受験勉強の本格化に向けて [中学受験 4年生]

保護者の役割は、成長に応じてベストのタイミングで働きかけ、環境を整えていくこと。5年生の新学期に向けて、準備しておきたいことについて取り上げます。




■受験本格化に向けた学習のペースづくりを

この時期、多くの塾でクラス替えが行われ、カリキュラムも5年生の内容に入ってきます。算数では、解き方が複数ある問題や、2つ以上の単元にまたがった問題など、ひと筋縄ではいかない問題と取り組むことが多くなります。国語は、読解問題で読む文章が長文になってきますし、理科や社会でも難しい単元が出てきます。塾の授業の難易度にもよりますが、今後は大ざっぱに見て、各教科1時間ずつは予習の時間をとる必要があるでしょう。
そうすると、大事になってくるのは時間の使い方です。時間の管理や、勉強に適した環境づくりはお子さま本人には難しいので、まさに保護者のかたの出番といえます。

習い事をたくさんしている場合は、勉強時間を確保するため、お子さまが好きで、意欲を持って取り組んでいるもの以外、減らす必要があるかもしれません。テレビやゲームの時間が長い場合、「見る番組はこれ」「ゲームは週○時間まで」というふうに、ルールを決めましょう。その場合、保護者のかたが一方的に習い事をやめさせたり、ゲームを禁止したりするのではなく、必要な勉強時間を確保するためには「何をやめるか」をお子さま本人にも考えてもらい、親子で納得できるルールづくりをすることが大切です。
また、「サッカーで思いきり体を動かしたあと、勉強に集中する時間を取る」など、好きな習い事と勉強の時間をセットにする、勉強のごほうびとしておやつタイムやゲームOKタイムをとるなど、お子さまの意欲が続くようなスケジューリングを工夫してあげてください。



■塾や勉強法の見直しにも適した時期

今は、塾や勉強法を見直すにもよいタイミングです。
成績がずっと下位~中位で動きがない場合は、授業や指導法が合っていないと考えられますので、変えたほうがよいでしょう。がんばり次第で、時々上位に浮上できる状態なら、お子さまのやる気も出やすいので問題ありません。お子さまの意欲や考える力をうまく引き出してくれるかどうかを第一に考えて、選ぶことが大切です。他の塾に話を聞きに行く、見学するなどして検討するには時間がかかります。新学期の前までには、なるべく転塾先が決まっているようにしてください。
なお、塾は変えず、今は難しい問題はおいて基礎問題だけに取り組ませ、ご本人が成長して認知力が上がるのを待つ方法もあります。その場合は、塾とは別に、家庭教師か保護者のかたが、個別にしっかりと指導する必要があります。



■受験に向けたフォロー態勢を整える

受験勉強が本格化してくると、家庭内でさまざまな話し合いが必要になる場合があります。たとえば、お母さまが受験に熱心なのに対し、お父さまがあまり関心を示さないため、お母さまがお子さまの指導や、さまざまな意思決定のすべてを引き受けなければならず、不満がたまっているといったケースは(その逆も)、よくあります。
子どもは、家庭内の空気を敏感に感じとります。ましてや「お父さんとお母さんが自分のことでけんかしている」と思えば、平静ではいられません。そうなると、勉強どころではなくなってしまいます。
両親が同じだけ受験に熱心である必要はありませんが、どちらかがきめ細かく子どもの勉強を見てあげるなら、どちらかは一歩引いてフォローに回るなど、家族が協力して子どもを応援する態勢はつくっておく必要があります。たとえば、お父さまに得意な教科や単元があるなら、その部分は仕事が早く終わる日に、お子さまに教えてもらうといった協力もよいですね。
お子さまのフォロー態勢に不安があれば、このタイミングでぜひ一度、ご夫婦で話し合っておくことをおすすめします。



■子どもの意欲を持続させるために

また、保護者のかたが中学受験を経験されている場合、お子さまの成績がふるわないとついご自分の成績と比べてしまい、「私はできたのに、この子はなぜ……」と感じて、焦ったり叱ってしまったりしがちです。しかし、成績のことで子どもを叱るのはナンセンスです。子どものやる気をそぐばかりで、よいことはひとつもありません。
子どもの意欲は、たこに似ていると思います。「お父さん、お母さんが応援してくれている」という温かい気持ちを受けとるとぐんぐん揚がっていきます。何か心配事があったり、叱られて自信をなくしたりすると、すぐ落ちてしまいます。
子どもを思いどおりに動かすのではなく、自分がどう動けば子どもが動いてくれるかを考えることが大切です。「コントロール」ではなく「マネジメント」ですね。
中学受験において「子どもの成績を上げる」のは、必ずしも保護者の仕事ではありません。塾や家庭教師などプロの協力のもと、お子さまご自身にがんばってもらうしかないのです。
子どもの意欲を持続させることが保護者の一番大切な仕事だということを、改めてご確認いただければと思います。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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