子どもの可能性を心から信じる関わりが子どもの背中を押す[やる気を引き出すコーチング]

これは、元プロ野球選手だったAさんから聴いたお話です。Aさんの息子さんも、小さい頃から野球に親しみ、中学、高校では野球部に所属していましたが、一度もレギュラーになったことがありませんでした。このような立場のお子さんに対して、周囲はどうしても残念な目を向けてしまいます。
「お父さんがプロの割には・・・」、「この子に、野球は向いていないんじゃないか」などといった言葉がかけられます。勝手に期待を寄せられ、勝手に落胆されます。
もし、皆さんが、この子の親だったとしたら、どんな言葉をかけますか?

■可能性を信じる言葉を「ブレずに」かけ続ける

Aさんは、こう励ましたそうです。
「お父さんは、長く野球をやってきたけれど、補欠を体験したことがないんだ。実は、補欠を体験してきた選手ほど、社会に出てから活躍している人が多いんだよ。今の体験は、必ず生きてくる。高校生になって、ずいぶんうまくなったし、もしお父さんがスカウトだったら、君をドラフトで指名したいぐらいだ」。

正直、「そこまでは言い過ぎでは?親バカでしょう!」と思われるかもしれません。しかし、このような言葉を、ブレずに、大真面目に伝え続けることが非常に効果的なのです。
最初は、息子さんも、「そんなことないよ!お世辞だろう」と思ったかもしれません。しかし、何度も繰り返し言われることによって、しだいに、その気になっていきます。
励ましの言葉をかけ続けた結果、Aさんのお子さんは、高校3年生で、初めてレギュラーになりました。その後は、あっという間に主力選手となり、打率も4割を超えるまでになったそうです。
「親が子どもの可能性を子ども以上に信じ続けることが大切です」とAさんはおっしゃっていました。

■自ら考え、決める時間と環境を作る

卒業後の進路を決める時期になって、息子さんは、大学に進学しても野球をやろうかどうか迷っていたそうです。「もうやりたくない」という気持ちになってしまったのは、結果を出せるような選手へと成長してきた最中、怪我によって満足なプレイができなくなってしまったからです。
Aさんは、できれば、大学でも野球を続けてほしいと思っていましたが、自分から「続けなさい」とは言わないことにしました。
その代わりに、質問をしたそうです。

「野球をやらないんだったら、大学に行って何をしたい?」
「・・・遊びたい。ずっと、野球ばっかりやってきたから、大学に行ったら遊びたい」
と言うのです。
そんな答えが返ってきたら、親としては、ちょっと考えてしまいませんか。それどころか、思わず、言い返してしまうかもしれません。
Aさんは、それをグッとこらえて、
「そうか。何をして遊びたいんだ?」と、さらに問いかけました。
「・・・何か楽しいこと」
「それはどんなこと?」
「・・・」
「君とっては、これまで、どんなことが楽しかった?」
「・・・」
すぐには答えが返ってきませんでしたが、1週間後、息子さんのほうから、こう言ってきました。
「やっぱり、大学でも野球を続けることにした。昔、お父さんと野球をしたことが、自分にとっては一番楽しいことだった」

こちらが強制しなくても、自分で考え、自分で決めたのです。単なる言葉のやり取りだけを見ていただくと、まるで、Aさんが質問によって誘導しているかのように見えるかもしれませんが、実際に、Aさんがしたことは、息子さんが自分で考えられるような時間と環境を作ったことだけです。息子さんが自分の気持ちと向き合えるように、こちらの想いは押しつけず、考える時間を与えました。

こんなところからも、Aさんがお子さんを信じている姿勢が伝わってくるお話だと思いませんか。私たちが子どもにできる最大の応援は、「可能性を信じること」なのです。

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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