<新高1~高校新課程~>「情報Ⅰ」って何? 大学入試でも課される「情報Ⅰ」とは

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大学入学共通テスト(以下「共通テスト」)で「情報Ⅰ」が出題される、というニュースをご覧になったことがあるかもしれません。
2022年4月に高校に入学する学年から科目や教科書などが新しくなり(いわゆる「新課程」)、1学年上の先輩とは違う内容を勉強することになります。
また、高校3年生のときに行われる共通テストでは、新たに「情報Ⅰ」が出題されることが決まっています。

多くの保護者の皆さんの世代では、普通科高校では『情報』という教科はなかったので、どういう勉強をするのかよくわからないかたも多いと思います。
「プログラミングを学ぶ」という話を聞かれているかもしれませんが、プログラミング教室に通ったほうがよいのかなど、不安になられることもあるのではないでしょうか。
ここでは、その「情報Ⅰ」について解説します。

この記事のポイント

「情報Ⅰ」で何を学ぶ?

「情報Ⅰ」には次の表のように4つの単元があります。
(単元名称は「学習指導要領」に記載されているもの、概要は筆者が学習指導要領に示されていることを要約・具体化して説明したものです。)

(1) 情報社会の問題解決
情報に関する法制度や個人の責任としての情報モラル(情報を扱う際に問題が起きないようにするための留意点)などについて学びます。
また、情報や情報技術が社会に与えるプラス・マイナス両方の影響について学びます。
<プラスの面の例>SNSや電子マネーによる買い物履歴などの情報(いわゆるビッグデータ)や人工知能、ロボット等の情報技術によって社会問題が解決されたり便利になったりすること。
<マイナスの面の例>サイバー犯罪や情報漏洩などにより個人の生活や企業や国家が脅かされること。
(2) コミュニケーションと情報デザイン
情報技術の発達によってコミュニケーションの手段が変化し、情報の流通の範囲が拡大し、即時性や利便性が向上した状況を理解します。また、多くの情報が流通するなかで、目的や受け手の状況に応じてわかりやすく伝える方法として、図表やピクトグラム、ページデザインなどの情報デザインの工夫の仕方を学びます。
(3) コンピュータとプログラミング
コンピュータの内部や情報通信ネットワークの仕組みなどを学ぶとともに、プログラミングやシミュレーションによって問題を発見・解決する方法を学びます。
(4) 情報通信ネットワークとデータの活用
情報通信ネットワークや情報システムによって提供されるサービスを活用することで、データを蓄積、管理、提供する方法や情報セキュリティを確保する方法を身に付けます。
また、アンケートの設計から収集データの統計的な分析、テキストマイニングなど、データ分析の方法を学びます。

今、社会ではDXということが盛んに言われています。DXとは「デジタルトランスフォーメーション」のことで、「デジタル技術によって生活や仕事の在り方を変革していくこと」を意味しています。
さまざまな面でDXを果たそうとするなかで、現在の日本は、圧倒的に技術者が不足している状況にあります。
技術者のすそ野を広げて増やしていくとともに、専門的技術者としてだけではなく、国民として日常生活においてデータや技術を理解し、よりよい生活を送ることができるようになるために、必修科目として「情報Ⅰ」が設置されました。

既に多くの大学では、文系・理系を問わず、データサイエンス教育を行うようになってきましたが、その基礎となる科目です。
高校生の視点からすると、中学校の技術・家庭科技術分野での学習とつながっているものだということが理解できると思います。

高校で『情報』を学んだことのない世代から見たら難しく見えるかもしれませんが、SNS、ネットワーク、シミュレーションなど、いずれもデジタルネイティブ世代にとっては日常の環境です。
テクノロジーの知識を詰め込むというよりは、日常や社会の課題を実践的に解決するための考え方を学び、技術の入り口を体験する、というような内容です。
プログラミングの学習においても課題解決のための実践的な方法として、また、言語としてのプログラミングを学びます。

小中学校においては、既定のコマンドを利用してゲームを作ったり機械を動かすためにプログラムで制御したりすることで、コンピュータは指示したとおりに動く(指示が論理的に間違っていたら想定どおりに動かない)ということを体験することが多いようです。
高校では、課題を実践的に解決する手段として、また、言語としてのプログラミングを学びます。

大学入試で「情報Ⅰ」はどう扱われる?

新高1生が臨む「新課程入試」では、共通テストで「情報Ⅰ」が出題されることが決まっており、国立大学協会は、国立大学においては「情報Ⅰ」を課すことを原則とすると発表しました。最初はコンピュータを使ったテストにできないか検討していましたが、環境が整わず、他教科同様、ペーパーテストでの実施となります。

必須科目なのか選択科目なのか、配点はどうなるのか、などの取り扱いは、現在、公立大、私立大も含めて大学ごとに検討しており、2022年度中に概要が公表されることになっています。

「プログラミングが入試に出るなら、プログラミング教室に行ったほうがいいのかな?」と思われたかたもいらっしゃるかもしれませんが、いったん冷静に考えましょう。
プログラミングは上の表にあったように、「情報Ⅰ」の中の四分の一以下に過ぎませんし、受験に必要な教科全体の中で考えるとごく一部です。高校生自身が強い興味を示し、その道に進みたいと考えているのでなければ、まずは学校での勉強をしっかりやっておく、ということでよいと思います。当然のことですが、自分だけに「情報Ⅰ」が課されるというわけではなく、同じ志望をもつ生徒には平等に課されます。

ちなみに、プログラミングに詳しいかたは、入試ではどのプログラミング言語が扱われるのか、と気になられるかもしれません。
共通テストでは、大学入試センター独自の「疑似言語」を使用して出題されます。
「情報Ⅰ」の教科書では多くの場合「VBA」「Python」「Java Script」のうちのどれかを学習することになりますが、どれを学んでいても有利不利がないように配慮されていますので、ご安心ください。

高校のパソコン事情

前述のとおり、高校では全員が必修科目としてプログラミングを学ぶことになりました。そのためのパソコン・端末はどうしたらよいでしょうか。

すべての公立小中学校では学校備品を児童・生徒に貸与するという形で一人一台端末を実現しました。
高校での一人一台端末の対応は、都道府県や私立学校ごとに異なります。
詳細は進学先の高校からの案内をご確認いただければと思いますが、学校備品の貸与、学校指定の端末を保護者負担で購入、各自保有する端末を学校でも利用、など、さまざまな形があります。
また、一人一台端末の利用を前提としない高校もあります。

保護者負担で準備する場合、指定のOS(Windows/Chrome OS/iPad OSなど)がある場合が多いので、中学生までに使っていたものが使えないこともありますのでご注意ください。
高校生になって異なるOSの端末を使うことになった場合、入学当初は操作性の違いにとまどう姿を見せることがあるかもしれません。
しかし、基本的に「できること」にそれほど違いはありません。そのうちに慣れる、と優しく見守ってあげてください。

一人一台端末を導入していない高校に進学する場合、学校にはコンピュータ教室があります。
「情報Ⅰ」の授業には、コンピュータ教室の端末が利用できますので、個人所有の端末を必ずしも準備する必要はありません。

まとめ & 実践 TIPS

「情報Ⅰ」では、現代の、そして近未来の社会で多くの人にとって必要となる実践的なことを学びます。
「大学受験の負担が増して大変!」ということもありますが、高校生の未来が明るいものとなるよう、前向きにとらえましょう。

高校では「情報Ⅰ」は1年生か2年生の授業で扱われることが多いのですが、実生活に引き付けて頭や手を動かしながら実践的に学習しますので、暗記とは違って忘れにくいと言ってもよい科目です。まずは入試のことを気にするよりも、授業にしっかり取り組むということが大切です。

プロフィール


西島 一博(にしじま かずひろ)

ベネッセ文教総研所長。株式会社ベネッセコーポレーションで、高校、中学校、小学校対象のさまざまな教材開発に携わる。2016年度より高校用教材・生徒手帳などの制作・販売を行うグループ会社、株式会社ラーンズの代表取締役社長を務め、2021年度より現職。ベネッセ文教総研では、主として中高接続、高校教育、高大接続の領域での研究、情報発信を行っている。

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