第1回 公立中高一貫校「受検」と私立中学「受験」は何が違うのか(1)
「受検」と「受験」、皆さまは「検」と「験」の文字が違うことに気がついておられたでしょうか。小学校卒業見込みの6年生に、公立中高一貫校は適性「検」査を課すのに対し、私立中学は入学試「験」を課します。そもそもこの違いが何を意味するのか、公立中高一貫校の「適性検査問題」と私立「中学受験問題」の違いを含めて一考します。
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違いを考える前に、そもそも「公立受検」と「私立受験」の共通点はあるのでしょうか。
第1に、どちらも求めている学力のコアは「論理的思考力」です。第2に、問題文や設問は子ども向けに易しく書かれた設問ではなく「大人の書いた」問題文であることです。小学校で行われる「カラーテスト※」などの問題文を超えた「問いの文」で出題されるのです。
この2点を踏まえないで、適性検査を「公立学校」が行う「検査」だと簡単に考えると、手痛いしっぺ返しを食らうことになります。
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次に違いは何でしょうか。
第1に、私立中学の「入学試験」は、国語・算数・社会・理科の各教科ごとに出題される学力試験であるのに対し、「適性検査」は教科ごとの出題ではありません。6ページから12ページ程度の「適性検査」問題の中に各教科の視点からそれぞれ小問がつくられています。例えば社会科の資料を利用して算数の計算力を見る設問であったり、計算で求めた割合をもとにして社会関係の考察を求めたり、理科の実験観察からわかることをまとめる場合に、条件を制限することで国語的な表現力も見ようとしたり、といった具合に各教科を融合した問題となります。また、素材が音楽・図工・家庭・体育の領域からつくられる場合もあります。科目横断型の問題といわれるゆえんです。
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第2に、内容面では、私立中学の「入学試験」が各教科の知識、理解、技能の達成度を試験するのに対し、公立中高一貫校の「適性検査」は、知識の量よりも問題そのものをその場で理解し、資料や図表に根拠を求めて判断し考察したうえで、自分の考えを論述する力を検査します。
第3に、採点評価の違いがあります。私立中学の「入学試験」の場合は、遅くとも翌日には合格発表を行う必要から解答のしかたと採点に一定の枠が生じます。つまり一定量の記号選択または抜き出しや結果のみの記述が登場せざるを得ません。一方、公立中高一貫校の「適性検査」は5日程度の採点期間を設けており、採点基準に基づき途中評価も行われます。また受検者自らの判断で資料などの選択をして解答させることがあり、解答も多様なものが出現します。
その他、「適性検査」を通して見える「学力」観、準備期間と準備の中身・程度、学校外教育機関(塾や通信教育)の利用、親と子のかかわり方など多々ありますが、次回以降に詳説します。
※カラーテスト
教科書の単元終了後または学期末に、各組内で行う指導要領準拠の確認テストで、市販されていないものです。