速報! 2016年度 首都圏中学入試の傾向と分析【第1回】全体的な傾向
2016(平成28)年度の首都圏中学入試には、どんな傾向が見られたのでしょうか。
森上教育研究所主催のセミナー「平成28年度首都圏中学入試の結果と分析」での発表をもとに、受験生の動向についてお伝えします。
■中学受験者数は全体として横ばい
2015(平成27)年度は、サンデーショックの影響もあり、全体として女子校の受験者数が増えましたが、2016年度は男子校・女子校・共学校とも、受験者数はほぼ横ばいとなりました。なお、中学受験者数がピークとなった2009(平成21)年度と比べると、受験者数は20%以上減少しています。
受験者数を難易度別に前年度と比較すると、全体として高~中程度の学校で受験生が増えた傾向にありますが、極端な難関志向とは言えません。入試方法の多様化と共に、「ナンバーワンよりオンリーワン」志向は続いていると見てよいでしょう。
また、2009年度と比較すると、難易度が高~中位校では受験生があまり減っていませんが、中下位校では6割以下となっているところが多く、中下位校離れの傾向が見られます。
■大学付属校に受験生が集まる
今年度の特徴のひとつは、大学付属校が多くの受験生を集めたことです。これまでは付属校の受験者は全体として減少傾向にありましたが、今年は首都圏全体で10%程度増加。特に難易度が中の上以上の付属校が高倍率となりました。これは、大学入試改革の方向性がまだ不透明なため、系列大学への入学に有利な付属校に注目が集まった結果と見られます。
■「適性検査型」「総合型」入試、英語入試の増加
教科横断の課題に対し、論述を行わせて思考力や表現力を見るなど、いわゆる「適性検査型」の入試を行う私立校も増えており、全体の約4分の1で実施されました。特に、大学入試改革を見据えた総合型入試で注目を集めた共立女子中・光塩女子学院中・品川女子学院中は数多くの志願者を集め、いずれもここ3年間で最大の倍率を記録しました。
また、英語が必須の入試を行う学校は、前年度の9校から14校へ増加。英語の選択が可能な学校も含めると、全体の約15%が英語による入試を行い、その手法も多様化しています。大妻中野中・神田女学園中・広尾学園中・山脇学園中・橘学苑中など、英語入試を行っている学校はいずれも志願者が増える傾向にあります。
■「アクティブ」「グローバル」教育は質を問われる時代へ
総合型入試や英語入試の導入は、いずれも大学入試改革を視野に入れた取り組みと見ることができます。また、首都圏の学校説明会を訪れると、アクティブ・ラーニングやグローバル教育について、大部分の学校で言及されていました。これらの取り組みへの関心の高さが、受験生の動向からも見えてきます。
ただし、今後は、「アクティブ・ラーニングが月に何回ある」というだけでなく、どのような考え方に基づいて授業を行い、どのような成果が得られたかが厳しく問われるようになると考えられます。
■「学力を伸ばしてくれる学校」に受験生は集まったか
森上教育研究所では、長年「中学入試偏差値」と、「大学合格実績を中学入試偏差値に換算したもの」の差を取るという方法で、「学力を伸ばしてくれる学校」について調査を行ってきました。その結果、「学力を伸ばしてくれる学校」であっても、多数の受験生を集めているとは限らないことがわかりました。
たとえば、入学時は比較的難易度が低くても、東大・京大・一橋・東工への高い合格実績を持つ県立相模原の場合、中学受験者数がピークとなった2009年度と比較すると、2016年度の受験者数は39%。同じく、早慶上智への合格実績の高い聖ドミニコ学園中は22%にとどまっています。学力の伸び率が大きかった宝仙学園中、淑徳中なども、2016年度の受験者数は2009年度の6~7割程度でした。
これは、多くの受験生・保護者が「学力を伸ばしてくれる学校」の存在に気付いていないため、あるいは学校側の広報不足とも考えられます。
- ※<参考>森上教育研究所
- http://www.morigami.co.jp/
中学受験においては、いかに「子どもに合った学校」「子どもを伸ばしてくれる学校」を選ぶかが大切です。人間性や人生を切り開く力は数値化できませんが、今後は入学時の難易度だけでなく、学力の伸び率も志望校選びにおいて重要な要素となるでしょう。