ウグイスが「ホーホケ」で鳴くのをやめた理由は? 野鳥レンジャーが解説

多くの鳥が繁殖期を迎える季節が到来し、鳥のさえずりがあちこちから聞こえてくるようになりました。そこで、都立東京港野鳥公園で、自然環境の調査・管理や来園者への自然解説などを行うレンジャーを務める嶋村早樹さんに、お子さまと一緒にできる野鳥観察の楽しみ方を伺いました。

野鳥を好きになるきっかけとして、よく挙げられるのが色の美しさです。体長12cmほどのメジロは萌黄色が鮮やかですし、「清流の宝石」とも呼ばれるカワセミはコバルトブルーの背中が見る人を引き付けます。市街地では木々や草地が減り、巣を作る場所や採食できる場が限られているようですが、それでも、庭木や公園の木々、水辺などに鳥たちはたくましく生きています。また、都市部でも樹木や水辺、エサがあれば、鳥たちと出会えるのです。

「家の周りにはスズメやカラスしか見かけないから、観察をしても……」というかたもいるかもしれませんが、よく見かける身近な野鳥にもいろいろな違いがあり、観察をすると驚きや発見があると思います。鳥の鳴き声もいつも同じとは限りません。「さえずり」「地鳴き」、そして「ぐぜり」があります。さえずりは、主にオスが繁殖期に出す美しい声で、メスへのアピールや、縄張りを主張するための鳴き声です。地鳴きはさえずり以外の声のことで、オス・メスにかかわらず、そしてヒナも同じ鳴き声です。たとえば、ウグイスの鳴き声として皆さんが思い浮かべる「ホーホケキョ」はさえずりで、地鳴きは「チャッチャッ」と舌打ちを強くしたような声になります。そして、ぐぜりは、冬に地鳴きばかりしていた鳥が、春の繁殖期に再びさえずるために練習をしている声です。春になるころ、「ホーホケ」で止まったり、「ケキョ」と最後だけ聞こえてきたりしたら、ウグイスがさえずりの練習をしているのです。

わりあい警戒心が緩く、住宅地の庭木で見かける鳥には、ムクドリやヒヨドリ、メジロなどがいます。緑の多い、開けた場所が好きなハクセキレイやカワラヒワなどは公園で見かけられますし、川や池といった水辺が好きなのはカモの仲間やサギの仲間です。一方、自然豊かな森林や高原の中でしか見られない鳥もいます。特に、繁殖シーズンを迎える春夏には、オオルリやキビタキなどが、きれいなさえずりを聞かせてくれます。枝の目立つ場所にとまっていることも多く、観察にはもってこいです。

季節ごとに見られる野鳥は異なり、地域によっても生息する鳥は違います。キャンプや潮干狩りなどで野外に出かけたり、地方に旅行に行ったりしたら、ぜひ周りの自然にも目や耳を傾けてみてください。家の周りとは違う野鳥に出会える絶好の機会になることでしょう。

  • 出典:身近な自然、野鳥観察入門【前編】日常生活に隠れている野鳥との出会い –ベネッセ教育情報サイト
  • http://benesse.jp/kyouiku/201505/20150512-2.html

プロフィール


嶋村早樹

公益財団法人日本野鳥の会職員。都立東京港野鳥公園担当のレンジャー。公園内の自然調査・管理、来園者への自然解説、公園のイベント講師などを担当。小学校などに訪問し、「総合的な学習の時間」や特別活動での外部講師なども務める。

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