自分の考えが問題の主旨と違うため、最終問題でつまずいてしまいます[中学受験]

平山入試研究所の小泉浩明さんが、中学受験・志望校合格を目指す親子にアドバイスする実践的なコーナーです。保護者のかたから寄せられた疑問に小泉さんが回答します。


【質問】

文章の読解力がなく悩んでいます。普段から、子どもに「自分に嘘をつかないで」と伝えていることもあり、問題の主旨と本人の考え方が違うと最終問題でつまずいてしまいます。

相談者:小6女子(神経質なタイプ)のお母さま



【回答】

文章を正しく理解できれば、筆者の考えと違っても問題ない


■最後のほうで文章全体を通して問う問題のいろいろ

「問題主旨と考え方の違いで、最終問題でつまずいてしまいます」とありますが、入試の国語では「読んだ問題文をどれだけ理解したか」が問われるのが一般的です。もちろん、「感想」や「考え」を問われることもありますが、問題文を正しく理解したうえであれば、自分の「感想」や「考え」が筆者のものと違っていても問題ありません。
たとえば、ご質問にある「最終問題」とは、最後のほうで文章全体を通して問う次のような問題でしょう。問A、問Bは説明文や論説文で問われた設問です。また、問Cは物語文で、問Dは随筆で問われた設問です。

問A 「----線(1)とありますが、筆者はなぜ『○○○』と考えているのですか。文章全体から考えて、自分のことばで書きなさい。」
問B「----(9)『○○○』とありますが、それについてあなたはどのように考えますか。筆者の考えをふまえて書きなさい。」
問C「《※》の場面で『○○』が登場しますが、この作品で『○○』にはどのような意味があると考えられますか。説明しなさい。」
問D「父の『手』が『私』にとってどのようなものであるかをおさえながら、この文章を読んだあなたの感想を200字内で書きなさい。」
問E「----(6)『バツの悪さ』について、あなたがこのような気持ちになった時の経験を具体的に教えてください。」



■筆者の意見を理解することと同調することとは違う

お子さまは「問題の主旨との考え方の違いで、最終問題でつまずいてしまいます」とあり、お母さまも「自分に嘘をつかないで」とありますが、既に述べたように、考え方の違いを悩んだり嘘をついたりする必要はまったくありません。なぜなら、問Aでは、筆者がそのように考えている理由を理解しているかどうかが問われているだけだからです。筆者の考え方にたとえ反対であっても、それに同調するように言われているわけではありません。なお、「自分のことばで書きなさい」とは、本文の内容を丸る写しにするのではなく、自分なりのことばで書きなさいということです。もちろん、自分の意見を述べなさいということではありません。

自分の考えを述べてよいのは、問Bのような設問です。ただし、この場合も「筆者の考えをふまえて書きなさい」とありますから、問題文の内容を無視して好きなことを書いてはいけません。たとえば、「『○○○』は、筆者の△△△という考えに即したものであろう」とまずは本文の内容を理解していることを示したうえで、「しかし、私は『○○○』には反対である(あるいは、賛成である)」と自分の考えを述べていきます。本文を読んで何を理解したのか、そしてそれについて「賛成」なのか「反対」なのかを述べる小論文的な問題です。これも、嘘をつくことも悩む必要もない問題でしょう。


■物語文でも論理的で客観的な問題の読み方、設問の解き方が必要

問Cは、物語文の中で『○○』にはどのような意味があるのかをつかむ必要があります。また問Dでは、感想はともかく、「父の『手』が『私』にとってどのようなものであるか」についてつかまなくてはなりません。この時の「つかむ」というのは、「理解する」に置き換えてもよいでしょう。しかも、主観的な理解ではなく、客観的な理解が求められます。客観的な理解とは、多くの読者がこのように理解するであろうというような理解の仕方です。なお、試験問題では、何通りも解釈が可能な箇所は記述問題では出題しません。また、選択肢問題でも「正解はこの選択肢しかない」と1つに絞れるような問題しか出しません。ですから、もしそのような問題でつまずいたとしたら、それはお子さまが客観的な読み方ができていなかったということになります。悩むことなく、論理的で客観的な問題の読み方、設問の解き方をマスターしましょう。


■悩ませる問題があるとするなら

お子さまを悩ませる問題があるとするなら、次のようなものかもしれません。1つは問Eのような経験を問う問題です。確かにそのような気持ちになった経験がなければ、書けませんから困るでしょう。そのような時は、似たような気持ちになった経験や、場合によってはそういう気持ちになった状況を想像して書く皆さんもいると思います。しかし、どうしても嘘は書きたくないのであれば、そのような気持ちになった経験がないことを断ったうえで、恐らくこのような状況になると「バツの悪さ」を感じるであろうという文章を書くのも1つの方法でしょう。問題作成者は、受験生が「バツの悪さ」の意味をしっかり理解し、具体例とともにそれを表現できるかどうかを問うているわけです。そうした問いに、上記のような方法で答えるのも1つの方法かと思います。
それからもう1つ。それは、筆者の考え方や登場人物の気持ちが1つに絞れないような箇所を記述問題で問われたり、あるいはどちらとも言えない選択肢を出されたりする問題です。こうした問題は、複数の答えがあり得る問題と言えるでしょう。このような問題を解いて、しかも自分の出した答えと違う模範解答が書いてあったら、確かに疑問に思えるでしょう。しかし、そのような問題は良問とは言えませんので、無視するほうがよいと思います。実際の入試問題ではまず出題されませんし、出題されたら問題視される設問だと思います。

そうした設問の見分け方ですが、解答・解説を読んでその説明が論理的に納得できるかどうかです。そして、どうしても納得いかなければ、ぜひ塾の先生に質問してみてください。実力のある先生でも論理的な説明ができない問題であれば、良問とは言えませんので、それ以上深く関わり合うことも悩むことも必要ないでしょう。


プロフィール


小泉浩明

桐朋中学・高校、慶応大学卒。米国にてMBA取得後、予備校や塾を開校。現在は平山入試研究所を設立、教材開発など教務研究に専念。著作に「まとめ これだけ!国語(森上教育研究所スキル研究会)」などがある。

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