専門高校への進学を考える!その魅力と注意点は?
高校の進路選択においては、普通科だけでなく農業、商業、工業、科学技術・理数、国際、芸術、スポーツなどの専門学科という選択肢もあります。これら専門高校への進学を希望するには、どんな意識を持ち、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。進研ゼミ高校受験総合情報センターの浅野剛センター長にお話をうかがいました。
専門高校に期待されるもの
少子高齢化やグローバル化、科学技術の進化など社会が急速に変化する中で、職業人に求められる専門性は高度化、多様化が進んでいます。これらの社会のニーズに対応するため、全国で新しいタイプの専門高校が設置されていますが、今回は東京都の専門高校の状況を例にみていきたいと思います。
「都立専門高校改編 基本構想検討委員会報告書 平成26年8月(以下、「報告書」と示す)」によると、都民が専門高校に期待することとして「基礎的、基本的な学習」に加えて、「資格取得のための学習」「専門技術、専門分野の学習」「実習の機会」などが多くあげられています。資格取得や専門技術の習得などは、専門高校ならではの期待と言えるでしょう。
卒業後は進学者の割合が増加
では、専門高校卒業後の進路はどうなっているのか、「報告書」の資料を参照してみましょう。表1で、進学者の割合は普通科で88%、総合学科で85%に達していますが、就職者が多い工業科であっても42%、商業科で50%となっています。また、図1で、専門高校卒業後の進路については、平成9年度と22年度を比較した場合、大学や専門学校等への進学者の割合は増加しており、専門高校では、普通科と比べて卒業者数に占める就職者の割合は高いが、近年は進学者の割合が大幅に増加していることがわかります。
専門性を将来に生かす
ところで、専門高校で学んだ専門性を卒業後に生かしているかどうかという点においては、就職と進学で状況が異なります。表2に示したとおり、各専門学科からの「就職先」では、多くが専門性を生かした進路に進んでいますが、「進学先」では、専門高校で学習した専門性を生かした分野に必ずしも進学していない状況がみられます。特に、進学型であるビジネスコミュニケーション科以外の商業高校からの進学者の約60%が、商業の専門性とは異なる進路を選択しています。
なぜこのようなことが起きるのか、背景には、高校入学前の志望校選択が関係しているようです。「報告書」の中では、専門高校の在校生に「入学を希望していた高校、学科であるかどうか」をたずねた調査結果があります。それが図2ですが、畜産・動物系、食品系などの農業科、家庭科総合系や食物科や服飾科などの家庭科、工業の工芸系の学科では、「この高校のこの学科に入学したかった」との回答者の割合が80%以上となっている一方で、工業の化学系や電気系の学科、ビジネスコミュニケーション科以外の商業系の学科では、その割合が低く、「特にどの高校に入学したいということはなかった」や、「別の高校の別の学科に入学したかった」との回答者の割合が高くなっています。
専門高校の選択は、教育内容の理解が前提
参考までに、専門高校の生徒が中退する理由として最も多いのは「進路変更」です。つまり自分のやりたいことと、入学した高校の専門性が最初から噛み合っていないという、そもそものミスマッチが起きてしまっているということです。専門高校は、卒業までに専門科目を25単位以上取得しなければなりません。本人が興味・関心を持てない分野の学習ばかりでは、学習のモチベーションを維持することは難しいと言えます。「自分の成績で入学できそうな学校なら、普通科でも専門学科でも、どこでもいい」ということではなく、まず自分が何をしたいのかをしっかり考えておくことです。
公立高校も保護者の世代から大きく変化しています。科学技術や国際系をはじめとして新しいタイプの高校や学科も数多く設置されており、また以前からある学科であっても教育内容が大きく変わっているケースもあります。志望校選択の際にインターネット等で下調べをすることは有効な手段ですが、実際に決めるときには学校説明会などに参加し、専門教育の内容についてじっくりと先生方からお話しを聞くことが大切です。