国語の問題などで、指示語が理解できません[中学受験]
平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。
【質問】
国語の問題文などで、指示語にはポイントがあると思うのですが、理解できないようです。
相談者:小3女子(大ざっぱ・感情的なタイプ)のお母さま
【回答】
手順を踏まえて探せば、徐々に慣れて上手に探せるようになる
■指示語とはどんなものか?
「指示語」がうまく理解できないというお悩みですね。まずはお子さまに、「指示語とはどんなものか?」「なぜ使うのか?」というところから説明していくとよいでしょう。
指示語は、主に前に述べた内容の繰り返しを避けるために使う言葉です。「指し示すもの」や「自分に近い・相手に近い」などによって、「これ・それ・あれ・どれ」とか「この・その・あの・どの」などと使い分けます(下図参照)。
指示語はこのように繰り返しを避けるためのものですから、それが指し示す内容(「指示内容」と呼びます)は指示語の前にあるのが普通です。それではどのくらい前にあるのでしょうか? 残念ながら指示語と指示内容の距離は決まっていません。「○○字以内まで」とかに決めておいてくれれば便利なのですが、あくまでも書き手の自由です。書き手が、「このくらいの距離なら読者はわかるだろう」と判断したら指示語を使ってきます。遠ければ遠いほど何が指示内容かわかりづらくなりますから、解答する皆さんにはより難問になるということです。
■指示語が指し示すものの探し方
次に、指示語が指す指示内容を探す手順について説明します。
(1) まず、指示語のあとの内容を見る。
あとの内容によって、指示語が指す内容も違ってきます。「それ」が指すものを次の例文で比べてみると、例文Aでは「本」あるいは「机の上にあった本」ですが、例文Bでは「机の上に本があったこと」になります。
A 机の上に本があった。それは、母が読んでいたものだ。
B 机の上に本があった。それは、意外なことに思えた。
(2) 次に、問いかけの形にする。
問いかけの形にすると、どのようなものを探せばよいかがわかります。たとえば、例文Aでは、「母が読んでいたもの」は 何? 例文Bでは、「意外なことに思えた」のは 何? となります。ここで、例文Aの 何 は「読んでいたもの」ですから、すぐに「本」であることがわかります。
(3) 指示語の前のほうから答えを探す。
指示語が指す内容は前のほうにある場合が多いので、指示語の前のほうから、しかも近いところから探し始めましょう。そして、ないようであれば探す範囲を広げていきます。
「答え」と思われるものを見つけたら、指示語に当てはめて読んでみましょう。たとえば例文Bでしたら、「机の上に本があったことは、意外なことに思えた」となり、ぴったり当てはまりました。なお、「抜き出し」「字数指定」など問いの条件にも注意しましょう。最初のうちはなかなか難しいかもしれませんが、このような手順を踏まえて探せば、徐々に慣れて上手に探せるようになると思います。
■あとにある場合にご用心!
指示語は前にある言葉の繰り返しを避けるために使われますから、当然、指示内容は前にあるはずです。しかし、答えとなるものが後ろにある場合も時々あります。たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
例文C:机の上に本があった。それは、母が読んでいたものだ。古めかしい本だったが、母の思い出の本として大切にしようと思った。
例文Aでは、「それ」は「本」あるいは「机の上の本」でした。しかし、文が例文Cのようになり、しかも「『それ』が指すものを6字で抜き出しなさい」と問われたら、答えは「古めかしい本」になり、指示語よりあとにきてしまうのです。なぜなら、「古めかしい本」や「母の思い出の本」は「(机の上の)本」を言い換えたものですから、当然、それらも「それ」の指示内容になります。そして、字数を指定することで、6字なら「古めかしい本」に答えが限定されるからです(7字なら「母の思い出の本」が答えになります)。
説明的文章では言い換えは多く用いられますから、字数制限などの条件を加えることで、指示語より指示内容があとにくるような問題も可能になります。それほど頻出ではありませんが、時々出てくることもありますから頭の片隅に入れておくとよいでしょう。