3歳児の癇癪の原因や対処法は?物を投げるのはやめさせられる?

3歳前後のお子さまの癇癪にお悩みのかたもいらっしゃるのではないでしょうか。物を投げたり、手が出たりする行動に困ってしまうこともありますよね。教育心理学の専門家・松尾直博先生の監修のもと、3歳前後の子どもの癇癪の原因や対処法、NG対応についてご紹介します。

3歳児の癇癪とは?原因は何?

癇癪とは、大声で泣き叫んだり、暴れたり、物に当たったりと感情を爆発させる行動のこと。第一次反抗期やイヤイヤ期にあたる3歳児によくみられます。

3歳児の癇癪によく見られる行動は?

・すぐに手が出てしまう

気持ちをことばで表現することが難しいこともあり、相手を叩いたり、蹴ったりするなど、気持ちを抑えきれずつい手が出てしまいます。

・ものを投げる

おもちゃや身の周りのものなどを投げてしまいます。やめるように言っても、ますますヒートアップして、より危険なものを投げることも。

癇癪が起きる原因は?

生まれてしばらくの子どもは、心も体も親と一体化していて、どこまでが自分か、どこからが親なのかわからないような感覚にあると言われています。やがて、ハイハイや歩行で自分の行きたい方向への移動が可能になり、手でものを操作したり、身振りやことばでのやりとりが可能になったりしてくると、「親と自分は心も体も別の存在なんだ」という感覚が生じてきます。そして、親にやってもらう、親にやらされるのではなく、自分でこれをやりたいという気持ちが高まってきます。また、親から言われたことを「やりたくない」という気持ちも強くなります。こうしたことが、いわゆる自我の芽生えと言えるでしょう。

自我の芽生えの時期にある子どもがやりたいことが、全て許容されることであれば、反抗や癇癪が起こることは少ないのですが、そのようなことはまずありません。危険なことや他のきょうだいがなど嫌がることであることも多く、親は禁止したり、制限したりせざるを得ません。そうなると、親に反抗してやり続けるか、親に対して怒ったり、抗議するために大声で泣き叫んだり、暴れたり、物に当たったりという行動が起こります。また、例えば「靴下を自分で履きたい!」という親が禁止する必要がない行動であっても、子どもがいざ自分で履こうとするとうまくいかず、その結果癇癪を起こすこともあります。つまり、この時期の癇癪は「やりたいことを阻止された」場合や、「やりたいことがうまくやれない」ことによって生じやすいと言えます。

個人差はありますが、3歳頃にこのようなことが起こりやすいため、この時期は第一次反抗期と言われます。第一次反抗期は、癇癪を起こしたり、「イヤイヤ」と駄々をこねてわがままばかりで、保護者には好き勝手に行動しているように見えます。しかし「自我」が芽生え始めるのが第一次反抗期の大きな要因であり、大事な成長過程のひとつです。

子どもの癇癪への対処法

癇癪を起こされると、保護者もつい叱ったり、大声で注意したりしてしまうこともあるもの。しかし、逆効果となることも多いでしょう。癇癪は、感情が高まっている状態なので、保護者が感情的に対応すると、火に油を注ぐことにもなりかねません。まずは、できるだけ穏やかに、落ちついてお子さまの感情を鎮めるような働きかけをしましょう。落ちついたトーンの口調や表情で、この後のポイントで挙げられているような声かけをすることもよいでしょう。受け入れられない言動については、毅然とした態度で、淡々と諭すような口調や表情でやめるように伝えてください。

3歳にもなると次第に言葉がしっかりして、保護者はお子さまが口にする言葉だけを真に受けたり、言葉だけに頼って伝えようとしたりしがちです。しかし、自我が芽生えたからこそ生まれる裏腹な気持ち(「これやりたいからじゃましないで手伝って」「自分でやりたいけど上手にできないからイライラしているの」など)をお子さまが言葉で伝えることはまだ難しいと理解しておきましょう。子どもが口にする言葉だけではなく、その背景には裏腹な気持ちがあると思うと、少し余裕を持って対応できるかもしれません。

接し方のポイント

・一旦お子さまの気持ちを受け止め、代弁する

3歳前後の子どもの癇癪は、自我の芽生えから生じる「やりたいことを禁じられる」、「自分でやりたいけど上手くできない」という気持ちと、その気持ちをうまく言葉で伝えられないことが大きな原因です。泣きわめいてごねたりものを投げたりといった行動だけに、保護者は目がいき、つい怒ってしまうかもしれません。しかし、まずはその裏にあるお子さまの気持ちを考え、受け止めてあげるようにしましょう。「まだ遊びたかったんだよね」「自分でやりたかったんだよね」と代弁してあげることで、お子さまは保護者が自分の思いを分かってくれていると感じられ、安心できるのです。

・受け止めて、その後に促す・提案する

 上記のように、まずお子さまの気持ちを受け止め、その後に他の方法、よりよい方法を伝えて、促すという方法が効果的なことがあります。「まだ遊びたかったんだよね。ご飯を食べたら、続きをしようか」「自分でやりたかったんだよね。じゃあ、ほんのちょっとだけ、手伝おうか?」などの声かけが考えられます。最初から、別の方法を提案するより、いったん気持ちを受け止めた後に伝えた方がうまくいくことが多いです。

癇癪を起こしづらい環境の整え方

癇癪は、成長のプロセスの中で起きてしまうものです。しかし、癇癪を起こしづらい環境を整えてあげることは可能です。日ごろから次の点に注意していきましょう。

・やりたいことを禁じられることが少ない環境にする

子どもが癇癪を起こすのは、自分の思い通りにできないことが原因になっていることも多いです。触ってはいけない物を触りたい、投げてはいけない物を投げたい、分解してはいけない物を分解したいという欲求が高まり、結果として保護者からそれを禁止されるため、癇癪を起こすことも少なくありません。
触ったり、投げたり、分解してはいけない物を子どもの手の届くところには置かずに、代わりの物を自由に扱えるところに置くという対応が考えられます。安全で、触ると楽しいおもちゃを置く。丈夫で柔らかく投げてもよい物を置く。年齢にあった分解して遊ぶおもちゃを置くなどです。元々、子どもがやりたかったことはできなくても、代わりに満足できることが思う存分できる環境を用意できれば理想的です。

・スキンシップをとる

第一次反抗期とはいえ、保護者に甘えたい気持ちは変わりません。保護者がイライラしたり怒ったりすれば、嫌われているのではと不安になり、反抗期の行動や癇癪がエスカレートすることがあります。欲求不満が、癇癪を強めてしまうこともあります。そのような理由からも、一日のうち何回か、ぎゅっとお子さまを抱きしめる時間をとるなど、心を満たしてあげましょう。

・周りの人に助けてもらう

日々の育児や家事で疲れきってしまい、なかなか心に余裕ができないこともあると思います。そこでついイライラしてしまうと、お子さんの言動をおおらかに受け入れることができずに、必要以上にやりたいことを阻止することが増え、結果としてお子さまが癇癪を引き起こしてしまいます。また、癇癪の対応時に保護者がイライラしすぎると、既に述べたように火に油を注ぐ状態になりえます。周りに助けてくれる人がいるのであれば、思い切って預けたり家族で分担し休憩と取り合ったりすることで、保護者自身もリフレッシュしましょう。すると、お子さまにもやさしい気持ちで接することができるため、お子さまも感情を爆発させづらくなるでしょう。

癇癪へのNG対応にも注意

癇癪を起こした子どもを頭ごなしに注意したり、「もう知らないよ」と無視してしまったりすることはありませんか? お子さまが癇癪を起こしているのは、やりたいことを阻止される、自分でやりたいのに上手くできない、こうしたことを自分の気持ちや意見を伝えたいのに、うまく表現できずに混乱していることが一因です。また、自我が芽生え、「親の意思とは違う、自分の意思を持って生きていく自分」を親は見捨てないで受け入れてくれるのか、という大きなテーマが子どもの中に芽生えているとも言えます。「保護者は自分のことをわかってくれない」と思うことのないよう、次のような対応はしないように注意しましょう。

・感情的に叱る
・頭ごなしに注意する
・無視をして放置する
・「そんなことするなら、置いてくよ」などとおどす

まとめ & 実践 TIPS

3歳前後の子どもの癇癪には手を焼くものです。しかし、癇癪はお子さまの困惑や苦しさ、迷いが表れているとも言えます。ついイラっとしてしまうこともあるかと思いますが、お子さまの気持ちに寄り添い、落ち着かせ、安心できるようにしてあげたいですね。

プロフィール


松尾直博

主な著書『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス)『ポジティブ心理学を生かした中学校学級経営 フラーリッシュ理論をベースにして』(明治図書出版・共著)『コアカリキュラムで学ぶ教育心理学』(培風館・共著)『新時代のスクールカウンセラー入門』(時事通信社)など


博士(心理学)。公認心理師。臨床心理士。学校心理士。特別支援教育士スーパーバイザー。専門は、臨床心理学や学校心理学。幼稚園、小中学校でのスクールカウンセラーの経験多数。

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