大切なのは親子の自立心~子離れできない親「ヘリコプター・ペアレント」

諸外国には、子離れできない親のことを指す、「ヘリコプター・ペアレント」という言葉があります。子どもの上空を常に飛び回り、我が子にとって不都合なことがあると急降下してきて干渉するイメージから、「子離れできない親」をこのように呼ぶのです。「子どもはいくつになっても子ども」というのは事実かもしれませんが、保護者が過保護すぎると、子どもは自分で考える力を身に付けることができません。

今まで以上に自分で考える力が求められるようになるこれからの社会において、親子がそれぞれに自立心を育むためには、どうすればよいのでしょうか。大阪大学大学院人間科学研究科教授の小野田正利先生に、教えていただきました。

保護者は、子どもが何歳になったら子離れするのか?

実際に、保護者のかたは「子離れ」の時期についてはどう考えているのでしょうか。
ある保護者向けの講演で「子離れ」をテーマに、いくつかのグループを作りディスカッションをしてもらった結果、たくさんの意見が集まりました。多かったのは「就職まで」と「結婚まで」。また、注目してほしいのは「家を出た時」という意見です。一般的に区切りになると考えられるような18歳や20歳という年齢を区切りにするグループはあまりなく、どんな形にせよ「家を出る」時が子離れの時期であるという認識のかたが多いようでした。

同じ質問を学生にしてみると、最も多かった意見は「大学進学」というものでした。子どもが考えている親離れと、保護者にとっての子離れは、少なくとも5歳くらいは認識に差があると考えられます。

「子離れできない親」の兆候とは?

子離れできない親になっているかも……と心配な保護者のかたは、親子の会話が終わった後に、その会話を冷静に振り返ってみることをおすすめします。そこで、9割は親が話をしていて、子どもは1割しか話していない……という時には要注意です。

子離れできない親は、子どもが何歳であっても、その子が何かを言うまで待てず、先回りをして「こうでしょう?」「そうだよね?」と言ってしまっている可能性があります。しかしそれが、子どもが考えていることと違っていたとしたら、どうでしょう。親子の間で「(親は)自分のことを何も考えてくれなかった」「(子に)あんなに尽くしてあげたのに、報われなかった」というすれ違いが生じてしまうかもしれません。

普段の会話の中での「間(ま)」を大切にして、まずは10秒、子どもの答えを待つように心がけてみてください。

「親離れ」「子離れ」はお手伝いから

何歳であっても、生活能力のトレーニングをすることが、「自立心」を育む一歩となります。そういう意味で、「お手伝い」はとても大切な役割を果たすでしょう。たとえば、幼児であっても、朝、郵便受けから新聞を取ってくることはできますし、小学生になればお米を研いで炊くこともできるでしょう。中高生になったら、食材を渡して、それを腐らせずにどうやりくりするのかを任せてみるのもよいかもしれません。

こうした生活能力はいずれ大人になった際に役立つのはもちろんのこと、家事の手伝いをすれば、保護者から「ありがとう」と言われる機会が増えるはずです。家族の一員としてみずからの役割を考え、「やってもらうばかりでなく、自分も家族の役に立っている」と感じることが、自立心を育む一歩になることでしょう。

これからの時代は、ますます自分で考え、その人らしい生き方をすることが求められてくるでしょう。大学生はもちろんのこと、小学生には小学生なりの、中学生には中学生なりの「自立」と「自信」をぜひ育んでいただきたいのです。そのためには、保護者のかた自身も「子どもからの自立」について考えていただければと思います。

プロフィール


小野田正利

大阪大学大学院教授・教育学博士。専門は教育制度学・学校経営学。近年では保護者の無理難題要求(イチャモン)などをテーマに、現場に密着した研究活動を展開している。主な著書に、『ストップ!自子チュー 親と教師がつながる』(旬報社)などがある。

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