【医師監修】扁桃腺は手術で取ったほうがいい? メリットやデメリットは?

のどがはれる扁桃炎は子どもによくある病気ですが、年に何度もかかったり、重症になったりした場合は手術で取り除くこともあります。近年ではむやみにとることはないとされ、手術数が減っていますが、適正に行えば不快な症状はなくなります。手術をするかどうかは、どうやって決めればいいのでしょうか。小児科医の原光彦先生監修のもと、解説します。

そもそも扁桃腺とは?何のための器官?

口蓋扁桃(扁桃腺)は免疫を司る組織で、口や鼻から入る病原体に対する免疫細胞が集まっている組織です。口蓋扁桃以外にも、鼻~喉周りにはアデノイド(咽頭扁桃)、耳管扁桃、舌扁桃がリング状に配列されています。

手術をしたほうがいいのはどんなとき?

繰り返す扁桃炎や他の臓器に悪影響を及ぼしている場合、炎症が強い場合は、手術が考えられます。例えば、次のようなときに手術をすすめられます。

1.年に3~4回以上扁桃炎になる

2.扁桃にすみついた細菌によって扁桃炎以外の病気になった場合
扁桃にすみついた細菌によって、扁桃から離れた体の部分に病気が起こる状態を、扁桃病巣感染症(病巣性扁桃炎)といいます。よく起きる病気には、皮膚に起きる病気(掌蹠膿疱症、尋常性乾癬など)や腎臓に起きる病気(急性糸球体腎炎、IgA腎症)、骨や関節に起こる病気(慢性関節リウマチなど)があります。

3.扁桃が肥大しているため、呼吸や食事が困難になる場合
とくに、眠っているときに呼吸がしばらく止まる睡眠時無呼吸症候群になっている場合は手術をすすめられます。

4.扁桃周囲膿瘍になった場合
口蓋扁桃だけでなく周囲にも炎症を起こした状態を、扁桃周囲炎といいます。炎症が続き、膿が扁桃やその周囲にたまった状態を、扁桃周囲膿瘍といいます。膿がたまった場合は手術をします。膿が首や胸にまで流れていくと、命に関わる非常に危険な状態になることがあります。膿をとるために注射針で吸引したり切開したあと、扁桃を取り除きます。

扁桃の肥大はなぜ起こる?

子どもは、成長過程でさまざまな病原体に対する抵抗力を獲得する必要があります。このため、口蓋扁桃を代表とする扁桃組織は、小児期に生理的に肥大して、成人の扁桃腺の重量を100%とすれば、12歳頃に一旦180%程度にまで大きくなり、その後自然に小さくなって、成人の大きさになります。
このため、扁桃腺に炎症を起こして大きくなった場合でなければ、生理的な肥大であり、大きな問題にはなりません。また、生理的な肥大を止める方法はありません。そのため、多くの場合は手術の必要はありませんが、前述のように、呼吸や食事がしにくいなど、肥大による症状が強い場合は、手術を勧める場合があります。

手術はどうやるの? 手術のリスクはある?

扁桃を取り除く手術は、口蓋扁桃摘出術と呼ばれ、扁桃(のどの奥の左右のふくらみ、いわゆる扁桃腺。正確には口蓋扁桃という部位)を取り除きます。耳鼻咽喉科で行い、手術ができる年齢は4~5歳以上ですが、睡眠時無呼吸症候群がある場合は、もっと低年齢でも行うことがあります。入院期間は、病院や症状によって異なりますが、通常は数日から7~10日ぐらいです。手術後しばらくは口から食事をとることができません。

多くの場合は退院までに痛みがとれ、食事も問題なくできるようになりますが、出血やのどの違和感、味覚障害、声の変化などが生じる場合があります。手術をする前に担当医とよく話し合って、納得してから手術を受けるようにするといいでしょう。

口蓋扁桃摘出術は、昔は積極的に行われてきましたが、現在では手術件数は減少してきています。現在は扁桃の役割が明らかになり、むやみに手術することはなくなったからです。
しかし、手術が必要な場合は主治医と相談のうえ、時期をみて手術をすることをおすすめします。

扁桃は、ウイルスや細菌などが体に入って病気を起こすのを防ぐ免疫を担当する器官です。その意味ではできれば取り除かないほうがいいのですが、4~5歳以上になると手術をしても、手術をしない場合と免疫力の差はほとんどないという報告がありますので、心配しすぎる必要はないでしょう。

監修:

原 光彦

原 光彦

和洋女子大学 家政学部 健康栄養学科 教授。東京都立広尾病院小児科非常勤医。日本肥満学会理事、日本小児保健協会理事などを務める。専門は小児の生活習慣病、小児循環器、小児アレルギー疾患、スポーツ医学、臨床栄養学。著書に『こどものメタボが危ない!小児科医からの緊急提言』(主婦と生活社)などがある。

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