談社)。など。

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