1年間の目標と実践課題を定める [中学受験 4年生]
保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。4年生を対象に、1年間の目標設定について取り上げます。
■子どもの目標は、「学校」より感情移入できる「人物」に
「眼高手低」という言葉があります。
これは本来、「目は肥えているが、実際の技能や能力は低いこと」を指しますが、2008年ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英博士は「目標は高く、実践は基礎から着実に」という意味にわざと誤訳し、座右の銘とされているそうです。
これにならって、中学受験における「目標」と「実践」について考えてみましょう。
目標といえば大人はすぐ「志望校」を思い浮かべます。しかし、いくら保護者が「難関校をめざそう」といっても、子どもは学校に対して具体的なイメージを持つことはなかなかできません。目標は、子どもが感情移入して、憧れるような「人物」に置くとよいのです。
■学年が上がるにつれて、目標を身近に置く
4年生の時点では、とにかく夢を大きく。目標は、歴史上の偉人でも、現在さまざまな分野の第一線で活躍している著名人でもかまいません。まんがの偉人伝や、著名人の仕事を紹介するドキュメンタリー番組などを一緒に見るなどして「人」に興味を持たせ、「将来、あんなふうになりたいな」とさまざまな夢を膨らませてあげてください。子どもの好きな人物のポスターなどを、壁に貼っておくのもよいですね。
偉人伝では、必ず何かを成し遂げる前の試行錯誤や、ブレイクスルーの瞬間について描かれます。憧れの人の努力や着眼点を知ることは、「夢をかなえるにはどんなことが必要か」を考えるきっかけとなります。そして、その夢に近付くための手段として「志望校」を選んでいただきたいですね。お子さまの夢につながる志望校を選ぶには、偏差値だけでなく、その学校からどんな先輩が出ているか、どんな分野に強いかをよく調べる必要があります。
なお、5年生になったらもう少し具体的に、志望校を卒業した先輩に目標を定め、6年生では、その学校に入った身近な先輩を目標にするとよいですね(5年、6年次の目標設定については次回以降取り上げます)
■4年生の重要実践課題は「知りたい!」「好き!」という気持ちを育むこと
近年の中学入試では、教科融合の問題や深い思考力を問う記述問題が増える傾向にあります。4年生の実践重要課題は、「知る」楽しさを味わうこと。思考力の下地となる知的好奇心を育むことです。保護者のかたには、お子さまが「好き!」「おもしろい!」と言ってくれるように、さまざまな入り口を用意してあげることに腐心していただきたいと思います。いつでも手にとって調べられるように、面白そうな図鑑、辞書、地図などを用意しておくこと。できれば毎週、博物館や動物園、美術館や劇場、自然観察などフィールドワークに連れて行ってあげること。サイエンス教室や、子どもの好きな著名人の講演もよいですね。また、たとえば、子ども向けの野生動物のドキュメンタリー番組など、面白い自然科学の番組や動画を見つけて一緒に見るのもよいし、さらに映像で見た動物に合いに動物園に出かけるなど、小旅行を組み合わせるとさらによいと思います。この先教科の得意・不得意をつくらないためにも、何にでも首を突っ込みたくなるような、幅広い興味を育んであげることが大切です。
■「わからない」「不思議」だからこそドキドキする
また、この時期はぜひパズル的な問題にたくさん取り組んでください。解けそうで解けない悔しさや、ヒントをもらいながらがんばって、解けた時のうれしさなどを体験しておくと、このあと大きな強みになります。
子どもは怖い話、不思議な話が好きですが、あれは「先が読めない」「わからない」からこそドキドキするんですね。答えがわかっているものは面白くないんです。「知る」ことは異世界、ワンダーランドへの旅でもあります。ですから、保護者のかたは、自分が知っていることを教えてあげるのではなく、「知らなかった!」「面白いね」「あなたのほうがよく知ってる」とご自分の感想を伝えながら、一緒に学ぶことを楽しんでください。
■おもしろがってさえいれば、この先伸びる! と割りきる
フィールドワークにしろ、パズルにしろ、「これが勉強になるのだろうか」「面白かった! というだけで何も頭に残っていないのでは」と気になる保護者のかたもいらっしゃると思います。しかし、この時期は本当に「遊び」でいいのです。5、6年生になると勉強が難しくなってきますが、そこを乗り越えるために必要なのが「知る」「考える」楽しさです。保護者のかたにはぜひ、「おもしろがってさえいれば将来伸びる」「点数なんか気にしない」と割り切っていただきたいと思います。今のうちに「知る」「考える」楽しみを体得させてあげることがなにより大切なのです。