吐いたらココに注意! 嘔吐(おうと)を伴う子どもの疾患

嘔吐(おうと)は脳の嘔吐中枢が刺激されることにより胃の出口が閉ざされ、食道からの入り口が緩むことによって逆流が起きる「反射」です。大人の場合、「吐き気」が嘔吐につながることを経験的に知っていますが、小さな子どもの場合はわかりません。そのため、いきなり「ゲボッ!」と嘔吐することになります。ある程度言葉を発することができる年齢に達していても、「おなかが痛い」や「気持ち悪い」といった抽象的な不快感を訴えるくらいしかできない場合がほとんどです。そのような症状を訴えた場合や、言葉で伝えることはできないものの、顔色が悪い・気分が悪そうにしている・ぐったりして辛そうな表情である場合には、早めに洗面器などを用意して、急な嘔吐に備えましょう。


原因の多くは、風邪ではなくウイルス性胃腸炎

 小さな子どもに見られる嘔吐症状の場合、その多くがウイルス性による胃腸炎と考えられます。一般的な認識として「おなかの風邪」に伴って表れる症状のひとつと思われていますが、風邪そのものがウイルス性の疾患ですから、嘔吐の原因は風邪にあるわけでなくウイルスにあると考えるべきでしょう。ウイルス性胃腸炎の原因は「ロタウイルス」や「ノロウイルス」が有名ですが、原因のウイルスは他にも多くあります。

 

≪ロタウイルス性胃腸炎≫

ロタウイルスは比較的ありふれたウイルスですし、ワクチンもあります。ところが乳幼児の場合は免疫力に乏しいので、ウイルスが体内に入ると2日の潜伏期間を経て発症します。5歳児になるまでに90%以上の子どもがロタウイルス胃腸炎にかかると言われていますので、誰もがかかると言えるでしょう。ただし、重症化するケースもありますので、注意しなければならない胃腸炎です。流行には時季があり、冬から春先に最も多く報告されています。

 

嘔吐とともに上げられる症状の特徴に、激しい下痢があります。水様の下痢を繰り返し、便が白濁するので見た目でも判断できます。
特に乳幼児の場合、激しい下痢に伴う脱水症状が重症化を招きます。かかった場合の特効薬はないので対症療法が中心となりますが、重症化するとウイルス性脳炎などにつながる場合もあるので、注意が必要です。白濁した水様便が見られた場合、速やかに受診してください。

 

≪ノロウイルス性胃腸炎≫

ノロウイルスは冬場に流行する傾向にあります。ノロウイルスは二枚貝に棲息(せいそく)していることが多く、カキなどを生で食べる機会が増える冬場に、発症の報告が増えるものと考えられています。かかる人は多く、毎年のように100万人を超える数が報告されています。

 

ノロウイルスも体内に入り1〜2日の潜伏期間を経て発症します。ロタウイルスと同様に潜伏期間中は発症しないため、知らないうちにウイルスキャリアとなり、無意識にウイルスをまき散らすということになりかねません。感染を防ぐため、季節を問わず家族みんなで手洗いを徹底させる習慣を身につけましょう。

 

ノロウイルスによる胃腸炎も、やはり嘔吐と下痢が主な症状となります。症状はロタウイルスより軽いと言われていますが、重症化する人もいます。嘔吐後の吐瀉物(としゃぶつ)が新たな感染を引き起こす原因となりますので、処理には注意が必要です。事後の入念な手洗いを心がけてください。

 

ノロウイルスも特効薬はありませんので対症療法が中心となります。嘔吐と下痢による脱水症状に要注意ですが、おおむね2〜3日の安静で快方に向かうようです。嘔吐後は胃腸が敏感になっていますので、一気に大量の水分を与えないよう注意してください。ノロウイルスは食品の加熱によりある程度予防できます。小さなお子さまのいる家庭で二枚貝を食する場合、できるだけ加熱することをおすすめします。85度で1分間以上の加熱が目安です。

 

 

ウイルス性胃腸炎以外で起きる嘔吐

≪髄膜炎≫

ウイルス性胃腸炎以外に考えられる嘔吐の原因としてもうひとつ重要なのが髄膜炎です。髄膜炎に伴う嘔吐は頭痛や発熱を伴うため、一般的には「風邪かな?」と思われがちです。髄膜炎は、大きくウイルス性と細菌性に分けられ、後者の細菌性髄膜炎は重症化することがあるため、入院して抗生物質の投与による治療が欠かせません。

 

髄膜炎の場合、項部硬直と呼ばれる症状が出ます。これは髄膜炎に伴う髄膜刺激症状で、首筋が硬くなるため首を前屈させることで診断できます。前屈に制限があり背中の痛みを訴えるようなら、頂部硬直の症状といってよいでしょう。

 

このように、発熱と頭痛を伴う嘔吐が見られた場合、髄膜炎を疑う必要があります。ただの風邪だろうと侮ることなく、必ず医療機関を受診するようにしてください。

 

≪その他の嘔吐を伴う疾患≫

嘔吐を症状とする病気は他にもあります。例えば、腸重積・腸閉塞・腸捻転、脳腫瘍や急性虫垂炎、周期性嘔吐症・ケトン血性嘔吐症(いわゆる自家中毒)などです。
自家中毒の多くはストレスなどの心因性によるものと考えられ、周期的に嘔吐を繰り返します。ウイルス性とは異なり、発熱や下痢を伴いません。極端な環境の変化や緊張が原因と考えられ、血液中にケトン体という物質が大量に生成されます。急増したケトン体は尿にも放出されるため、尿検査によって診断が下される場合があります。治療法は対症療法が中心です。子どもがリラックスできる環境をつくってあげるようにして、不安を取り除いてあげましょう。

 

嘔吐で注意すべきなのは脱水症状です。一度に多量の水分をとろうとすると「反射」で嘔吐しますので、こまめに少量ずつの水分摂取を心がけ、難しいようなら早めに受診を検討してください。

 

≪子どもの場合、忘れてはならない異物摂取≫

その他に挙げられる嘔吐の原因としては、異物摂取などが考えられます。薬品・洗剤・化粧品等を放置しないように心がけ、子どもの周囲に誤飲した痕跡が見られた場合、速やかに医療機関を受診してください。

 

 

プロフィール

監修:宮原光興

医療法人社団悠翔会 悠翔会在宅クリニック川崎 院長

宮原裕美
芝パーククリニック 内科医員

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